文・石川真禧照(自動車生活探険家)

良い技術はいち早く実用化を──。自動車の製造における工場や販売態勢の都合という大きな“課題”を乗り越え、しかも販売台数の約3割を占める基幹車種において、マツダが新たな改良車を早々に誕生させた。

造形美を重視した外観は5年目を迎えたいまでも美しい。今回はヘッドライトの形状が変わり、ナンバープレートの下に防卸板が加わった。

新型車が発売されて、年月が経過すると、自動車メーカーはどこかしら手直しをすることが多い。これをマイナーチェンジとか商品改良と呼んでいる。メーカーや車種によっても異なるが、大抵は1~2年に一度は実施されている。それが恒例のようにすら思われてきた。

ところがマツダは数年前からこの考えを改めはじめた。車を開発している技術者たちは、新型車を発売した後も研究開発を続けている。そこで、すぐにでも採用したい技術や装備が誕生しても、新型車に投入できるのは1年以上も後になるのが通常だ。だが、マツダは新たな技術や装備に実用化の目途がついたら、即座に既存の車種に実装することにした。

車を買う人に向け、良いものはすぐに使ってほしい、と考え、時期は決めずに“年次改良”として随時、新商品を提供している。時には1年間に複数回の改良型を発売することもある。

悪路走破性を望む声に応える

未舗装など悪路走行も意識した仕様に。最低地上高はもともと210mm確保されている。

新規採用の技術や装備は実用化に際し、充分な試験を繰り返さなければならない。とくに、CX-5はマツダの販売台数の約3割を占める基幹車種。それだけに新技術や新装備は注目度も高い。

空気吹き出し口や座席にライムグリーンを配したのが「フィールドジャーニー」の特徴。

今回の改良は未舗装路や深雪道などの悪路走行を含むアウトドア走行に最適な設定を実用化したこと。これまでCX -5は日常走行に適した「ノーマルモード」と俊敏な加速感が得られる「スポーツモード」が選択できた。しかし、SUVという車の性格上、悪路走破性を望む声も多かった。マツダもそれは承知しており、今回、「オフロードモード」を実用化した。

標準仕様のCX-5はモード切り替えは「スポーツ」「ノーマル」だが「オフロード」が加わった。
マツダの安全運転思想には、正しい運転姿勢がある。
後席の着座位置はやや高めだが頭上の空間や足元に圧迫感はない。
高さも幅も充分な荷室。後席の背もたれは2/1/2の3分割可倒。床面は高さが2段階に調節でき、防水加工も施されている。
撮影車は排気量2.2Lのディーゼルターボ。音も振動も少なく、トルクも充分だった。2.0Lのガソリン仕様も選べる。

急斜面の登り坂での発進ではアイドリング回転数を自動調整

車体後部下にも悪路保護用の防御板が付く。タイヤは夏用と冬用の両方の性能を持つものが標準装備される。アルミホイールは黒色。

各モードへの切り替えはATシフトレバー近くのスイッチで、すぐに簡単に行なえる。今回は未舗装路で試乗したが、後輪への駆動力配分が最大化されたことで4輪全体での駆動力が向上し、走破性と安定性が体感できた。タイヤの接地性が向上したことでハンドルを握っていても安心感がある。カーブなどでの車体の傾きを車両が検知し、悪路での曲がりにくさが改善されているのもわかった。

走行モードを切り替えると、計器盤の仕様も変わるので、モードの確認がひと目でわかる。

感心したのは急斜面の登り坂での発進だ。路面の勾配を検知し、エンジンのアイドリング回転数が上昇してずり下がりを抑制。坂に対して斜めに走行するときはハンドルの操舵角と車体の傾きを車両が計算し、進行方向が登りか下りかを判断して、アイドリング回転数を調整する。さらにAT変速機でもシフトアップの回転数を制御し、滑らかで走行しやすい回転数を保持してくれる機能を装備。計器類も走行モードに合わせて変更され、状況に合った表示となる。

最新の技術や装備を即座に実用化するのは、製造工場や販売部門の都合もあるので、調整に苦労することは容易に想像がつく。それを乗り切るところに、いまのマツダの姿勢を感じるのである。

マツダ/CX-5 XD フィールドジャーニー
全長×全幅×全高:4575×1845×1690mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1690kg
エンジン:直列4気筒DOHC ディーゼル 2188cc
最高出力:200PS/4000rpm
最大トルク:45.9kg-m/2000rpm
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:16.6km/L(WLTCモード)
使用燃料軽油:58L
ミッション形式:6速AT
サスペンション:前・ストラット式、後・マルチリンク式
ブレーキ形式:前・ベンチレーテッドディスク、後・ディスク
乗車定員:5名
車両価格:355万3000円
問い合わせ先コールセンター 電話:0120・386・919

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2022年5月号より転載しました。

 

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