文/鈴木拓也

写真はイメージです。

なんとなくの再雇用は「危険」

働くべきか、働かざるべきか?
定年退職を迎える人にとって究極の選択は、その後も働き続けるかどうかだろう。

統計で見れば、65歳から69歳の就業率は約半数に及ぶ。どちらの半数の側を選ぶか、悩ましいところだが、働くことがベターだと言うのは、医師・作家の和田秀樹さんだ。

和田さんは、働くことで得るのはお金だけでなく、「自分の幸せ」にもつながるものだと説く。その理由として、著書『定年後の超・働き方改革』(光文社 https://books.kobunsha.com/book/b10131915.html)の冒頭で以下のように記している。

日々の生活にリズムが生まれ、社会とのつながりを保て、結果として心身の健康が維持されます。さらに、仕事を続けることは老化を遅らせ、認知機能を高く保つ効果があるとも言われています。つまり、「いつまでもビンビンと働くこと」こそ、人生を充実させるカギなのです。(本書16pより)

ならば、「迷っていたけど、今の会社に定年後の再雇用を頼もうか」と思うかもしれない。しかし、なんとなくの再雇用は「危険すぎる」と和田さんは諫める。結局、まだ元気に働ける段階で二度目の定年が訪れるからだ。

では、どうするのが最適解か。本書をもとに、そのヒントを探ってみよう。

「ひとりシニア起業」の道も探ろう

和田さんが、本書を通じて力説するのは、今の勤め先を離れても経済的に自立できる自分の構築だ。

そのための一方策として、資格取得がすすめられている。

ひと口に資格といっても様々なものがあるが、選ぶべきは第二の人生に直接つながるものだ。例として、税理士、宅地建物取引士、ケアマネジャー、行政書士などが挙げられている。

また、60代は、まだまだ再就職が可能な年代だとも。その大きな要因は、人手不足の深刻化。多くの企業は、知識、経験、資格があって、心身も元気なシニアを求めているのである。

職探しもハローワークに限らず、シニア向けの求人サイトも活用したい。高齢者の再就職については暗いニュースが目立つが、視野を広くすれば「思っている以上に道が開けています」と、和田さんはエールを送る。

さらに、再就職とは別の道として、「ひとりシニア起業」もありだとも。これまで会社員一筋だったのに起業なんて、リスクが大きすぎると思われるかもしれない。だが、視点を変えれば、実は成功の可能性は高いという。和田さんは、次のように説明する。

じつは未知の異業種で事業を興すとしても、サラリーマン経験が意外に役立つ場面が多いのです。たとえば、営業をかけてものを売る力、相手を説得する力、スマートに交渉する力、プレゼンする力、はたまたバランスシートを読む力……。きっとあなたにも、すでにたくさんの強みが備わっています。だから、今までの自分の能力を“棚卸し”して、それを生かしていくのがポイントです。(本書74pより)

ひとりでの起業には、AIの進化も後押しする。今までは何人かの人員がいなくてはできなかったことが、AIの活用でひとりでも行えるようになってくる。その時代は、「すぐそこに来ています」と、和田さんは語る。

第二の人生を「人生のご褒美タイム」ととらえる

一時、「老後2000万円問題」が話題になったが、定年後はとかくお金の心配がつきまとう。

それで、定年後の第二の人生も、お金を稼ぐことを優先にしがちだ。

だが、なにより重要なのは、「好きな仕事」に就くことだと和田さんは言う。

もし、子供が独立しており、ローンも完済しているのなら、年金や貯蓄もあるし、稼ぐことに必死になる必要はないはず。ここは、「人生のご褒美タイム」ととらえ、職選びもその路線で追求してみることをすすめる。

おすすめの職業も記されているが、意外なのが映画の「助監督」。和田さんは、映画監督という顔も持ち、これまで何作品かを世に送り出している。それで業界の内情に詳しいが、映画業界も高齢化が進んでいるという。現場ではシニアの監督やカメラマンが当たり前に活躍しており、そこに同年代の助監督が加わっても違和感はない。しかも、このポジションは若い人には人気がなく、年かさの人材が引く手あまたなのだそうだ。報酬は高くはないが、映画学校の学歴や資格は不要で、社会人としての長い経験が生かせる。選択肢の一つとして考えておいてもよさそうだ。

それはそれとして、「定年後も働きやすい四大職業」も、和田さんは挙げる。その四つとは、警備員、マンション管理人、清掃員、介護職を指す。これらは、いわゆる「現場系」の仕事。それまでホワイトカラーとして働いてきた人には、心理的抵抗はあるかもしれない。配偶者から、「世間体が悪い」と反対された人も実際いる。

だが、やはり大事なのは、こうした仕事を「やりたい」「心地よい」と、自分が感じられるかどうかだ。その気持ちに忠実になることで、楽しく働けるだろうし、元気に長生きできる。和田さんは、第二の人生を模索するシニアをこう激励する。

* * *

このように本書は、定年後の働き方を具体的に指南した、またとない1冊。シニア世代に差しかかって身の振り方に迷っているなら、一読をすすめたい。

【今日の定年後の暮らしに役立つ1冊】
『定年後の超・働き方改革』

和田秀樹著
定価1870円
光文社

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2025年
5月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店