マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。今回は、管理職やマネージャーなどの上司の在り方について考察します。

はじめに

病気になった患者が医者に求める最優先の機能とは何でしょうか? 「病気になって悲観している自分に共感して一緒に泣いてくれる」ことでしょうか? それとも的確な診断と指摘によって「未来の人生を良くしてくれる、病気から救ってくれる」ことでしょうか?

もちろん言うまでもなく後者です。つまり、医者は「患者の感情に寄り添う」ことより、「いかに患者を救うか」という本来の機能を最優先に行動することで存在意義が最大限に発揮されます。

これは、ビジネスの世界においても同様です。上司(管理職やマネージャー)に求められる最優先の機能とは何でしょうか? 「部下の感情に寄り添う」ことでしょうか。多くの上司が陥りがちな「共感の罠」と、真に果たすべき「部下を成長させる」ための在り方について「識学」の視点で解説します。

組織における「優しさ」の誤解錯覚…共感は成長を止めるブレーキ

組織運営において、多くのリーダーが「部下に寄り添い、気持ちを理解すること」を美徳としています。昨今は部下側もこの発想が強くみられます。しかし、識学の観点から言えば、上司が部下の感情に流され、一緒になって悩むことは、組織の本来の機能を著しく低下させる要因となります。今回のテーマの例えにある通り、患者が医者に求めている本来の機能は「痛みに共有するだけの態度」ではなく、「痛みの原因除去・改善の的確な指摘」です。

具体的には、部下が「目標が高すぎて辛いです」「人間関係に悩んでいます」と訴えた際に上司が「そうだよね、大変だよね」と共感した瞬間、その組織内に「言い訳」が正当化された空間が生まれます。その共感によって部下の一時的なストレスは軽減されるかもしれません。しかし、それは「問題に向きあっていない先送り」に過ぎません。部下が実際に直面している不足(ギャップ)にフォーカスせず、感情のケアに終始することは、部下から「自力で課題を解決する機会」を奪っているのと同じです。

識学では、上司の役割は「部下の感情に寄り添って整えること」ではなく、「部下にルールを認識させ、求める結果を出させること」であると定義します。共感という名の甘やかしは、実は、「無責任な、上司本位の誤解した優しさ」であり、部下を成長から遠ざける行為である「成長を止めるブレーキ」であることを、まず自覚しなければなりません。

上司の真の役割…感情を排した「指摘」こそが最大の救済

上司の本質的な機能とは、自部署に設定された目標に対して、部下が正しい位置で機能しているかを管理し、組織の歯車を正しく回すことにあります。ここで重要なのは、部下を「人」としてではなく「機能」として見ることです。冷徹に聞こえるかもしれませんが、プロフェッショナルな世界において、部下を救う唯一の方法は、彼らが今後も市場や組織で通用する「成果」を出し続ける人材にすることです。

部下が求められた結果に対して未達であるとき、あるいは守るべきルールを逸脱しているとき、上司が行うべきは「指摘」と「再設定」のみです。そこに「なぜできなかったのか」という感情的な理由を聴取して状況に寄り添う必要はありません。「設定された期限に対し、結果が不足している」という事実を淡々と示すこと。この「事実による指摘」こそが、部下に対しての「正しい診察・診断」となります。事実を宣告された部下は心穏やかではなく痛みを伴う場合もありますが、それによってしか病根(本当の未達の原因)は取り除けません。

上司が「嫌われたくない」という自己保身から正しい指摘を躊躇すれば、その上司の寄り添った言動によって部下は「今のままで問題ないんだ」と錯覚し、その結果として、将来的な市場価値を失う行動を続けることになります。部下のキャリアを守るために必要なのは、感情的な温かい言葉ではなく、冷徹にも見える正確な事実のフィードバックなのです。

リーダーシップの正体…恐怖ではなく「位置の認識」による統制

リーダーシップとは、人間的な魅力で人を引っ張ることではありません。ましてや恫喝や暴言などの「個人としての恐怖や恐れ」でいうことを聞かせることでもありません。

識学が定義するリーダーシップとは、部下に「自らの位置」を正しく認識させ、迷いなく行動させる状態を指します。リーダーが部下と距離を縮め、友達のような関係(並列化)になってしまうと、「この人は自分を理解してくれているから、少しくらいのミスは許されるだろう」という甘えが生じます。あるいは、部下は上司の顔色を伺い、忖度を始めます。

真のリーダーは、部下との間に明確な「距離」(階層)を保ちます。この距離感こそが、組織内の緊張感を生み、部下に「やるべきことに集中する」という規律をもたらします。部下と一緒に泣くリーダーは、いわば、部下と同じ視点にまで降りてしまっている状態です。本来リーダーは、高い位置から全体を俯瞰し、進むべき方向を指し示すのが責任です。部下を迷わせないためには、感情的な繋がりを極力断ち切り、「この場所では結果がすべての判断基準である」というルールを徹底させる必要があります。リーダーが私情を挟まず、常に一貫した基準で判断を下すとき、部下は初めて「どう動けば正解なのか」を明確に理解し、迷いなく業務に集中力を注入できるようになるのです。

組織の健全性…「結果」のみが部下の精神を真に安定させる

最終的に、組織が目指すべきは「部下が自己肯定感に浸れる場所」ではなく、「部下が自らの機能によって勝利を勝ち取れる場所」です。共感に依存する組織では、部下の精神状態は常に「上司が自分の気持ちをわかってくれているか」という外部要因に左右されます。これは極めて不安定な状態です。一方で、識学的な運営がなされた組織では、部下の評価は「感情」ではなく「結果」に基づきます。

部下にとって最も健全な精神状態とは、自分が何をすべきかを理解し、それを実行し、正当に評価されるという循環の中にいるときです。上司が「事実の指摘」を徹底し、部下が「自らの行動変化」で課題を克服できたとき、そこには上司からの安っぽい共感など比較にならないほどの「有能感・達成感・自己決定感」が生まれます。この成功体験こそが真のモチベーションであり、部下を真に自立させプロフェッショナルへと変貌させます。

冒頭の「患者と一緒に泣く医者」という比喩は、決してその行為自体を否定しているのではなく、医者として本来求められる機能は「一緒に泣く」ではなく「救う」であり、その本来の機能に全集中することが求められた役割に対して誠実であるべきということを表したものです。よって組織の上司は、部下の感情に寄り添わず結果に視点をフォーカスさせること。それこそが、上司が果たすべき究極の責任であり、部下に対する最大の誠実さです。

「ワーク・ライフ・ニュー・バランス」を実現するために

識学は、現在「ワーク・ライフ・ニュー・バランス」という新たな価値感を掲げています。

いわゆる“ワーク・ライフ・バランス”という概念は、ともすれば「ワークを疎かにしてもライフが良ければいい」という考え方になりがちです、しかし、その誤解錯覚をもって行動し続けていると、長期的にはライフの破綻も招くと識学では警告しています。

事実は「ワークはライフを充実させるための大切な「原資」である」。人は働くことで報酬(給与)を得て、その報酬を使って私生活を豊かにします。つまり、「ワークがなければ、ライフを充実させるための資源(お金、社会的な信頼、達成感など)が生まれない」という事実に立ち返るばすです。

よって、前述した通り、組織が目指すべきは「部下が自らの機能によってしっかりと資源を勝ち取れる場所」になること、そして上司が果たすべき責任は、その環境を作り、部下を成長させ「ワーク・ライフ・ニュー・バランス」を実現させることです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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