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旅行

謎の地下礼拝堂から皇帝専用駅舎まで、ウィーンのユニークな地下鉄の駅と路線(オーストリア)

文・写真/御影実(オーストリア在住ライター/海外書き人クラブ)

120年の歴史を誇る、ウィーンの地下鉄。その路線には多くの歴史が宿り、その駅は様々な建築様式に彩られています。現在は市民や観光客の足として、ウィーンのインフラを支えている地下鉄ですが、同じ路線に少し前まで蒸気機関車が走ってたことは、あまり知られていません。

歴史的建造物の指定を受けた美しい鉄道橋、皇帝専用駅や失われた礼拝堂など、ウィーンの地下鉄をめぐる様々な見どころをご紹介します。

●眠りから目覚めた地下礼拝堂

ウィーンのへそと呼ばれる地下鉄シュテファン広場駅の構内には、不思議な礼拝堂があります。現在は博物館として見学することができますが、この礼拝堂は、1973年の地下鉄工事の時に発見されるまで、実に200年も存在を忘れ去られていたものです。

眠りから目覚めた地下礼拝堂

地下4階の深さに13世紀前半に作られたこの建造物は、無骨な石造りが特徴的で、中世のウィーンの様子を現在に伝えています。人の行きかう駅構内で、中世にタイムトリップできる、謎めいた地下礼拝堂です。

●構内に壁がそびえたつ駅

ウィーンでは、地下鉄工事の際に様々なものが発掘されています。シュトゥーベントアー駅にある謎の石の塊は、13世紀から1858年までウィーンを取り囲んでいた市壁の名残です。ウィーンには現在でも8か所に市壁の名残が見られますが、こうやって駅の構内で発見され、そのまま展示してあるのはここだけです。構内に壁がそびえたつ駅

●120年前の路線と消えた5番線

ウィーンの地下鉄の運行が正式に始まったのは1978年ですが、その路線の一部は、ハプスブルク時代の1898年に作られたシュタットバーン(都市鉄道)のものが流用されているので、建造物としてのウィーン地下鉄は、120年の歴史があることになります。

ウィーンの地下鉄路線には、U1(一番線)からU6(六番線)までの番号が付けられていますが、U5(五番線)はありません。U1からU3までの路線を新規建設し、U4とU6の一部を既存のシュタットバーンから流用するという都市計画の間で、U5の案が立ち消えてしまったからです。現在計画中の延長工事で、U5が作られることになっていて、その完成を待って初めてウィーンには、6本の地下鉄路線が揃うことになります。

ウィーンの地下鉄は、常に拡張工事を行っています。現在フォルクステアター駅構内には、この拡張工事に関する博物館もあり、近未来の駅の姿を体験することができます。

120年前の路線と消えた5番線

●路線自体が史跡。オットー・ワーグナー建築の駅

さて、そんな19世紀末のシュタットバーンの路線と駅が流用された、U4とU6ですが、その古い駅舎と路線を写真でご紹介します。

カールスプラッツ駅舎

カールスプラッツ駅舎

シュタットパーク駅舎

シュタットパーク駅舎

アルザーシュトラッセ駅舎

アルザーシュトラッセ駅舎

現在は地下鉄路線に組み込まれてはいますが、当初地下鉄として建設されたわけではなかったので、多くの駅と線路は、高架や川沿いの半地下を走っています。

U6高架橋も優美なユーゲントシュテル建築

U6高架橋も優美なユーゲントシュテル建築

シュタットパーク駅プラットホーム

シュタットパーク駅プラットホーム

この路線は、建設当初の19世紀末には、蒸気機関車が走っていました。第一次世界大戦まで何度も電化の試みがありましたが、戦争中も蒸気機関車が軍用列車として運行し、その後石炭不足のために無期限運休となります。その後も第二次世界大戦からの復旧が長引き、1954年になって初めて完全に電化されます。その後1989年まで少しずつ時間をかけて、地下鉄路線に組み込まれていきました。

現在U4に12駅、U6に6駅と近郊列車Sバーンの駅にいくつか残る、このユーゲントシュティル様式の駅は、「交通史跡」に指定され、ウィーンの街並みに溶け込んでいます。

●皇帝専用駅ヒーツィング

ハプスブルク帝国皇帝の夏の離宮、シェーンブルン宮殿の最寄りには、皇帝専用の駅があります。皇帝専用駅ヒーツィング

この駅は、皇帝フランツ・ヨーゼフが利用し、西駅まで向かうための特別駅舎として、建築家オットー・ワーグナーが設計しました。美しい建築に、実用性も兼ね備えた、皇帝専用駅です。

しかし実際は、この駅は迎賓客などの出迎えには使われましたが、皇帝自身は視察のために2度使用しただけで、現在は博物館となっています。

* * *

120年前に建設された路線や駅がそのまま残る、ウィーンの街並み。ハプスブルク時代の名残を感じさせるレトロなプラットホームや駅舎と、そこを走る最新型の地下鉄車両は、過去と現在が緩やかに共存するウィーンの街の姿そのままです。

インフラに宿る歴史を思うと、人々の生活が、過去の営みの上に積み上げられてきたものであることがよくわかり、先人の都市計画とそれを残す努力に胸を打たれます。

文・写真/御影実
オーストリア・ウィーン在住フォトライター。世界45カ国を旅し、『るるぶ』『ララチッタ』(JTB出版社)、阪急交通社など、数々の旅行メディアにオーストリアの情報を提供、寄稿。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

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