『RE:KYOTO〜潜入ワンカメ京都リポ〜』とは

京都市中京区夷川通高倉“家具の街”に店を構えるカレー店を求めて。ナビゲーター 木村寿伸

サライ京都チャンネル「RE:KYOTO(リ・キョウト)〜潜入ワンカメ京都リポ」は地元京都の放送局でキャスターなどを15年間、そして現在、競馬実況などフリーアナウンサーとして活動する木村寿伸(きむら・ひさのぶ)がナビゲーターを務めます。 京都で活躍している人、何かに挑戦している人への取材を通して、京都の魅力を“再発見”しようというこの企画。 単独潜入風、近頃話題のブイログスタイルでお送りすることで、近しい人しか知らない取材対象者の表情や本音の部分に迫ります。

“家具の街”高倉夷川に店を構える「ココハイチエ」

京都御所の南、京都市中京区夷川通高倉。古くから家具屋さんが軒を連ねる夷川通り沿いに店を構えるのが「ココハイチエ」です。平日昼のみ営業するカレー専門店として2017年11月にオープンしました。

一期一会の精神でおもてなしをするという思いが込められた店名

カレー専門店というより割烹料理店のような店内のしつらえには理由があるんですが、それは後ほど。
出迎えてくれたのはガッチリした体格に柔和な笑顔が印象的な店主、小谷昇平さん。
カレーへのこだわりについてお話を伺いました。

店内は和の空間が広がっていてまるで隠れ家のような雰囲気

こだわり尽くしたカレー

ココハイチエのカレーはチキン、九条ねぎのキーマ、海老バター、黒毛和牛のビーフの4種類。それぞれスパイスの配合が違うので異なる味わいが楽しめます。こうしたカレーは事前にある程度仕込んでおいて、提供するときに温め直します。

この日は調理の様子を取材させていただきましたが、カレー作りに対する小谷さんの並々ならぬこだわりに驚かされることばかりでした。

「温度が下がると油や旨味などが分離してしまうのでしっかりとルウを混ぜ込んでお出しします」と話すように、小谷さんは温めるときの熱の入れ方にも気を配っています。これは単純に見えてとても大事なこと。
筆者もカレー好きで多くのお店を食べ歩いていますが、意外と提供された時点でぬるいときがあって、そのときはとても残念な気持ちになりますからね。温度と美味しさって直結するなと個人的には思います。

ちなみに家庭で食べるレトルトカレーに関しても、本当に美味しくしたい場合、温度を上げるのに限界がある湯せんより、フライパンでしっかり温度を上げて混ぜ込んだ方が良いとのこと。我々がよく見かける、湯せんしたときにルウの周りに油が浮いている状態は「しっかりと混ざっていない証拠」だと小谷さんは話します。

ルウの仕込みは完成まで4時間弱。大量の玉ねぎを強火で1時間半ほどじっくりと炒め、玉ねぎが色づいてきたところでココハイチエオリジナルブレンドの約15種類のインドのスパイスを投入、そしてテンパリングへ。キーマの場合はここで厳選した合挽きミンチを加えたあと、さらにイチエ極秘の野菜、フルーツなどを山盛り入れて仕上げます。じっくり時間をかけて煮込んだあとは、味に深みをもたせるため、冷凍して寝かせます。

キーマはルウを温めたあと、九条ねぎを投入。さっと和える程度にして食感と風味を残す

今回いただいたのは海老バターと九条ねぎのキーマのあいがけカレー。細長いデザートスプーンをあえて使っているのは、「この方が食べやすいから」というこれまた小谷さんのこだわりです。

肝心のカレーですが、まず「美味い!」の一言。押し寄せる旨味、それぞれのスパイスが個を主張せず上手く調和して具材の良さを引き立てています。九条ねぎの風味、食感がちゃんと残っているのも、ルウにさっと合わせるだけにしているから。具材を入れるタイミングも大事です。

一方、トッピングされたソフトシェルのエビフライはカダイフと呼ばれる糸状の小麦粉のようなものを巻き付けてあるのでサックサク。私のように頭から尻尾まで食べる派にとっては最高の食感です。
バターを効かすことでエビの風味や良さを引き立たせていますし、ルウの中にも小ぶりのエビが入っていて、エビの旨味を十二分に感じられる贅沢な一品でした。女性客の9割が注文するというのも納得です。

そしてカレーに止まらず、添えてあるトッピングにもこだわりが。通常、カレーライスには福神漬けやらっきょうが付いてくるのが定番ですが、添えてあるのは和を感じさせる“浅漬け”。「添加物が入っている市販のものは使いたくない」ということで、旬の食材を使った自家製の浅漬けを使っています。

このようにカレー作りに対して特別な思い入れが随所に見られるココハイチエですが、最大のこだわりは「使用する油の量をとにかく減らすこと」です。一般的なカレーの1/7、1/8程度の油の量で調理しているというから驚きです。味があっさりしていたら驚かないんですが、これだけの旨味がありながら、ヘルシーさも両立している。「後味の引きが良い」と感じるのはそうした秘密があったからでした。その分、野菜やフルーツを大量に使用し、一つ一つの工程を妥協せず、丁寧に行っている。手間も暇もお金もかけているからこそ、成立しているカレーと言えそうです。

海老バターと九条ねぎのキーマのあいがけ

カレー職人ともう一つの顔

店内のしつらえや、京都の食材、そしてお漬物。所々に和のテイストを感じるのは、実は小谷さんが元々は和の料理人だからなんです。こちらは、昼はカレー専門店、夜は「京旬 いちえ」という日本料理のお店で京都の季節料理を提供しており、「京旬 いちえ」としては、去年13周年を迎えました。昼はエプロン姿、夜は割烹着姿で営業されているので、同じ場所にありながら昼と夜で別のお店のような雰囲気を味わえます。

今回は夜の看板メニューの一つである「九条ねぎと丹波しめじのおひたし」も作っていただきました。
先ほどまで、スパイスの香りが漂っていたのとは一転して、出汁が香る調理場に。

「お出汁はすごく大切で、濁ってしまうと、雑味が出るので、この透き通った出汁が美味しいですね」。透き通った琥珀色の出汁を火にかけながら今度は小谷さんの過去の経歴の話へ。

料理人としてのスタートはホテルの中華料理店でしたが、そこでは、下も入ってこなかったりしてすぐに辞め、そこから転々とする日々に。そんな中で思い至ったのは和食の大切さでした。

「和食ができたらいろんな料理で味のバランスを整えたりできるから、和食はやはり大切で、全ての基本になる分野だと気づきました」と小谷さん。そうして和食の道に進み、極めんとする中、カレー職人という別の顔を持つようになったのは「カレーが好きでしょうがなかった」という至ってシンプルな理由でした。

「以前にインド・ネパールのカレーを教えてもらったり作ったりしたことがありまして。そこからなんですけど。スタッフにまかないで作ったらみんな口を揃えて美味しいと言ってくれて。お客さんにお出ししましょうよという話になったんです」。

そんなお話を伺っている間に、丹波しめじやえのき、ねぎを入れたおひたしが完成。ねぎは最後にさっと煮ることで、色味を飛ばさず、シャキシャキ感と風味を残しています。素材そのものの味と出汁の優しい旨味が効いた、まさに京都を感じる一品でした。

「京旬 いちえ」の看板メニューの一つ「九条ねぎと丹波しめじのおひたし」

京都の料理人として譲れないもの

インド・ネパールのカレーに携わる中で感じたのは、胃もたれするほどの油の量をどうにかできないかということ。そこを日本人向けに、“ヘルシーで美味しく”を目指し、油を極限まで削ぎ落としたのがココハイチエのカレーです。過去の経歴を聞いたとき、「転々と」と小谷さんは仰いましたが、本場のスパイスと和食の技術、その両方が調和した一皿を見ると、一見遠回りにも思えるそうした小谷さんのこれまでの生き方が、生き様がこのカレーにも表れているように思えました。

「京都の料理人として、日本人の口に合うもの、京都の人に美味しいと言ってもらえるものを作りたいですし、その中で“出汁”の存在はとても大切です。そうしたことが自分にとって“京都を大切にするという誇り”にも思うし、これからも自分の信念を曲げずにこだわりたい。美味しいものを提供して、お客様に喜んでいただける。そういうお店づくりをやっていきたいなと思います」。

カレー職人と和の料理人という二つの顔を持ちながらもその根底にあるのは“お客さんに美味しいものを届けたい”という実直な思い。これからも、店名に込められた一期一会の精神を大切に、独自の道を極めていきます。

店主の小谷昇平さん 取材を通して料理への確固たる信念が感じられました

<ココハイチエ (京旬 いちえ)>
京都市中京区夷川通高倉東入百足屋町146 ル シエル御所南1F
Tel: 075-231-1122
◇ココハイチエ(昼)平日11:00〜14:00 ランチ不定休 ※カレーランチは平日昼のみ
◆京旬 いちえ(夜)17:30〜23:00(LO 22:00)定休日 日曜(祝前日営業)
※営業時間等変更されている場合がありますので直接店にお問い合わせください。
■website http://kyoto-ichie.com/
■Instagram https://www.instagram.com/kyoto_cocoichi
■Twitter https://twitter.com/@ichigo1A

テーマ音楽 尾辻優衣子(二胡奏者)
オープニング「京騒奏」
エンディング「鏡花水月」
企画制作・出演 木村寿伸(フリーアナウンサー)

 

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