文・石川真禧照(自動車生活探険家)

1948年に英国で誕生して以来、本格的な高級4輪駆動車のみを生産してきたランドローバーが満を持して新型「ディフェンダー」を発売。エンジンはディーゼルからガソリンに変わり、力強さを一段と高めた。

15年ぶりに日本に正規輸入されたディフェンダー。オフロード性能の高さは世界トップレベル。499万円からという価格も魅力的だ。

4輪駆動で、荒地を走破する車といえば、米国の「ジープ」を思い浮かべる人が多い。そして、「ディフェンダー」もジープがなければ生まれなかった。

第二次世界大戦が終結した1945年(昭和20年)、英国にローバー社という高品質の中型車をつくる自動車メーカーが設立された。しかし世の情勢は中型の乗用車ではなく、違った形の車の登場を模索していた。ローバー社の技術部長であったモーリス・ウィルクスは、自分の広大な土地を管理するのに、戦争後に余った米国製のジープを使用していた。ある日、同じローバー社の専務取締役である兄のスペンサーが、ジープが使いものにならなくなったらどうするのかとたずねた。するとモーリスは、「またジープを買うだろうね。代わる車もないし」。牧草地や農地を走り回るのに4輪駆動車は欠かせないからだ。この言葉で兄のスペンサーは、軽量で実用性の高い4輪駆動車の開発を思いついた。ジープの骨格と変速機を利用し、車体は鋼板の配給制限があるためアルミニウムを用いた。

1948年、こうして完成した4輪駆動の車は「ランドローバー」と名付けられた。

3列シート7人乗りの「ディフェンダー110」を販売中。ショートホイールベースの5人乗り「90シリーズ」も追加で発売予定。
最新の情報収集装備が導入された。画面は指で触れる方式。マイナーチェンジなどの情報も自動的に車両に送信され、更新される。
ホールド感のある1列目シート。
2列目は3人掛け。高めの着座位置で3分割で倒せる。
3列目は着座位置が低めで、足元も狭い。倒すと荷室として利用可能。

働き者の農民のような車

ランドローバー社の4輪駆動車は、“あらゆる仕事に対応する働き者の農民”として開発された。用途は広く、消防車や農耕車として利用され、水陸両用車から6輪車まで多彩な改造車も存在する。

1990年の改良で、この主力車種に「ディフェンダー」という車名が付けられた。荒地から高速道路まで難なく走る、その最新型に試乗した。

普通の4WDとは次元が異なる走破性と高い走行安定性

1990年にディフェンダーに改名されて以降、1997年から2003年にかけて日本には1000台強が輸入されている。しかし2015年、本家の英国で生産中止が公表され、世界中の愛好者をがっかりさせた。

2019年に新型車の最終実験風景が公開されると、ディフェンダー熱は大いに盛り上がる。2019年秋に日本で150台の先行販売の予約を受け付けたところ、わずか4日間で完売した。

限定販売された初期受注モデル。屋根の支柱や、乗降時に足をのせる踏み板、車体後部側面の荷物箱など、オプションが満載。

新型ディフェンダーは車体が大きく、重量もあるが、2Lターボエンジンで1800回転あたりから力強く走る。1700回転前後の低回転域で100km/h巡行ができるので、高速道路でも燃費がよく、音も静かだ。高めの着座位置からは視界がよく、車幅もつかみやすい。後方視界は、カメラによる画像が室内ミラーに投影されるので、後席の人たちに遮られずに後ろの状況がよくわかる。車輪は18、19、20インチの3種類のホイールを選べる。安定感があり操縦しやすい19インチがおすすめだ。

4輪駆動車だけを作り続けて70年余り。その経験を存分に活かした、次元の異なる仕上がりを感じさせてくれた。

試乗したのは4気筒2Lのガソリンターボエンジン。ディーゼル車もまもなく登場予定。
2、3列目のシートをすべて倒すと広い荷室になる。床面は水平にはならない。後ろの開き戸は右側に開く。
アウトドア用靴や濡れた衣類などを収納できる防水ケースを装着可(オプション装備)。

ランドローバー/ディフェンダー 110
全長×全幅×全高:4945×1995×1975mm
ホイールベース:3020mm
車両重量:2090kg
エンジン:直列4気筒DOHC ターボ、2.0L
最高出力:300PS/5500rpm
最大トルク:4.8kg-m/1500〜4000rpm
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:8.3km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン 90L
ミッション形式:8速自動
サスペンション:前:ダブルウィッシュボーン 後:マルチリンク
ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
乗車定員:7名
車両価格:589万円
問い合わせ先:ランドローバーコール:0120・18・5568

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2021年1月号より転載しました。

 

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