文・石川真禧照(自動車生活探険家)

フランス屈指のメーカーを擁するグループPSAがフィアット・クライスラー・オートモービルズと合併し、世界第4位の自動車企業「ステランティス」が誕生。中核ブランド「プジョー」の電気自動車に試乗した。

ガソリンエンジンの2008と同じ形だが、フロントグリルが車体と同色。ライオンマークは見る角度により色調が変化する。

自動車の歴史は、ドイツ勢が先頭に立ち、引っ張ってきたと思っている人は多い。ところが世界最古の自動車メーカーはフランス発祥である。世界初のDOHCエンジンも、フランスで生まれた。1894年に開催された世界初の自動車レースもフランス開催だし、優勝したのもフランス車だった。

そのすべてが「プジョー」の歴史である。現在のプジョーは、個性的でおしゃれなフランス車というイメージだが、実は先進性や安全技術に関して、世界でも先頭集団を走る自動車メーカーなのだ。

ここ最近、欧米日の自動車メーカーが次々と新開発のEV(電気自動車)を発表するなかで、プジョーも昨年秋にEVを発表した。「2008(ニーマルマルハチ)」という同社の小型SUVがフルモデルチェンジをするのに合わせて、EV「e-2008」を発売。外観、内装ともにガソリン車とほとんど同じ車体を用いた小型車だが、一充電あたりの航続距離は385km(※JC08モード)と充分長い。

全高は1550㎜と立体駐車場に入る高さ。最低地上高は205㎜でオフロード走行も可能。

日本政府も2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、これからのマイカーとしてEVが注目されている。

最新の欧州系EVはどれほど実用性があるのか。

最新のプジョー車の運転席前の計器盤は、ハンドルの上から見下ろして確認する方式。
給電口は急速充電用と200V用を装備。
充電ケーブルと専用バッグが付属。
前席は大きく身体をしっかりと支える。
後席はやや高めの着座で足元も狭くない。

日本の道に適したサイズ

e-2008の車体サイズは、全長4.3m、全幅は1.77m。小ぶりなので、狭い路地などでも扱いやすい。全高は1.55mで、立体駐車場を利用できるのが便利だ。前輪駆動だが、最低地上高が205㎜と高く、深めの轍(わだち)がある林道でも車腹を擦らずに走行できる。バッテリーは床下にコンパクトに収納。後部には広い荷室が確保されている。

アクセルから足を離すと減速しながら発電する

3本の尾灯はプジョーのエムブレムであるライオンの爪痕をモチーフにデザインされた。

e-2008の運転席に座る。

着座位置はやや高めだが、座面脇のレバーで前後左右、高さを調節できる。座席がすっぽりと体を包み込み、座り心地はとてもよい。

スタートボタンを押すと計器盤に文字が浮かび上がる。充電量は100%、航続可能距離は310kmと表示された。カタログ値(385km)より短いが、これは前回、車が停止する前までの運転状況から算出された数値で、あくまでも目安。実際は、坂道を下る時などに回生装置が働いて電池に充電され、航続可能距離が伸びる。

ハンドルの奥にあるパドルレバーにより、電池への回生(充電)量を2段階に変えられる。回生重視のBモードにシフトし、アクセルペダルを離すと、強烈なエンジンブレーキがかかったかのような減速をし、ブレーキを踏まずに停車寸前まで減速する。一方、加速は鋭く、出足は3Lセダン並みに速い。音もなくぐんぐん加速する。

今回は東京から房総半島の富津あたりまで走ったが、往復約290kmを充電することもなく走り切った。空調を使用しても電力消費量は少なく、高速走行での電費もよかった。この車なら、長距離ドライブも安心感が持てそうだ。

車体前部には136PS、26.5kg-mを発生するモーターなどを搭載している。
荷室の幅は1m以上。後席の背もたれは分割して前に倒せるが、荷室面とは段差が残る。

プジョー/e -2008 アリュール
全長×全幅×全高:4305×1770×1550mm
ホイールベース:2610mm
車両重量;1580kg
モーター:交流同期
最高出力:136PS/5500rpm
最大トルク:26.5kg-m/300〜3674rpm
駆動方式:前輪駆動
一充電走行距離:385km(JC08モード)
総電力量:50kWh
サスペンション:前:ストラット式、後:トーションビーム式
ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク、後:ディスク
乗車定員:5名
車両価格:431万円(消費税込み)
問い合わせ先プジョーコール 電話:0120・840・240

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2021年4月号より転載しました。

 

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