取材・文/関屋淳子
インドシナ半島西部、タイ、ラオス、中国、インド、バングラデシュと国境を接するミャンマー連邦共和国。かつてビルマと呼ばれたこの国の印象はどのようなものでしょうか。2016年、軍事政権からアウンサン・スーチー国家顧問のもとで民主化へと歩み出したこと、あるいは映画「ビルマの竪琴」でしょうか。
観光地としてはまだ馴染みのない国ですが、その魅力は多彩。4回にわたり、ミャンマーの今をご紹介します。
第1回は活気あふれる大都市・ヤンゴンです。
成田空港から直行便で約8時間30分、ミャンマーの玄関口・ヤンゴンに到着します。ミャンマーは135の少数民族からなる多民族国家、国民の約90%が仏教徒といわれ、街のいたるところに寺院が立ち並びます。南北に長い国土の面積は日本の1.8倍。北部には東南アジア最高峰のカカボラジ山(標高5881m)があり、南には色鮮やかな魚とサンゴ礁に囲まれる美しい島々があり、地域により異なる自然が展開します。そして多様な民族が作り出す伝統工芸や歴史を伝える文化遺産。ひとことでは語り切れない表情に満ちています。
ヤンゴンはイギリス植民地時代の面影を色濃く残す街ですが、近年は発展目覚ましく、ショッピングモールや高級ホテルなどが次々と建設され、高速道路も完成しています。街なかを走る車は日本からの中古車が多く、路線バスもしかり。車体をそのまま使っているので、日本語の表示をいたるところで見かけます。また日本企業も続々と進出し、経済交流が盛んに行われています。
ヤンゴンでの最大の見どころは市内中心部にある2500年前に建立された「シュエダゴンパゴダ」。広い境内には多くのパゴダ(仏塔)や廟、仏像などがあり、なかでも金箔が貼られ、まばゆいばかりに輝いている黄金のパゴダは100mほど。ヤンゴンではこれ以上の高さの建物を建ててはいけないという規則があるため、市内のどこからでも見ることができます。パゴダの塔頂の装飾はダイヤモンドやルビーが使われ、豪華絢爛。多くの国民が厚い信頼を寄せる聖なる場所ですが、それとともに家族で集う憩いの場所という印象も受けます。
ミャンマーでは自分の生まれた曜日を重視します。シュエダゴンパゴダには八曜日(水曜生まれは午前・午後に分かれる)の神が祀られ、それぞれの守護神にお供えをし、水をかけて願掛けします。ミャンマー来訪時にはぜひ自分の生まれた曜日を覚えていきましょう。
ちなみに仏教施設に入るときは裸足で、女性は露出の多い服装は厳禁。日中は日差しが強いので、早朝や夕方からの拝観がお薦めです。
もうひとつ、ダウンタウンのランドマーク的存在が「スーレーパゴダ」。周辺には市役所や最高裁判所、さらに教会やヒンドゥー教寺院、モスクなども集まっています。
ヤンゴンでぜひ訪ねていただきたいのが、「ボージョーアウンサンマーケット」。ミャンマー最大級の市場で、宝飾や雑貨、民芸品、日用品など1800以上の店舗があり、青空食堂もあります。なかでも良質のルビーや翡翠の産出国であることから、宝飾のお店が目立ちます。どうぞたっぷり時間を取って巡ってみてください。
ところで、ミャンマーでの滞在に欠かせないのは、ビーチサンダルと民族衣装・ロンジー。裸足になることが多いミャンマーではビーチサンダルがマストアイテム。そして、男女ともに着易く涼しいのがロンジーです。女性用は巻きスカートだと思ってください。男性用はちょっと着用方法が難しいのですが、カッコイイ。TPO関係ないのもいい感じです。1000円前後で購入できますので、到着したら、まずロンジー。
今回は訪ねることができなかったのですが、ヤンゴンから車で約1時間にある日本人墓地へも。第二次世界大戦時に、あの壮絶なインパール作戦も行われたミャンマーで戦死した日本将兵19万人を慰霊する地で、「日本人慰霊碑」「ビルマ平和記念碑」も立ちます。善良なるミャンマーの人々に守られ、多くの命が眠っています。
第2回は、ヤンゴンから国内線で約1時間20分、ミャンマー最初の統一国家・バガン王朝の地をご紹介します。
協力:ミャンマー・ホテル観光省、ミャンマー観光連盟
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。