ライターI(以下I):宋人の通詞を務めていた三国若麻呂(演・安井順平)が殺されるという騒動が勃発しました。事件は結局、不可抗力の事故という流れでしたが、為時(演・岸谷五朗)は越前介の源光雅(演・玉置孝匡)の口から、宋人の狙いは都と直接に交易をすることだと聞かされます。
編集者A(以下A):宋との交易が実際に大きく展開されるのは、平清盛の時代になりますからもう少し先のことになりますね。その変遷もいつか触れたいですね。ところで、周明(演・松下洸平)とのやり取りを終えたまひろ(演・吉高由里子)は、一首の和歌を紙に書き出します。
ここにかく日野の杉むらうずむ雪 小しほの松にけふやまがえる
I:紫式部が越前で最初の冬を迎え、雪が降った際に詠んだ歌だといわれます。「越前国府では日野岳に群立する杉を埋める雪がこんなに降っている。都では小塩山の松に雪が降っているだろうか」という意味のようです。これは福井県越前市にある紫式部公園の歌碑の文章です。揮毫はなんと、文豪谷崎潤一郎という風格のある歌碑になります。
A:さて、場面は京に転じます。
I:髪をおろしたため、内裏から離れた中宮定子(演・高畑充希)への思いを募らせる一条天皇(演・塩野瑛久)の姿が描かれました。そんなに遠くに離れたわけではないのに会えない、出家してしまったのだから会ってはいけない……そうした制約が「より、会いたい」という感情に火をつけてしまっているようです。
A:一条天皇のもとに藤原定子が入内したとき、一条天皇は11歳。定子は15歳。満年齢では天皇が誕生日前で9歳。定子は14歳でした。一条天皇にとって定子は、姉のような母のような、常に優しくしてくれる甘酸っぱくて、いなくてはならない存在だったのだと思います。
I:姉のような母のような存在だった中宮定子との暮らしに「皇子を」と求められるようになって、やはり最初は戸惑ったのだと思います。そういうことを見越してなのか、中宮定子の父藤原道隆(演・井浦新)は、定子以外の女性の入内を妨げていたようです。
A:長徳の変以降、一条天皇のもとには藤原顕光(演・宮川一朗太)の娘元子(演・安田聖愛)、藤原公季の娘義子が入内していましたが、一条天皇は相手にしていなかったようです。ここで道長(演・柄本佑)正室の源倫子(演・黒木華)が一計を案じて、音楽の会を催すことを提案します。「万事、お任せくださいませ」という台詞は、2002年の大河ドラマ『利家とまつ』で主人公のまつ(演・松嶋菜々子)が多用した「私にお任せくださりませ」が思い出されますね。
I:この音楽の会で登場した元子の父藤原顕光は、道長の父の兼家(演・段田安則)とは兄弟ながら険悪だった兼通の息子です。とはいえ、道長、顕光の従兄弟同士は表面上はうまくやっていたようです。
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