あなたは70歳、80歳になっても働くイメージはあるだろうか? 今、定年を迎えた後も働きたいと考えている人が増えているという。しかしその想いとは裏腹に、定年後のキャリア形成が追い付いていない人も多いようで――。ファイナンシャルアカデミーが実施した「定年後に関するアンケート」の調査結果を基に、定年後のキャリア形成の実態を紹介する。
■定年後「給与が下がっても働きたい」約7割
「定年後も働きたいですか?」という質問に対し、全体の約7割が「給料が下がっても働きたい」と回答した。理由としては「老後資金の確保のため」「生きがいだから」「社会とのつながりを持ちたい」といった声が上位に上がった。働きたいという意向の裏には、大きく分けて「必要に迫られて」と「生きる上でのモチベーションを維持」という異なる2つの気持ちが存在するようだ。
■定年後のお金対策「十分できている」わずか3%
定年後の「お金」の対策についてたずねたところ、「十分できている」と回答したのは全体のわずか3%にとどまった。対策を「全くできていない」「あまりできていない」と回答した人にその理由をたずねると、「目の前の仕事で精一杯だから」という声が最も多く、現業に忙殺されて定年後のことを考える余裕がないという現状が読み取れる。
■定年後のキャリア対策「十分できている」わずか1%
また、定年後の「キャリア」対策についてたずねたところ「十分できている」と回答した人は全体のわずか1%だった。前述の通り「定年後も働きたい」と思っている人が多数派であるにも関わらず、そのための準備をできている人はごく少数派であり、その意向と行動の間には大きなギャップがあるということが浮き彫りとなった。
■対策している人が行っているのは「スキル向上」「情報収集」
定年後のキャリア対策について「十分できている」「まあできている」と回答した人に対し、どのような対策を行っているか聞いたところ、「現在持っているスキルを上げる」「情報収集」が上位となった。定年後にやりたいことを明確にした上で「資格取得」や「学校等で専門的な知識を学ぶ」「習い事」といった具体的な行動に移している人はまだ少数派のようだ。
■「そのうち」ではなく「今から」定年後のキャリア形成に向けた学びを
調査結果は、最後にこのような言葉で締められている。
「今回の調査では、低金利時代の継続や年金制度の崩壊、その環境下において住宅ローンや子どもの学費など金銭面での課題を抱える中『定年後給料が下がっても働きたい』人が実に7割にのぼり、その数字が示す通り、老後を楽観視できないという人が多数派であることがわかりました。その反面、今目の前にある仕事に追われ、定年後のことをゆっくりと考える時間が取れず、そのため漠然とした老後不安を抱えているということも明らかになりました。ただ前を向いて一生懸命働き続けてきたけれど、気づけばすぐそこに定年が来ていて、何も準備ができていなかったがために老後の生活が破綻してしまう、という事態を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか。新社会人は、社会に出るまでに学校教育を通して社会に出るための準備をしますが、それと同じように、定年後という新しい社会に出るにあたっての準備も必要と言えます。これからの人生100年時代、生涯現役社会を生き抜くために、『そのうち』ではなく『今から』定年後のキャリア形成に向けた学びや対策、定年前活動『定活』を始められるかどうかが、定年後の人生の分かれ目となるのかもしれません」
準備期間が多いほど、金銭面・精神面への余裕も出てくるだろう。定年後にやりたいことを明確にした上で、情報収集や人脈作りなど、やれることから始めてみてはいかがだろうか。
文/鳥居優美