2022年4月6日に『サライ』のオンラインサロン「Bar駱駝(バーらくだ)」が発足しました。ここは、お酒をテーマに、新しい世界や人々と出会い、教養や知識を深めていくというオンラインでのコミュニティです。毎月開催されるオンライン講習会での豪華講師陣も『サライ』ならでは。今回、登壇したのは、ウイスキー評論家の土屋守さん。ここでは、特別インタビューとダイジェスト動画を紹介します。

「Bar駱駝」(https://bar-rakuda.serai.jp/about)の詳細はこちらの「Bar駱駝」会員募集へ。(https://serai.jp/news/1061109)毎月、豪華講師が登場します。

土屋 守さん (ウイスキー文化研究所代表、ウイスキー評論家)
1954年、新潟県佐渡生まれ。学習院大学文学部国文学科卒業。フォトジャーナリスト、新潮社『FOCUS』編集部などを経て、1987年に渡英。1988年から4年間、日本語月刊情報誌『ジャーニー』の編集長を務める。帰国後は、日本初のウイスキー専門誌『The Whisky World』、『ウイスキー通信』、『Whisky Galore』などの編集長として活躍。1998年にHighland Distillers社(英国のウイスキー会社)より「世界のウイスキーライター5人」の一人に選ばれる。著書に、『完全版シングルモルトスコッチ大全』(小学館)ほか多数。

シングルモルトとの出会いがなかったら、今の私はいないと思いますよ

――空前のウイスキーブームが起こっています。国内外を問わず、どの蒸留所も原酒が底をつくほど売れており、世界的にクラフトウイスキーの蒸留所が建設ラッシュという報道も。日本のウイスキー蒸留所も、2022年4月時点で、全52ヵ所もあります。

うれしいですね。私はウイスキーが世界的に底を打ったとされる80年代後半から業界を見ていますから。現在、スコットランドで造られたスコッチウイスキーは、97%が世界200か国に輸出されており、2021年の輸出金額は約7400億円。スコッチウイスキーは巨大産業として、成長し続けていくでしょう。

――ウイスキーは産地と原料によって区分されます。主な産地はスコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、ジャパニーズなど。主な原料は、モルト(大麦麦芽)、グレーン(穀物類)、ライ(ライ麦)、コーン(トウモロコシ)など。これらのウイスキーをブレンドしたものを「ブレンデッド」と言います。ブレンデッドと、シングルモルトを比べると、後者の個性に驚きます。

そうなんです。ウイスキーブームが下火になったのは、2つの要因があると考えています。まずは、70年代に「ブレンデッド」が主に飲まれていたこと。そして、アメリカで始まったヒッピー文化が世界を席巻していったこと。

ブレンデッドウイスキーは個性乏しく、かつ大量生産・大量消費の酒であり、強権的な男性の象徴でもありました。しかし、ヒッピー文化において、個性を尊重し、ナチュラル志向の少量生産なものを求めます。となると、ウイスキーの風向きは悪くなる。ビールやワインがもてはやされて、ウイスキーがあまり飲まれなくなってしまったのです。

しかし、90年代に入ると1つの蒸留所で造られたモルトウイスキーだけを瓶に詰めて販売する、シングルモルトウイスキーが注目されました。ここから、捲土重来が起こったのです。

私は80年代後半に英国に住んでいたので、当時の英国の「シングルモルトは売れない」という雰囲気を覚えています。でも、知ってしまうとその魅力に取りつかれることも気付いていました。

飲み比べを行う4銘柄のボトルを前に語る土屋さん。4か所の蒸留所の歴史からウイスキーの特徴まで、流暢に説明できる知識の深さや記憶力に驚かされる。

――そしてウイスキー愛が目覚めて行った。日本にそのブームがやってきたのは、90年代の終わりごろ。土屋さんが95年に『モルトウイスキー大全』(小学館)を出版した後です。

シングルモルトは、あくまで一部の愛好家の話なんですね(笑)。それはデータが示していて、日本全体で見ると、ウイスキーの消費量のピークは1983年の38万キロリットル。底は2008年の7万キロリットルです。この年に、最盛期の5分の1になってしまったんです。

ただ、このあたりから、『角ハイボール』(サントリー)のキャンペーンが始まりました。低糖質かつヘルシーなお酒として広く飲まれるようになったのです。

時を同じくして、2007年に創業した秩父蒸留所が注目され始めました。秩父が「クラフトウイスキー」というジャンルの扉を開いたのです。

――大衆向けの『角ハイ』、愛好家のクラフトウイスキーブームが重なり、相乗効果を産んだ。それには、土屋さんが、ずっとウイスキーの個性を知る楽しさを教え続けてくれたことにあると思います。

やはり、シングルモルトはそのものの魅力がありますからね。35年近く飲み続けていますが、最初にスコットランドでシングルモルトに出合った衝撃は忘れられません。あれがなかったら、今の私はいないと思います。

そもそも、家族とともに英国に2年ほど住もうと思ったのです。しかし、言葉や文化の壁が高いことに気が付きました。そんなときに、知人から「ロンドンには3万人の日本の駐在員がいるから、日本語の情報誌をつくらないか」と誘われたんです。

そこで私は、在英日本人が求める政治、経済、文化など、あらゆるコンテンツを詰め込んだ月刊誌を立ち上げました。ありがたいことに、雑誌は人気を博し、そこに目を付けたスコットランド政府観光局が、プレスツアーとして私を招待。そこで私はシングルモルトに出合ったんです。

その時に強く感じたのは、シングルモルトは「風土の酒」だということ。理解するには蒸留所を見て、五感で確かめるしかない。私は週刊誌の記者をしていたので、現場主義なんですね。現場に行って、自分の目で見て、耳で聞いたこと以外は原稿にするなと教育されており、シングルモルトこそ、現場に行きたいと感じたのです。そこで、スコットランドにあった100か所くらいの蒸留所を巡りました。

一方で、回って記事にしようとしても、資料がないんですよ。 そこで、私はロンドンのソーホーにある酒販店『Milroy’s』(1964年創業・現在も営業中)に行き、シングルモルトについて教えてもらいました。店主がスコットランド出身でとても詳しく、たくさんのことを教えていただきました。

――当時、英国でも注目されていなかったシングルモルト。それを体験し、知識を集めた土屋さんのウイスキー愛は、多くの人の心を打ちます。世界的作家・村上春樹さんも、土屋さんの『モルトウイスキー大全』をお持ちだそうです。

雑誌『BRUTUS』(2021年10月15日号 No.948)で「村上春樹さんが手放すことのできない51冊の本」という特集が組まれました。アメリカ文学の原書や翻訳本がほとんどで、日本の著者の本は12冊のみ。そのうち1冊が、私が書いた『モルトウイスキー大全』(1995年初版本)だったのです。これを知ったときは、驚き、恐縮するばかりでした。

村上さんはウイスキーの造詣が深く、『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』(新潮社)という紀行エッセイも有名です。この取材時に……あれは1996年頃でしょうか、私は村上さんと話をしているんです。蒸留所の建物について、撮影機材についてなどお話をしたことを覚えています。その後、著書を送ってくださったことにも感激し、それから25年経って、私の本を紹介してくださったことにも胸がいっぱいになりました。これは私の唯一の勲章かもしれないですね。

これからも、ウイスキーの魅力を広めていきたいと思っています。やはり、その魅力を知るには、蒸留所の見学がおすすめ。日本国内外にたくさんあるので、ぜひ行って、試飲してみてください。知覚の全てを刺激する、素晴らしい体験ができるはずですよ。

6月の「Bar駱駝」入会/継続特典として、リーデルワイングラスをプレゼント!

ステムレスのワイングラスはワイン業界でも話題に。

「Bar駱駝」の6月入会/継続特典を特別にご用意いたしました!
265年以上の歴史を誇る、世界から愛されるワイングラスの老舗、RIEDEL(リーデル)の「リーデル・ウイングス・トゥー・フライ リースリング/シャンパーニュ」(チューブ缶1個入)です。

グラスのステム(脚)をなくし、横に広がったフラットなボトムが特徴的なタンブラーで、この形状にすることにより、ワインと空気が接する面積が増え、アロマをより引き出すことができます。また、独特の窪みに指が自然と収まり、持ちやすく設計されています。

機能性が高く、気軽に使えて洗いやすく、収納もしやすいので、普段使いで大活躍すること間違いなし。ワイン愛好家の方にはもちろん、おしゃれなテーブルコーディネートのアクセントとしてもおすすめです。

6月に入会/継続していただいた方へ、おひとり1個お届けいたします。

毎月、サロン会員限定の特別イベントを開催!

「日本ビアジャーナリスト協会」の代表・藤原ヒロユキさん。

「Bar駱駝」では、サロン会員限定でお酒にまつわる特別なイベントに参加することができます。そのうちの1つ、毎月末にゲスト講師によるオンライン講演会を開催予定です!
6月22日(水)のゲスト講師は、「日本ビアジャーナリスト協会」の代表・藤原ヒロユキさん。自身で栽培した「与謝野ホップ」を用いたクラフトビールも販売している藤原さんに、クラフトビールの魅力を語ってもらいます。
この機会に、ぜひご入会ください!!

「Bar駱駝」(https://bar-rakuda.serai.jp/about)の詳細はこちらの「Bar駱駝」会員募集へ。(https://serai.jp/news/1061109

取材/前川亜紀 写真提供/リーデル、日本ビアジャーナリスト協会

「土屋 守さんのウイスキートーク」ダイジェスト動画

 

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