文・石川真禧照(自動車生活探険家)

世界的な人気を集めるマツダのCXシリーズに、また個性的な一台が登場した。独自の「人間中心開発」はなお進化し、走行中の疲労軽減だけでなく、運転者の五感を刺激し、ワクワク感が止まらない仕上がりだ。

美しい車づくりを目指しているマツダの最新SUVは、デザインで購入する人も多い。ホワイトメタリックの車体色は受注数第1位。
長めのボンネットはスポーティさを表現し、傾斜のついた短い後ろ扉は軽快さを演出する。

マツダが作る車の特徴は、「人間中心開発」。車本体の設計だけでなく、座席の位置や車が発する振動、音に関しても細かく分析し、車づくりに取り組んでいる。そのため、マツダは大学の研究室や民間の研究機関と手を組み、新しい車づくりに生かしている。

マツダの車づくりが、他社と異なる発想に至ったのは、2010年代に入ってから。まず行なったのは、デザインの改革だった。とにかく「カッコイイ車」を作る。この試みは成功し、2012年に登場したCX-5、アテンザなどは国内だけでなく、北米や欧州でも人気を集めた。

さらに、技術陣はそれまで2~3年ごとに改良を重ねてきた車づくりを、新技術の開発が実用化できる段階で、即座に実施することにした。ときには1年に2回、改良型を発表したこともある。

役に立つ先進的な技術は、すぐにでも顧客に使ってもらいたい、という発想だった。

そもそも「人間中心開発」という観点からの車づくりは、運転する人の姿勢に着目することから始まった。ペダルとハンドルと座席が直線上にあれば、運転する人は体幹がズレないため、疲労の軽減につながる。

同じように車から発せられる音に関しても、耳の構造から重奏に感じられる周波数を割り出し、それを増強して走行中の心地よさを演出している。

こうした細かな積み重ねは徐々に車を購入する人に浸透し、マツダの車はいっそう人気が高まっていった。

CX-60も予約受注の開始から2か月半で、月販計画台数の4倍を超える受注が入っているという。

必要な情報により、見る場所が異なる前面の計器類。色使いも外装色に合わせてある。
中央の大きなツマミは走行状況に合わせて瞬時にドライブモードを切り替えるためのもの。
後席用のエアコンと座席暖房も装備。その下にはAC電源とUSB用端子も用意されている。

技術者たちが目指したのは「脳と車が直結するような感覚」

横長の後部ライトは、方向指示器のときは左右に点滅する方式を採用。前後のドアは床下まであるので乗り降りの際に服が汚れない。

車の設計、開発から生産まで、「人間中心開発」の哲学を貫く姿勢は、とくに車を運転し始めてから長い年月が経過している熟年世代の関心を集めているようだ。

CX-60の受注開始時の購入層の年代を調べてみると、50代以上が全体の4割を占めていた。さらに車に詳しく、愛好家が多く乗っていると思われる輸入車からの乗り替えも2割近くいたという。

受注段階ではまだ実車に乗ったことがないにもかかわらず、乗り替えることを決心しているのだ。いち早く試乗してみると、その選択は間違ってはいない。

今回、実際に試乗したCX-60は新開発の直列6気筒、3.3Lディーゼルターボエンジンと、同じく新開発の8速自動変速を搭載するマイルドハイブリッド車。騒音や振動が見事に抑えられ、操縦性も運転姿勢もすべてが自然体だ。

これなら長距離の走行でも疲労具合はかなり軽減される。しかも、操っているときに五感を刺激されるような感覚になる。車好きにとっては、ワクワク感が止まらない感覚。マツダの技術者は「脳と車が直結しているかのような感覚を目指した」と説明するが、確かに新しい感覚が心地よい車だ。

ボンネット下には新開発の直列6気筒ディーゼルエンジンと小型のモーターが入っている。
前席には車種により空調装置が内蔵されている。
後席はやや高めの着座で足元も狭くない。頭上はガラスルーフで空間も広い。
後部の荷室は奥行き、左右幅、高さともに充分に確保されている。後席背もたれは3分割可倒。

マツダ/CX-60 XD ハイブリッド プレミアムモダン
全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:1940kg
エンジン/モーター:直列6気筒DOHCディーゼルターボ/永久磁石式同期電動機
最高出力:254PS/3750rpm:16.3PS
最大トルク:56.1kg-m/1500〜2400rpm:15.6kg-m
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:21.0km/L(WLTCモード)
使用燃料:軽油 58L
ミッション形式:8速自動
サスペンション:前・ダブルウィッシュボーン 後・マルチリンク式
ブレーキ形式:前・後ベンチレーテッドディスク
乗車定員:5名
車両価格:547万2500円
問い合わせ先:コールセンター 0120・386・919

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2023年1月号より転載しました。

 

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