2軒目の「首里そば」とは反対に、すぐに沖縄そばが食べたい、という人を嘉手川さんがよく案内するというのが、那覇市辻の『だるまそば』です。
「ひと口に沖縄そばと呼んでいますが、八重山諸島では『八重山そば』、宮古島のものは『宮古そば』と別の名前になります。
八重山そばの麺は中太の丸麺で、具は短冊に切ってあるのが特徴です。
宮古そばの麺は平たくて細め、具は丸かまぼこではなく、ちきあげ(さつま揚げ)を使います。そして、それらの具を器の底に入れて、上から麺をのせて隠してしまいます。
『だるまそば』は、この宮古そばの名店です。麺は『西崎製麺所』の細い平麺を使い、スープ作りにはとくに力を入れています。鰹節をベースに、だし骨や鶏ガラ、野菜を店の開店に合わせて、3時間半ほどかけて煮出しています。
その日のだしはその日に作る、のが店主のこだわりです」
嘉手川さんの言葉通り、あっさりした中にも旨みを充分に味わえるスープです。細めの麺によく合います。
【だるまそば】
住所/沖縄県那覇市辻2−28—3
電話/098-868-1812
営業/11:00〜14:30、16:00〜18:00
定休日/日曜、祝日
このほかにも、那覇エリアでは一軒家の民家で雰囲気も味わえる『そば処 すーまぬめぇ』(那覇市国場40−1)、中部エリアは『うちなーそば なーざと家』(沖縄市宮里528−2)、北部エリアは『八重食堂』(名護市城1−9−3)などの名前も挙がりました。
最後に、嘉手川さんはこんな体験談を教えてくれました。
「美味しい沖縄そば屋を教えてほしいといわれ紹介したものの、それほど気に入ってもらえないことがたまにあります。
麺は北部のほうが太く、南に行くほど細くなります。ですから、沖縄の人でも、出身地でそばの好みが違ってきたりします。さらに、だしもあっさりが好きな人がいれば、こってり派もいます。
今回は僕が食べて美味しいと思える店を紹介しましたが、それぞれの好みがあるので、食べ比べてみて自分の味覚に合う沖縄そばを見つけてくださいね」
沖縄そばとは、じつに奥が深いのです。
談/嘉手川学
昭和31年、沖縄県那覇市生まれ。沖縄のタウン誌の草分け『月刊おきなわJOHO』の創刊メンバーとして参画。同誌で、沖縄の食について20年近く担当。沖縄の食堂、沖縄そば、島豆腐、泡盛をこよなく愛す。著書に『沖縄チャンプルー辞典』(山と渓谷社)、『沖縄食堂』(生活情報センター)、『すばナビ デラックス』(編集工房 東洋企画)ほか多数。
文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。