年を重ねるほど、味わい深くなる人付き合いのコツ 【心磨く名言 第十一回】武者小路実篤

一緒にいることが多く、信頼しあっていた間柄だったのに、なぜか不思議と縁遠くなる人がいます。これといった理由があるわけでもなく、いつの間にか全く別々の人生を歩んでいることに、しみじみと気づくこともあります。

結局のところ、多くの出会いと別れを経験しているせいか、年を重ねて友人との関係を考えることも、随分少なくなってきました。煩わしいことから離れていたとしても、今回の「心磨く名言」を読むと、なぜか新しい人との出会いが楽しみになるものです。では、武者小路実篤が残した人付き合いのコツともいえる名言を一緒に見てみましょう。

『君は君、我は我也、されど仲良き』

実篤

これは、日本の小説家・劇作家である武者小路実篤（むしゃこうじさねあつ・明治18～昭和51年／1885〜1976年）の言葉です。「君は君であり、私は私」と、人間の存在について短いことばで明確に一線を画します。

この名言が素晴らしいのは、次の言葉。単に相手と自分の違いを認めるだけでなく、「されど仲良き」と、関係がそこから生まれていることなのです。この言葉を見た時、心がすーっと安堵する気がしました。ここでいう仲が良いということは、自立しあった間柄でも、決して孤立しないことを予感させます。とてもあたたかい言葉です。

この言葉を自分の職場や近所での人間関係にあてはめて、「これは私とあの人との関係」などと、具体的に思い巡らすのもいいかもしれません。

具体的な誰かが思い浮かばなくても、この言葉「君は君、我は我也、されど仲良き」には、人間関係を作るうえでの支えになる言葉といえるでしょう。

武者小路実篤の生涯

武者小路実篤は、明治43（1910）年に友人・志賀直哉らと雑誌『白樺』を創刊。以後、60年余にわたり文学活動を続けます。小説『お目出たき人』『友情』『愛と死』『真理先生』、戯曲『その妹』『ある青年の夢』などが代表作。多くの人生論を著しており、一貫して人生の讃美、人間愛を語り続けます。

大正７（1918）年には「新しき村」を創設し、理想社会の実現に向けて、実践活動へ。また、『白樺』では美術館建設を計画し、昭和11（1936）年の欧米旅行では各地の美術館を巡り、美術にも関心が深く、多くの評論もあります。自らも40歳頃から絵筆をとり、人々に親しまれている独特の画風で、多くの作品を描きました（最初は苦手意識が大きくあったそうです）。

実篤はその生涯を通じて、文学、美術、演劇、思想と幅広い分野で活動し、業績を残しています。

武者小路実篤ゆかりの地

武者小路実篤記念館

武者小路実篤記念館は、実篤が昭和30（1955）年から51（1976）年まで、晩年の20年間を過ごした邸宅（現：実篤公園）の隣接地に昭和60（1985）年10月に開館。実篤の本、絵や書、原稿や手紙、実篤が集めた美術品などを所蔵し、多彩なテーマで展覧会を開催しています。

閲覧室では、実篤が好きだった画家の画集、友人の志賀直哉や岸田劉生らの本、雑誌『白樺』や日本近代文学の本や資料があり、調べ物もできます。見るだけでなく、子どもから大人まで参加できる様々な講座も実施。時代を経てもなお新しい発見ができそうですね。

武者小路実篤記念館
開館（園）時間：午前9時から午後5時（閲覧は午前10時から午後4時）
休館日：月曜日（祝日のときはその翌日）（翌日が祝日のときはその翌日）年末年始（12月29日から1月3日）
※展示室・閲覧室には、休館日のほかに休室日があります。詳しくは同館HP「今月のスケジュール」をご覧ください。
入場料：大人200円
住所：東京都調布市若葉町1-8-30
アクセス：＜京王線＞仙川駅またはつつじヶ丘駅下車徒歩約10分、＜小田急線＞成城学園前駅より「調布駅」、または「神代団地」行バス、稲荷前下車徒歩約５分

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武者小路実篤と言えば『仲良きことは美しき哉』の名言もよく知られています。この名言も友情の美しさを伝えてくれます。しかし、今回、取り上げた『君は君、我は我也、されど仲良き』は、何歳になっても通じる「人間関係のコツ」だと感じます。

昭和から平成、令和と時代を超えて、実篤の人間への賛歌として受け止めたい言葉の一つ。心のあり方をまっすぐにできて、元気になる名言です。

肖像画・アニメーション／もぱ・鈴木菜々絵（京都メディアライン）
文／奈上水香（京都メディアライン）
HP：https://kyotomedialine.com
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引用・参考
『武者小路実篤記念館公式ホームページ』https://www.mushakoji.org/