文・石川真禧照(自動車生活探険家)

「ミニ・クーパー」に名をのこす伝説的技術者ジョン・クーパーの名を冠した英国製スポーツカー。車重は1290kg、車体はコンパクトで走りはきびきびと力強い。運転することの本質的な喜びがここにある。

ボディは大型化したが、1959年に生まれた最初期のミニの面影を残す。近年のミニは、5ドアのほかにひとまわり大きいSUVもある。

車を買い替えるとき、次にどのような車を選ぶか考えるのは、車好きの楽しみである。昔ならカタログをいろいろ集めて、見比べ、あれこれ思いを巡らせた。最近はパソコンやスマートフォンの画面から、ということも増えたが、いずれにしても至福の時間といえる。

さて、最近の車はやたらと大きいが、大きな車を運転するのは体力的にも気力的にもちょっとばかり疲れる。そのような感覚を持つ大人にとっては、どんな小型車が幸せなのだろうか。街中だけでなく、時には長距離ドライブにも行きたい。長く愛せる歴史的背景や伝統があれば、さらにうれしい。そんな大人にうってつけの車が、英国のミニ/ジョン・クーパー・ワークスだ。

ラリー優勝車の遺伝子

全長はスズキの小型車スイフトとほぼ同じ。ホイールベースはホンダの軽より短い。

英国の「ミニ」は、1959年から2000年まで一度も大々的なモデルチェンジをしないで生産されてきた屈指の名車である。

ドイツのBMW社が英国のローバー社を傘下に収め、同社設計の新生ミニが2001年に発売された。以降、英国生産を守り、基本デザインは変えずに、安全技術や環境技術の面で改良を重ねてきた。

今回試乗するのは、そんな新生ミニの上級スポーツモデルだ。車名のジョン・クーパー(1923~2000)は、ラリーやF1で活躍した英国の伝説的技術者。彼がスポーツ仕様に改造した「ミニ・クーパー」は、1960年代のモンテカルロ・ラリーで3度も総合優勝を成し遂げている。

新型ジョン・クーパー・ワークスは2021年5月に登場。全長はトヨタ/アクアより短く、小さな車体に爆発的な力を秘めている。

中央の丸形パネルにナビ画面。前窓の角度が立っているので運転席の圧迫感はない。
確実に操作でき、使いやすいスイッチ類。中央の赤いボタンが、エンジン始動スイッチ。

最小限のスペースに走る愉しさが詰まっている

側面の支柱は黒く塗られ、赤い屋根を際立たせている。マフラーは床下中央2本出し。

ミニの車種のなかでも最強の車として仕立てられているだけに、エンジンは強力だ。排気量は2L+ターボで、最高出力は200馬力を超えている。

横置きの4気筒2Lターボエンジン。2000回転以上からアクセルを踏んだときの加速反応がよくなる。

変速機は自動8速。変速段数が多いため、細かいシフトチェンジでなめらかに加減速する。小型車にありがちな加速時や登り坂での力不足はまったく感じない。

8速自動変速は床中央のシフトレバー(写真)かハンドル内蔵レバーで手動変速が可能。

新生ジョン・クーパー・ワークスは、サーキットでも走行できる走行性能を秘めている。車体の剛性を強化し、サスペンションもスポーツ仕様のモデルを搭載。舗装路での高速コーナリングも余裕たっぷりにこなし、車重が重すぎないので、きびきびとした加減速で山間部の曲がりくねった道もなめらかに走り抜ける。

安全装備に関しては、BMWの最先端の技術を搭載。前車接近警告機能にはじまり、衝突回避・被害軽減ブレーキ、駐車時の車体前後接触警告、後方視界カメラなどが標準装備。車速や車線を維持する機能も備わっている。

もはや小型車に乗りかえることは、諦めでも我慢でもない。運転することの喜びとは何か。その答えは、ジョン・クーパー・ワークスに乗るとわかるはずだ。

前席はヘッドレスト一体型。調節はすべて手動。背中の支えが抜群。
後席は左右1名ずつで定員は2名。足元はやや狭め。
車体後部の荷室はやや狭め。
後席の背もたれは分割して前に倒すことができ、荷室を広くできる。

ミニ/ジョン・クーパー・ワークス
全長×全幅×全高:3880×1725×1430mm
ホイールベース:2495mm
車両重量:1290kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ/1998cc
最高出力:231PS/5200rpm
最大トルク:32.6kg-m/1450~4800rpm
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:14.5km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン 44L
ミッション形式:8速自動
サスペンション:前・ストラット式、後・マルチリンク式
ブレーキ形式:前・ベンチレーテッドディスク、後・ディスク
乗車定員:4名
車両価格:482万円
問い合わせ先:カスタマーインタラクションセンター 電話:0120・3298・14

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2021年12月号より転載しました。

 

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