夏の食中毒対策その2「缶などウエットフードの保管と管理」
缶のフードについては、ヒトの食品と同じで、開封してから1から2日で使い切りましょう。たった1日であっても、開封したら別の容器に入れて冷蔵保存してください。冷蔵庫で保存されていても、早いと3日目くらいでカビが生えることもあります。その都度きちんと確認しておいた方がよさそうです。
製品によりかなりのばらつきがありますが、最近は健康志向などで、大手メーカーのウエットフードにも『保存料無添加』をうたっている商品があります。こうしたものは雑菌が繁殖するのも早いので、注意が必要です。レトルトパウチの商品をスプーンですくって犬に与え、スプーンをなめさせて、そのままパウチの袋の中に入れて保存したところ、スプーンから袋の中に雑菌が混入して傷んでしまった事例がありました。
岡田さんは「開封後のペット用食品の、特に缶やレトルトパウチの保存には、みなさん意外と管理が甘い印象を受けるので、気をつけて欲しいですね」とアドバイスしています。
夏の食中毒対策その3「飲み水の管理」
夏は犬もたくさん水を飲みますが、飲み水も放置すると細菌が繁殖してしまいます。犬が飲んでも飲まなくても定期的に飲み水を取り替えて、いつも新鮮な状態を保ちましょう。気温が高くなる夏は最低、朝夕2回、新鮮な水に取り替えます。
「ボトルタイプの給水機を使っている飼い主さんの中には、ボトルの中の水を取り替えずに継ぎ足すだけの人がいて、危険です。ボトルの中で菌が繁殖することもあるため、できれば毎日、器を洗って、雑菌やカビの繁殖を予防しましょう。中に入れておく水は必要量が入っていれば、満タンにする必要はありません。早く飲み切って、その都度、中を洗って取り換える方が安全」と岡田さん。
最近、水が循環するタイプの給水器も人気がありますが、流れているからと言って菌が増殖しないわけではありません。こまめに洗って雑菌が増えないようにしましょう。商品説明書ではどのメーカーも、一応、除菌フィルターついていると書かれています。しかし、フィルターだけで完全に菌を除去できるわけではありません。長時間放置しておけば、汚い水を飲ませることになってしまいます。こちらも定期的に消毒した方が良いでしょう。
岡田さんによると、「水を入れた器の中がぬるっとしてきたら、菌が増殖してきた証拠。よく洗ってください。家庭用の食器洗いの漂白剤などを使って除菌する場合は、時間を掛けて、ていねいにすすいでくださいね」とアドバイスしてくれました。
「食中毒に関しては、飼い主さんが気を付けてちゃんと予防できているな、と普段の診察で感じることが多いです。とはいえ、下痢や嘔吐という症状が表れた場合はすぐに動物病院へ相談してください。犬からヒトに影響を与える細菌がいるケースもあるので、可能ならば便を動物病院に一緒にお持ちください」と岡田さん。
食べ物と飲み物の食中毒対策で、元気に夏を乗り越えましょう。
取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/
文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。
写真/木村圭司