定年後再雇用制度を導入している企業では、定年退職者の多くが制度を利用して定年後も仕事を続けています。再雇用制度は会社を定年退職した人が、再び会社と雇用契約を結んで働き続ける制度です。再雇用の契約のほとんどが、期間を定めた有期雇用契約であり、一定の期間ごとに更新することが一般的です。

このように雇用形態が変わる場合、有給休暇の取り扱いはどうなるのでしょうか? 今回は、定年後再雇用の有給休暇について人事・労務コンサルタントとして「働く人を支援する社労士」の小田啓子が解説していきます。

目次
再雇用された後の有給休暇
付与日数は変わる?
定年前に付与された年次有給休暇は繰り越せる?
まとめ

再雇用された後の有給休暇

まず、有給休暇の仕組みから解説していきましょう。労働基準法では、雇入れの日から起算して6か月継続勤務し、その間の出勤日数が全労働日の8割に達していれば、有給休暇を付与しなければならないと定められています。

有給休暇は1年たつごとに新たに付与され、勤続年数に応じて日数が増えていきます。通常の会社員の場合、雇入れから6か月経過した時点で10日、最長で20日が付与されます。付与された有給休暇は2年間権利を行使できるので、前年に未消化だった有給休暇は翌年に繰り越されます。

定年後の再雇用

定年退職後の再雇用となると、有給休暇の扱いはどうなるのでしょうか? 再雇用の場合、退職した時点で定年前の労働条件はリセットされて、新たな雇用契約に示された条件で働くことになります。有給休暇もまたリセットされてしまうのでしょうか?

これは、定年再雇用が継続勤務かどうかの判断がカギとなります。行政通達によると、継続勤務であるかどうかは、契約でなく勤務の実態に即して判断することとされています。定年後再雇用の場合は、労働関係が継続しているとみなされ、定年前に付与された有給休暇がなくなることはありません。

その後新たに、有給休暇が付与される日が来ても、定年前から通算した勤続年数として計算されます。ただし、定年退職から再雇用まで長期間ブランクがあった場合は、継続勤務とはみなされない場合があるので、注意が必要です。

付与日数は変わる?

定年再雇用では、有給休暇の日数が減ることはないのでしょうか? 有給休暇の付与日数の決め方を見ていくことにしましょう。

有給休暇の付与日数の計算は?

年次有給休暇は、正社員、パートタイム労働者などの雇用形態にかかわらず、一定の条件を満たせば付与されます。条件は、対象期間の全労働日の8割以上勤務することです。この条件を満たす限り、年次有給休暇は雇入れ後6か月継続勤務すると付与され、1年経過するごとに日数は増えていきます。ただし、付与される日数は、1週間の所定労働日数によって変わってきます。

週5日以上の勤務である場合、6か月経過後に10日、6年6か月経過後には20日の有給休暇が付与されることになります。勤務が5日以上であれば、1日の労働時間の長短は関係ありません。週の所定労働日数が4日以下かつ労働時間が30時間未満の場合は、労働日数によって付与する日数が異なります。

たとえば、週の所定労働日数が3日である場合は、6か月で5日、6年6か月以上で11日と定められています。付与日数については、厚生労働省のホームページなどで確認することができます。

有給休暇の日数が減ることはある?

1年の途中で労働日数が変わった場合はどうなるのでしょうか? 20日間の有給休暇を付与されてから5か月後に定年を迎え、勤務日数が週3日に減ったケースを見てみましょう。週の所定労働日数が減ると、有給休暇の日数も減るのでしょうか? 労働日数が変わっても、その時点で有給休暇が増減することはありません。

年次有給休暇の日数は、基準日の時点の労働条件で決まります。基準日というのは有給休暇が付与された日のことです。ですからこの場合は、次の基準日が来るまでは、有給休暇の日数は20日ということになります。前回の基準日から1年経過した時点で次の基準日が到来しますが、新たな有給休暇付与日数は基準日の労働条件で決まります。

その時点では、勤続6年6か月以上週3日勤務という条件が適用されて、付与日数は11日ということになります。

定年前に付与された年次有給休暇は繰り越せる?

年次有給休暇の付与日数は勤続年数に応じて増えていきますから、長い間正社員として勤務している人の場合、ほとんどが最長日数の20日となっていると思います。それに加えて、前年未消化であった有給休暇も、相当日数繰り越されているという人も少なくありません。

そのため、定年退職する人は定年前に有給休暇を消化するケースが多く見られます。それでも、業務の引継ぎなどの都合で十分に休みが取れなかった場合など、未消化の有給休暇が残ってしまうこともあると思います。この場合、未消化の有給休暇はどうなるのでしょうか? 定年後の再雇用は継続勤務とみなされますので、定年時にすでに付与されていた有給休暇は繰り越すことができます。

有給休暇の確認点

有給休暇が付与された基準日から、次の基準日までの1年の途中で、雇用形態や勤務日数が変わったとしても、継続雇用である限り有給休暇の増減はありません。次の基準日が到来したら、その時点の労働条件で新たに有給休暇が付与されますが、この場合も定年前から通算した勤続年数の労働者としての日数が付与されることになります。

有給休暇は2年間有効ですから、前年の未消化有給休暇は繰り越されます。定年退職後も継続雇用制度を利用して働く人は、有給休暇について

・勤続年数は定年前から通算される。
・基準日に付与された有給休暇の日数は次の基準日まで変わらない。

この2点をしっかり確認しておきましょう。

まとめ

働く人にとって、年次有給休暇は労働基準法で定められている当然の権利です。定年退職を迎えても、かなりの有給休暇が残ってしまったという人もいるでしょう。再雇用契約を結んで継続雇用される場合、定年前に付与された有休の残りはそのまま繰り越されます。定年前にすべて消化しようとあせらず、再雇用されてから有意義に使うのも一案です。休暇を取得してリフレッシュしながら、無理なく仕事を続けていきましょう。

●執筆/小田 啓子(おだ けいこ)

社会保険労務士。
大学卒業後、外食チェーン本部総務部および建設コンサルタント企業の管理部を経て、2022年に「小田社会保険労務士事務所」を開業。現在人事・労務コンサルタントとして企業のサポートをする傍ら、「年金とライフプランの相談」や「ハラスメント研修」などを実施し、「働く人を支援する社労士」として活動中。趣味は、美術鑑賞。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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