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マウイ島とハワイ島で、廃線鉄道を探る【ハワイ楽園鉄道3】

文・写真/杉﨑行恭

■フラになったマウイの鉄道

フラに『カア・アヒ・カフルイ』(Ka`a Ahi Kahului)という名曲がある。「カフルイの汽車ぽっぽ」という素朴な曲だが、このなかに「~ハワイに初めて走った汽車~」というフレーズがある。カフルイとはマウイ島の港町で、その後背地には広大な平原がひろがり、ハワイのサトウキビ産業の中心地だった。ここにハワイ王国初の鉄道が走ったのだ。

フラになったマウイの鉄道

1879年、カラカウア王の時代。マウイ島に王みずからパイオニア・ミルという製糖工場を建設。そしてマウイ島カフルイ〜ワイルク間にハワイ初の鉄道を建設して殖産興業をはかろうとした。しかしその財源と運営は白人に任され、やがて王朝の負債となっていく。それはともかく、民衆は王が建設してくれた鉄道に歓喜し、黒煙を吐きながら走る蒸気機関車は、やがてフラとなって歌い継がれることとなる。

ワイルク製糖工場とカフルイ鉄道、wikipedia

ワイルク製糖工場とカフルイ鉄道、wikipedia

このカフルイ鉄道はカフルイからワイルクまでの約24kmから始まり、最盛期の1947年頃には路線延長が約80km、400両以上の車両を保有。サトウキビ輸送はもとより旅客営業も行っていた。そして、ハワイの鉄道の最後を飾るように1966年まで走り続けた。さすがカラカウア王の鉄道である。ともあれ、今も広大な畑が残るマウイ島は、ハワイの古い産業風景が色濃く残る島といえるだろう。そこに鉄道の痕跡を探ってみた。

ラハイナのサトウキビ列車、今は不定期運転

ラハイナのサトウキビ列車、今は不定期運転

マウイ島のラハイナ・カアナパリ&パシフィック鉄道、「ラハイナのサトウキビ列車」として乗ったことがある人も多いと思う。これはラハイナ郊外から発車し、荒野を周回する全長9.7kmの観光鉄道だった。「だった」と過去形で書いたのは、残念ながら現在は休止中で、不定期でときどき走るだけだという。かなり西部劇風にアレンジされた鉄道だったが、そのレールや鉄道施設はまぎれもなく旧カフルイ鉄道のもので、100m以上もある木製橋を走るシーンは圧巻だった。

木製橋が多かったマウイ島の鉄道

木製橋が多かったマウイ島の鉄道

以前、この観光鉄道のヤード(車庫)を訪ねたことがある。そこには1966年まで走っていたというカフルイ鉄道から譲渡された車両やその部品が集められ、検修庫には解体修理中の蒸気機関車もあった。担当者は「アメリカ本土からナロー・ロコモティブ(狭軌機関車)を集めている」と語り、バックヤードには赤錆びた機関車のボイラーが何台も置かれていた。ここだけでも鉄道ファンには宝の山だ。本格的な保存鉄道だったラハイナ・カアナパリ&パシフィック鉄道の完全復活を期待したい。

集められた古典機のボイラー

集められた古典機のボイラー

マウイ島の廃線跡を探しに、鉄道の起点となったカフルイ港に向かう。港の入り口に「オールド・カフルイ・レイルロード・ビルディング」が保存されていた。鉄道会社のオフイスだったのだろう。そのカフルイ港の一角に扇形庫が残っていた。壁には1926という竣工年も見える。トラック整備工場になっている建物を見せてもらうと床にレールの頭が光っていた。間違いなく半世紀前まで機関車がいた場所だ。整備工場でほかに線路跡はないかと聞くと「なんでそんなこと聞く?」みたいな顔をされたが「プウネネの製糖工場にも線路が残っている」と教えてくれた。

カフルイ港の扇形車庫

カフルイ港の扇形車庫

2016年まで稼働していたというプウネネのアレクサンダー&ボールドウィン製糖工場は、サトウキビ畑だったという荒野の真ん中に赤錆びた工場と巨大な煙突を残していた。そして工場に向かう道路に3フィート(914mm)軌間の線路が断続的に続いていた。反対側を見れば線路は荒野に消えている。万事おおらかな土地柄だけに原野を歩けば、まだ線路跡が見つかるかもしれない。赤錆びた線路を見ていると、黒煙を吐きながらサトウキビを満載した列車が走る幻影を見たような気がした。

プウネネにあった転車台の跡

プウネネにあった転車台の跡

■ハワイ島の絶景鉄道と大津波

ハワイ諸島の鉄道のなかでももっとも美しく、そして悲劇的な最後を遂げたのがハワイ島のハワイ統合鉄道(Hawaii Consolidated Railway)だ。1900年にキラウエア火山に近い港町ヒロを起点に走り始めたヒロ鉄道は、後背地のサトウキビ農場やキラウエア火山への観光路線でスタートした。2018年に山麓噴火をしたキラウエア火山だが、かつては列車で観光できたのだ。

マウイ島やオアフ島の狭軌鉄道とは異なり、アメリカ本土と同じ軌間1435mmの線路で始まったヒロ鉄道は、やがてハワイ島の北東沿岸を北上するハマクワ・ラインの建設にとりかかる。この区間は険しい海岸地帯のため、2か所のトンネルと大小200もの川を渡る難工事の末1913年に開通した。しかしヒロ鉄道はこのハマクワ線の建設費用がかかりすぎたことからオアフ鉄道の傘下に入り、ハワイ統合鉄道(HCR)になっていく。それでも開業したハマクワ・ラインは熱帯の絶景路線として評判を呼び、1930年代には「世界で最も美しい鉄道」ともいわれる路線になった。

ハマクワライン、ホノリイ渓谷橋

ハマクワライン、ホノリイ渓谷橋

ハワイ統合鉄道路線図

ハワイ統合鉄道路線図

ヒロからパワウイロまで54.2kmのハマクワ・ラインは片道約2時間で、「シーニック・エクスプレス」という観光列車も運転された。また第二次大戦中は沿線に軍隊のキャンプが置かれ、演習場への交通でおびただしい兵員を輸送した。しかし戦争が終わった翌年の1946年4月1日早朝、アリューシャンを震源とするマグニチュード8・6の巨大地震が発生し、大津波が800kmも離れたハワイ諸島を襲った。この「エイプリルフールデイ・ツナミ」と呼ばれた大災害はヒロにある鉄道施設を破壊し、この日がハワイ統合鉄道(HCR)最後の日となってしまった。

道路に改修された鉄道トレッスル橋

道路に改修された鉄道トレッスル橋

現在、ハマクワ・ラインのほとんどがルート19の道路に利用されている。そのうちいくつかの道路橋はかつてのハマクワ・ラインの鉄橋を改造したもので、深い谷を渡るトレッスル橋(旧余部鉄橋と同型)を随所に見ることができる。

また、途中のラウパホエホエにはハワイ州唯一の鉄道博物館があり、「列車が到着すると娘たちがフラを踊って出迎えた」というホームが残っている。

このようにハワイの発展におおきな役割を果たし、サトウキビから観光へと産業が変わるときに鉄道は消えていった。ラウパホエホエの鉄道博物館で保存しているかつての鉄道員リストを見ると、移民として渡った多くの日本人名があった。

ハワイを旅するとき、歴史の彼方に去った鉄道の痕跡を見ると昔日のハワイが浮かび上がってくる。かなりマニアックだが、これもリゾートアイランドの楽しみ方だと思う。

ラウパホエホエ鉄道博物館

ラウパホエホエ鉄道博物館

【ラウパホエホエ鉄道博物館】
所在地:36-2377 Mamalahoa Hwy., Laupahoehoe, Hawaii
入館料:6USD 開館日:土曜・日曜 開館時間:10時〜17時

文・写真/杉﨑行恭
乗り物ジャンルのフォトライターとして時刻表や旅行雑誌を中心に活動。『百駅停車』(新潮社)『絶滅危惧駅舎』(二見書房)『異形のステーション』(交通新聞社)など駅関連の著作多数。

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