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中央アジア キルギス共和国:極端なルートの国際線特典航空券で出入国する旅(パラダイス山元の旅行コラム 第12回)


夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。木曜日は「旅行」をテーマに、パラダイス山元さんが執筆します。

文/パラダイス山元(ミュージシャン・エッセイスト)

キルギス共和国の位置、わからない方がほとんどではないでしょうか。私もそれまでの不勉強を恥じいるばかりです。ある日まで、どこにあるのかも、まったく存じ上げませんでした。

2008年のクリスマスも終わり、なんとなくお正月の準備で慌ただしい御用納めの日に、外務省から唐突に電話がありました。

「パラダイスさんを探している国があります。キルギス共和国です。2月7日に首都ビシュケクとその周辺で、クリスマスの祝賀行事が開かれるそうです。日本から公認サンタクロースを招待したいそうです。領事館の担当者に連絡先を教えてもよいでしょうか?」

「旅費とか出るんでしょうか?」

「出ないと思います」

「自腹ということですか?」

「たぶん、そうです」

わざわざ行く価値あるのかどうだかもよくわからない、謎の祝賀行事が、しかも2月に開催される……。なんか面倒なことに巻き込まれそうな感じがしたので、

「ヤメておきます」

と即答してしまいました。

「わかりました。ご意向を尊重させていただき、非礼のないように、こちらから丁寧にお断りしておきます」

歳をとってきて、あまり物事を深く考えずに、直感で即答するクセがついてしまうと、あとあと様々な困難、試練が待ち構えていたりするものです。

その夜、デンマークの長老サンタから、丑三つ時に、突然電話がかかってきました。

「なんで、キルギス共和国政府からの正式な招待を断ったんだ。ユーは、それでもサンタクロースか? アジアに一人しかいない公認サンタクロースが、なぜすぐ近くのアジアの国へ行くことができないんだ!」

すぐ近くと言われても……。

とにかく興奮して沸騰状態で、こちらから弁解する間もなく、ただただ怒られ続けてしまいました。

「デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、アメリカ、カナダ、イギリス各国から公認サンタクロースが、それからロシアからもジェド・マロース(ロシアのサンタクロースの呼び名)が参加する。本当に、ユーはアジア代表として出席しなくていいのか? こちらの言ってる意味、ユーはわかってるのか?」

「わかりました、わかりました。出ます、行きますとも、トッホッホー」

お正月明けて、

「やっぱり行くことに決めました」

と、外務省へこちらから連絡しました。

「両国の友好親善にご協力いただき、誠にありがとうございます」

キルギス共和国へは、成田→イスタンブール(トルコ)→ビシュケクと、途中のトランジットも含めると18時間ほど。単純にヨーロッパを往復するより運賃は高いです。

なんとかキャッシュアウトなしで、マイルを使った国際線特典航空券で行こうとすると、なんとも中途半端な行程になり、マイルも結構放出してしまうので、どうせならと腹をくくり、キルギスへ行くのを主目的にしつつ、前後にヨーロッパ、さらに香港、韓国を周遊して帰ってこようと企みました。

1便目 成田→フランクフルト(ドイツ): 11時間45分
2便目 フランクフルト→コペンハーゲン(デンマーク):1時間25分
3便目 コペンハーゲン→フランクフルト:1時間35分
4便目 フランクフルト→イスタンブール (トルコ):2時間45分
5便目 イスタンブール→ビシュケク:5時間10分
6便目 ビシュケク→ロンドン(イギリス):10時間10分
7便目 ロンドン→香港:12時間10分
8便目 香港→仁川(韓国):3時間20分
9便目 仁川→成田:2時間10分

これだけ乗って12万5000マイル減、全9区間オールビジネスクラスです。ひたすら食べまくりの旅になりますが、よろしかったでしょうか?

ANA・成田→フランクフルト(ドイツ)の旧型ビジネスクラス。真ん中3列とか、今となっては懐かしいです。(撮影:CAさん)

 

フランクフルト空港に到着後、すぐにラウンジに直行。フランクフルトソーセージの無料食べ放題に臨みます。(撮影:パラダイス山元)

 

スカンジナビア航空・フランクフルト→コペンハーゲン そのあと、またフランクフルトに戻ります。何やってんだか。(撮影:パラダイス山元)

ルフトハンザ航空・コペンハーゲン→フランクフルト。ものすごく古臭そうな機体で一瞬不安になりましたが、復刻塗装の特別機とのことでした。内部はとくに変わっていません。(撮影:パラダイス山元)

キルギスの首都ビシュケク到着後、世界中の報道機関が待機しておりましたので、これが本格的な国際イベントだということが理解できました。このニュースは各国の通信社から国際配信されて日本まで届いているはずなのですが、日本のテレビ、新聞では報じられることはありませんでした。

日本国内では、サンタクロースの活動は秘密裏に、伏せられがち。
子どもへの配慮か、印象操作なのかはわかりかねます。

キルギス共和国政府関係者と各国のサンタクロース初顔合わせ。(撮影:キルギス共和国政府の職員)

まず、なぜ2月に開催かというと、旧暦のお正月前にやっぱりクリスマスもあるのでした。旧暦を重んずる東欧、アジア各国では長いことそうなっていて、中国も10年ほど前までは国内でのクリスマスイベントは禁止されていたのですが、解禁されてからは毎年旧正月前にクリスマスをお祝いしています。

えっ、こんなにたくさんの国が参加しているの? と街中のポスターの前で。(撮影:通りすがりのキルギス人)

大統領府に入ったら、真っ先にキルギス共和国大統領に「よっ、大統領!」と声をかける気満々でしたが……。(撮影:パラダイス山元)

キルギス共和国大統領執務室に勢ぞろいしたサンタクロース。(撮影:キルギス共和国政府の職員)

今回の参加国は、正確にはキルギス、カザフスタン、ウズベキスタン、トルコ、ロシア、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、カナダ、アメリカ(ワシントンD.C.) 、アメリカ(アラスカ)、 イギリス、日本、そしてなぜか、グリーンランド国際サンタクロース協会の公認サンタクロースがいない韓国からもお越しになっておりました。

過去に何度かお会いしているロシアのジェド・マロースが、いい意味で、強力にこのイベントを仕切っているという印象を受けました。キルギス、カザフスタン、ウズベキスタンのサンタクロースっぽいような、いや絶対そうではない、なんかよくわからない白い衣裳の、ゲームの中でしか見たことのないような特殊キャラの参加者は、フレンドリーですがロシア語しか話しません。

ご飯を食べる時は、言葉の壁か、とりあえず、英語圏のいつもの赤白の気があう者同士になってしまいます。公式行事以外も通訳がつかないと、こういう状況になりがちです。(撮影:小林充明)

↓イベントは、福祉施設や学校を訪れたり、街頭をパレードしたり、子どもたちのダンスや音楽の発表会、さらにはスキーと、かなり盛りだくさんな内容でした。

そもそも、なぜこのイベントがキルギス共和国で開催されることになったかというと、スウェーデンの技術コンサルタント会社が、クリスマスが近づいた12月4日に、

「北欧諸国で調達されたクリスマスプレゼントをアジアの国々へ届けるためには、どこかに物流の中継地点がないとクリスマスイブ当日の配送は無理だ。

プレゼントの配達先は約25億件、地球上の人口密度は1平方km当たり平均48人で、家と家の間隔を約20mで試算し、最短ルートで見積もっても、これまでサンタクロースの居住地として最有力視されてきた北極からは、クリスマスイブからクリスマス当日の48時間以内にプレゼントをすべて配達することは不可能である。

物流拠点をキルギス共和国とした場合、地球の自転方向と逆周りで48時間以内にすべての家々にプレゼントを配達できそうだ」

というプレスリリースを出したところ、数日後、キルギス共和国政府が、

「そうです。キルギスにサンタクロースおります」

と発表したことに端を発します。

発表しただけでは真偽のほどがわかりませんから、では、世界各国からサンタクロースのみなさんにお集まりいただいて、それを証明してもらいましょうということだったのです。

↓各国からサンタクロースが大集合。これぞ、We are The (Santa )world!?

キルギス人は、見た目ほとんど日本人と変わりありません。というか、出会う女の子は全員アイドルのようなかわいい子ばかり。(撮影:パラダイス山元)

秋元康さんに、今度餃子食べにいらした際に、キルギス共和国でアイドル発掘しては? と進言してみます。(撮影:小林充明)

映画「スター・ウォーズ」に登場するロボット・C3POっぽいおじさんは、親日家のようで、「キルギス人と日本人は、祖先は同じで、山が好きなほうがキルギス人になって、海が好きなほうが日本人になったんだ」と、私に力説。(撮影:小林充明)

ロシアからスキー客も大勢訪れています。(撮影:小林充明)

イシク・クル湖畔のカラコルに到着して、意外な事実を知ることに。

カラコルから西へ約100㎞のタムガ村に、旧ソ連軍によって元日本兵が抑留されていたというのです。その数125名。ほかの地域では、抑留者の多くが飢えや寒さで亡くなったりしている中、タムガ村の日本人は、全員無事に帰国を果たせたそうです。

ビシュケク市内を走るトロリーバスには大きな日の丸が描かれていて、その下にはロシア語で「この車両は日本からの贈り物です」と。

お互いに理解しあう長い歴史があったのでした。

サンタクロースの草の根外交も気がつけば、今年で21年目になっていました。北欧諸国からではなく、日本からのサンタクロースの需要というのも結構あったりします。日本のアニメを見慣れている子どもたちからは、

あの猫型ロボットの住んでる街の名前は?
ハムスターは飼っているか?
黄色いモンスターとサンタさんは仲よしか?

など、唐突かつ次々に質問を浴びせられます。日々の勉強は欠かせません。
世界中の子どもたちが、日本に興味を抱いてくれていることが、活動の励みになっています。

文/パラダイス山元(ぱらだいすやまもと)
昭和37年、北海道生まれ。1年間に1024回の搭乗記録をもつ飛行機エッセイスト、カーデザイナー、グリーンランド国際サンタクロース協会公認サンタクロース日本代表、招待制高級紳士餃子レストラン蔓餃苑のオーナー、東京パノラママンボボーイズで活躍するマンボミュージシャン。近著に「なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?」(ダイヤモンド・ビッグ社)、「読む餃子」「パラダイス山元の飛行機の乗り方」(ともに新潮文庫刊)など。

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