文・石川真禧照(自動車生活探険家)

燃費や環境性能を重視する自動車が世界的な主流となるなか、フランスのルノーが「走りの楽しさ」も備えたハイブリッド車を開発した。モータースポーツで磨いた走りの技術を見事に市販車にも搭載させた。

混雑したパリの街を走り回るスポーティ、コンパクトカーを意識した車づくりが、燃費と走行性能を両立させた車を完成させた。

脱炭素化社会に向けて自動車も技術開発を続けている。日本では以前から省エネルギーの観点からエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車が普及していた。トヨタが1997年に世界初の量産ハイブリッド車を発売し、搭載車種を増やしたこともあり、ハイブリッドがエコカーの一般的な方式になった。しかし技術的な特許により、他の自動車メーカーはエンジン+モーターによるハイブリッド方式の車を生産することが困難だった。独自に開発を行なっても充分な性能が得られなかったのだ。唯一、日本のホンダが自社のハイブリッド方式を開発し、実用化しているにすぎなかった。

EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)は究極のエコカーだが、本格的に普及するにはまだまだ時間がかかる。世界の自動車メーカーや研究開発機関が、安価に実用化できるハイブリッド車の開発に取り組んだが、エンジンとモーターの性能を最大に発揮する実用化の道は厳しかった。

そこに登場したのがフランスのルノーが開発したEテック・ハイブリッドだ。ルノーといえば、欧州でフォーミュラ1(F1)などの自動車技術の最高峰であるモータースポーツに長年挑戦し続けている会社だ。F1もいまや燃費やクリーン化が必然の世界。そこに参戦することで技術を磨き、生産車に転換する。ルノーは自社のハイブリッド車を完成させるにあたり、モータースポーツの開発部門と協力した。実戦での試行錯誤と現場での実験の結果、トヨタやホンダの特許に抵触することのない独自のハイブリッド方式を完成させ、市販車に搭載したのだ。その最新型が日本に上陸した。

国産小型車と全幅以外はほぼ同じ大きさだが、タイヤ径は大きく、走りを重視している。

発進してからの力強い加速と高速走行での効率の良い走り

外観からハイブリッド車であることがわかるのは、右テールランプ下の「eTECH」のエンブレムだけ。

軽量、小型でスポーティな走行性能のルーテシアに試乗した。

2ボックス、5ドアの車体はトヨタのアクアとほぼ同じ。全幅が3cmほど大きいので3ナンバーになる。エンジンはガソリン仕様の1.6L。ルノーの子会社である日産製だが、大幅に設計変更した。

ハイブリッド方式は、エンジンとモーターを走行状況に応じて使い分けるのはトヨタと同じだが、モーターとエンジンの力を振り分けたり、動力を伝えたりするところにルノー独自の技術が投入されている。そこがトヨタやホンダとは異なる部分。F1など競技車両で使われているクラッチなどを用いているという。モータースポーツの世界での経験が存分に生かされている仕組みだ。

簡素で実用性を考えた運転席回りの装備類。中央の液晶パネルも大型で見易い位置にある。
前席中央部。白色の四角形はキー。ここにすっきりと収まる。その右はサイドブレーキ。
前席にはUSBや12V電源などが備わり、スマートフォンなどの充電もできる。
エンジンとモーターの下に、ルノーが特許を取得した駆動系技術が搭載されている。

ハンドルを握ってみると、発進してからの力強い加速、高速走行での低燃費で効率の良い走り、減速時や制動時でのエネルギーの回収と電池への充電が、実に滑らか。しかも運転をしていて、楽しい。

燃費重視や環境重視の車づくりが求められているなか、それでも運転する楽しさを追い求め、それを実現する自動車メーカーがあることは車好き、運転好きにとって、頼もしい存在といえる。

前席の座面と背もたれはレバーとダイヤルで調整する。
後席の着座位置はやや高めだが、頭上は身長170cmでも空間がある。
開口部はやや高いが、奥行き、高さとも国産の同クラスより広いトランク部分。

ルノー/ルーテシア Eテック ハイブリッド レザーパック
全長×全幅×全高:4075×1725×1470mm
ホイールベース:2585mm
車両重量:1310kg
エンジン・モーター:直列4気筒DOHCガソリン、1.6L・交流同期
最高出力:91PS/5600rpm・49PS
最大トルク:14.7kg-m/3200rpm・20.9kg-m
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:25.2km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン 42L
ミッション形式:電子制御ドッグクラッチマルチモードAT
サスペンション:前・ストラット式、後・トーションビーム式
ブレーキ形式:前・ベンチレーテッドディスク、後・ディスク
乗車定員:5名
車両本体価格:344万円
問い合わせ先:ルノーコール 0120・676・365

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2022年11月号より転載しました。

 

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