取材・文/柿川鮎子 写真/木村圭司

人間にとっては美味しい果物ですが、犬や猫にとっては実は怖い食べ物となるものがあります。チョコレートや玉ねぎが、よく知られています。

じつは、夏にかけて出回る「ブドウ」もそのひとつ。ひびき動物病院院長の岡田響先生は、中毒を招くブドウの危険性について、「ブドウは生の果実も、菓子パンや焼き菓子などに入っている干しブドウも危険だとされています。犬や猫が知らずに食べてしまうと、深刻な腎不全を起こしてしまい、命に関わります。家庭では犬や猫が直接触れられない場所に保管してほしいですね」と教えてくれました。

うっかりテーブルの上に置いたものを犬が食べてしまうケースが多いので冷蔵庫で保管を。

「チョコレートや玉ねぎが犬にとって危険な食べ物であることはよく知られていますが、ブドウが犬にとって危険な食べ物だと注目され始めたのが比較的最近なこともあり、知っている飼い主さんは意外と少なく、テーブルの上の置きっぱなしにして、うっかり食べられてしまったり、干しブドウの入ったぶどうパンなどを食べてしまうケースがあるようです。とくに干しブドウのレーズンはシリアルなどにも含まれていて、飼い主さんが気づかないうちに食べてしまうこともあるので、普段から注意が必要です」(岡田先生)

ブドウ中毒では怖い急性腎不全になる

タマネギは、アリルプロピルジスルファイドという成分が犬の血液中の赤血球の膜を破壊することがわかっています。またチョコレートはテオブロミンとカフェインが中毒の引き金となるのですが、ブドウの場合は、含まれる成分の何が犬にとって害になるのか、まだわかっていません。そして、おそらく猫も同様だろうと考えられています。

日本小動物獣医学会誌で紹介された犬の症例では、3歳雄のマルチーズがブドウ約70グラムを食べたところ、5時間後に嘔吐と乏尿(尿が少なくなる)となり、4日後に死亡した事例が紹介されました。日本だけでなくアメリカ、イギリスでもブドウ中毒について症例が発表されており、その多くは2~3時間後には嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振などの症状が出て、高リン血症、高カルシウム血症、乏尿・無尿(尿が出なくなる)など、特徴的な腎不全の兆候が現れました。

ブドウの何が原因なのか、今のところよくわかっていませんが、症状が出たすべての犬で腎尿細管壊死が見られ、症例報告にあるような急性腎不全になってしまうようです。腎不全は不可逆性(元の状態に戻れない)に進行する怖い病気で、なってしまってからでは治すことは困難です。

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