ボストン美術館の日本美術コレクションのなかでも、圧倒的な数を誇る浮世絵作品は、明治初期に来日した日本美術の研究家であったアメリカ人医師、ウィリアム・ビゲローらによって収集されて海を渡りました。しかし、その膨大さゆえに多くは展示されず、長く収蔵庫に保管されたため「摺りたて」のような輝きと鮮やかさを今日に伝えています。
3月19日(土)から東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催される「ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞」は、そんな浮世絵の優品の中から、葛飾北斎や歌川広重と同時代に活躍し、絶大な人気を博した二人の天才浮世絵師、歌川国芳(1797-1861)と歌川国貞(1786-1864)の作品を通して、江戸の粋と当時の人々の暮らしを探るもの。ふたりは兄弟弟子でありながら作風は対照的で、国芳は豪快な武者絵と大胆な構図で、国貞は粋な美人画・役者絵に象徴される緻密な表現で、幕末の爛熟期、消費者のあくなき要求に応えるべく切磋琢磨しながら作品作りを競いました。
本展の監修をつとめた東京国立博物館・研究員の松嶋雅人さんに、見どころをうかがいました。
「国芳ファンは、ヒーローが活躍する物語世界にのめり込む江戸っ子ヤンキー層。彼らが理想とする男の姿を見せてくれるのが「俺たちの国芳」。一方、江戸文化のメインストリーム「歌舞伎」のキラキラ輝くスターに恋い焦がれる女性たちは、「わたしの国貞」を見つめます。幕末の人気浮世絵師、国芳と国貞の名品で、アイドルに熱狂し、最新の流行に身を包む雑誌モデルに憧れるような心持ちを、江戸のポップカルチャーともいえる浮世絵で実感していただきます」
本展は神戸市博物館(6月18日~8月28日)、名古屋ボストン美術館(9月10日~12月11日)に巡回されます。江戸の人々の躍動と熱狂を追体験しに、ぜひ会場に足をお運びください。
会場/Bunkamuraザ・ミュージアム
会期/2016年3月19日(土)~6月5日(日)
住所/東京都渋谷区道玄坂2-24-1
電話番号/03-5777-8600(ハローダイヤル)
料金/一般1500(1300)円 大高生1000(800)円 中小生700(500)円 ( )内は前売及び20名以上の団体料金 ※小学生を除く学生は要学生証提示、障がい者手帳所持者は割引あり
開館時間/10時より19時まで、金・土曜日は21時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日/会期中無休
アクセス/JR渋谷駅ハチ公口より徒歩約7分、東京メトロ銀座線及び京王井の頭線渋谷駅より徒歩約7分、東急東横線・田園都市線及び東京メトロ半蔵門線・副都心線渋谷駅3a出口より徒歩約5分