東京・初台にある新国立劇場のオペラパレスは、日本で唯一の本格的なオペラ専用劇場。1シーズン(10月~翌年7月)に全10演目を取り上げるが、その充実したラインナップは海外の名門劇場と肩を並べるほどである。
そしてこの10月、リヒャルト・ワーグナーの『ワルキューレ』(楽劇「ニーベルングの指環」第1日)の上演で、新シーズン(2016/2017)の幕が切って落とされる。
ワーグナーの「ニーベルングの指環」は、『ラインの黄金』『ワルキューレ』『ジークフリート』『神々の黄昏』の4つの作品で構成される4部作で、上演は1日1話、すべてを上演するには実に4日間かかるという超大作だ。新国立劇場では、昨シーズンから3年間をかけて、この全作上演に挑む大型プロジェクトに取り組んでいる。
序章となる序夜『ラインの黄金』は昨シーズンのオープニングとして、昨年10月に上演された。新シーズン、オープニングのこの10月は、「ニーベルングの指環」の全4部作の中で最も人気が高く、単独で上演される機会も多い第2作の『ワルキューレ』の待望の上演となる。
オペラの巨人と言われるワーグナー、しかも彼の超大作、と聞いただけで、オペラ初心者は気後れしてしまいそうだが、実は「ニーベルングの指環」4作品の中でも、初心者にも分かりやすいとされるのが、この『ワルキューレ』なのだ。
兄妹の禁断の愛、父娘の永遠の別れなど、哀切に満ちた物語が甘美な音楽でドラマチックに描かれているため、その舞台にぐいぐいと引き込まれていく。また、「ワルキューレの騎行」をはじめ、ジークムントの「冬の嵐は過ぎ去り」「ヴォータンの告別」などは、クラシックの音楽会で演奏されることも多い有名曲。なにより、世界最高峰のワーグナー歌手が勢揃いしての上演に、きっと胸躍り、圧倒されるに違いない。
昨年上演の『ラインの黄金』に続き、指揮は、日本におけるワーグナーの第一人者であり、新国立劇場オペラ芸術監督の飯守泰次郎さん。甘美で抒情的なワーグナーのドラマチックな世界に、そして、音楽、演劇、文学、美術、とあらゆる芸術が一体となったオペラという特別な空気の中に、身を委ねてみてはいかがだろう。
【平成28年度(第71回)文化庁芸術祭主催公演 新国立劇場2016/2017シーズンオペラ オープニング公演 ワーグナー 楽劇「ニーベルングの指環」第1日 『ワルキューレ』 ~新制作~ [全3幕/ドイツ語上演 字幕付]】
■公演期間:2016年10月2日(日)〜18日(火)
■会場:新国立劇場 オペラパレス
東京都渋谷区本町1-1-1
■問い合わせ先:03-5352-9999(ボックスオフィス)
新国立劇場オペラサイト
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/
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文/堀けいこ