文・写真/中井シノブ
京都の台所・錦市場には、京の食文化を支えてきた名店が並びます。かつては京の町衆が、そして今は世界中から訪れる観光客が、歴史に培われて魅力を増した食材や道具を買い求めるのです。
そんな錦市場が桜や紅葉の時季と並び賑わうのが年末。京都の人は、新年を迎えるにあたり、「あの品はあそこで」と、贔屓の店でお決まりの食材を買い求めます。
そんな京の風習を参考に、お漬物やお豆腐など年越しの品を求める散歩を楽しんでみませんか。今回はそんな錦市場で手に入る、年越しの逸品をご紹介します。
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まずおすすめするのは、冬のお漬物・千枚漬けやすぐき漬です。手作業でひとつひとつ丁寧に漬け込む『錦・高倉屋(にしき・たかくらや)』を訪ねてみましょう。
せっかく市場で買い物するのだから、「冬にしかないお漬物はどれ? この野菜はどうやって食べるのが美味しいの?」と、旬の味やその楽しみ方をお店の方に尋ねるのもいいですね。
同店では、季節を伝える野菜を厳選し、旬の美味しさを堪能できる京漬物を、日々職人がひと樽ひと樽漬けこみます。お正月用の定番は、昆布の旨味が効いた千枚漬やラブレ菌が体にいい「すぐき漬」です。
錦・高倉屋にて。春の筍、夏の水茄子、冬のすぐきなど四季折々の京漬物が並ぶ。
『錦・高倉屋』
住所:京都府京都市中京区錦小路通寺町西入ル東大文字町289-2
電話:075-231-0032
営業時間:10:00~18:30
定休日:年中無休
http://www.takakuraya.jp/
お正月といえばやっぱり「日本酒」。それなら、俳優・佐々木蔵之介さんの実家として知られる上京区の佐々木酒造や伏見の酒蔵の酒も多種揃う『津之喜酒舗(つのきしゅほ)』へ。ここでしか買えない地酒も多く、贈り物などにも喜ばれます。
津之喜酒舗(つのきしゅほ)
創業220年の老舗酒舗「津之喜酒舗」は酒屋一筋、酒コンシェルジュとも呼ぶべき八代目の名物店主で知られます。京都をはじめとした地酒や焼酎だけでなく、シングルモルトやシェリーなどマニアックな品が並ぶのもこの店の特徴。
「今飲むしあわせ」というポップが酒好きの心を掴む量り売りの地酒もあり。
『津之喜酒舗』
住所:京都市中京区錦市場富小路東入ル194
電話:075-221-2441
営業時間:10:00~18:00
定休日:第2水曜休み
http://www.tsunoki.co.jp/
豆腐や湯葉も買って帰りたいなら、創業100年の老舗『近喜商店(きんきしょうてん)』へ。自家製の豆腐やお揚げのほか、生麩や白味噌といったお節料理に欠かせない食材も揃っているので、たっぷり買って、宅急便で送るのがおすすめです。
お揚げは焼いて醤油をかける、生麩は鍋の具材にと、特別に手を加えなくても、美味しく味わえるのが、旅帰りにはありがたいこと。
代々受け継ぐ製法で、豆腐、揚げ、ひろうすなどを手作りする店。大豆を水につける時間を季節によって変えるなど、長年の経験を生かしてつくる安定した味わいの品は、家庭のみならず料理屋にも信頼を得てきました。京のお節料理に欠かせない飾り生麩や白味噌などの食材も豊富です。
『近喜商店』
住所:京都府京都市中京区錦小路通富小路東入ル
TEL:075-221-1931
営業時間:8:00~18:00
定休日:水曜
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以上、年の瀬の錦市場で手に入れたい、年越しの逸品をお店とともにご紹介しました。
時間があれば、足を延ばして四条通へ。鴨川畔で、気持ちいい景色に出逢うのもいいし、祇園散歩へ出向くのもいい。東山や鴨川からも近い、錦市場ならではのお買いもの散歩。コンパクトな街、京都ならではの凝縮した時間が、年末の京都旅を充実したものにしてくれます。
文・写真/中井シノブ