文・写真/梅本昌男(海外書き人クラブ/タイ・バンコク在住ライター)
長い軍事政権の後、民主化され、“アジア最後のフロンティア”と呼ばれて一時期日本を含めた多くの海外企業がチャンスを掴もうと躍起になっていたミャンマー。ところが、2021年にクーデターが起き再び軍隊が国を掌握する状態へと戻ってしまいました。
現在ですが、観光で訪れることは一応可能で、日本の大手旅行会社もツアーを催行しています。しかし、日本外務省の安全ホームページでは地域別で「レベル3渡航中止勧告」「レベル2不要不急の渡航中止」という2021年2月21日に発表された危険情報を今も変更していません……。
クーデター前、何度もミャンマーを訪れていましたが、とにかく人々が優しく安全で良い国でした。
そのミャンマーには「タナカ」という日焼け止めがあります。タナカという木を水と一緒に擦って作ります。現在はすぐに使用できるタイプが市販されていて、ミャンマーの女性や子供のほとんどが愛用しています。ちなみに、日本人の名前の「田中」とは関係ない偶然の一致です。
この「タナカ」が本当に日焼け止め効果があるのか? それを試してみようとしたことがあります。2010年のことでした。
実験場所として選んだのはミャンマー中央部に位置するバガン。ここには11~13世紀に建造された2,000以上のパゴダ(仏塔)が約40キロ四方に広がる平原に点在しています。2019年には世界遺産に登録されました。
実は、このバガンには世界で一つだけの「タナカミュージアム」があります。市販されている「タナカ」の世界トップシェアを誇るShwe Pyi Nann というメーカーが運営しています。それほど大きくない館内にはタナカの木が種類別に展示されていたり、木を擦る際に使う道具などが展示されています。
そこを訪れた際、「仏塔巡りをしながら、日焼け止めの効能を試すのも面白いのでは?」と思いついたのです。
翌日、ちゃんと効くのかがシンプルに分かるように、写真のように顔の半分だけタナカを塗りました。いよいよ、実験スタートです。
オールドバガンと呼ばれる先述の平原地帯には、荘厳な建築で印象的なアーナンダ寺院、バガンで一番の大きさを誇るダマヤンジー寺院など見所が一杯。
こうして寺院を巡りを楽しんでいましたが、行き交う人々がジロジロと怪しい男(私)を見てきます。当たり前ですよね。
「ヘイ、マイ・フレンド! お前はスパイダーマンか? 何でそんな顔をしているんだ?」と一人の陽気な男性が声をかけてきました。
こんな時のため、私は1枚の紙を用意していました。ホテルのスタッフにビルマ語で「タナカの効能を試すため、こんな風に顔の半分だけ塗っています」と書いて貰った紙です。それを見せると相手は大きくうなずき親指を立ててきました。
「タナカは日焼けに対して世界でベストの効果があるぞ!」
なるほど! これはますます期待が高まりますね!
その後も、仏陀の遺髪が収められたシュエサンドー・パゴダに行って夕日を眺めたりして1日のバガン見物が終了。
ホテルに帰って、シャワーを浴びタナカをおとし、結果を鏡でチェックすると……片側だけほんのり白いままです! ミャンマー伝統の日焼け止めは本当に効果があったのです! 皆さんもお試しあれ。
文・写真/梅本昌男
(タイ・バンコク在住ライター)。タイを含めた東南アジア各国で取材、JAL機内誌アゴラなどに執筆。観光からビジネス、グルメ、エンタテインメントまで幅広く網羅する。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。