取材・文/池田充枝

近現代の世界のなかで常に流行をリードする、文化の花開く都パリ。そんな魅力あふれる街に生きる女性が、パリジェンヌです。

サロンを仕切る知的な女主人、子どもを慈しむ美しい母、流行を生み出すファッショニスタ、画家のミューズ、そして自ら道を切り開き才能を開花させた画家や女優……。その多様な生き方は、今なお私たちを惹きつけてやみません。

そんなパリジェンヌたちの美しい姿を美術作品を通して紹介する展覧会ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち》が、東京・用賀の世田谷美術館で開かれています(~2018年4月1日まで)。集ったのは、18世紀から20世紀のパリに生きた女性たちの姿です。

ジョン・シンガー・サージェント《チャールズ・E.インチズ夫人(ルイーズ・ボメロイ》〔1887年 ボストン美術館蔵〕Anonymous gift in memory of Mrs.Charles Inches’ daughter, Louise Brimmer Inchies Seton 1991.926 Photograph(C)Museum of Fin Arts,Boston Photograph(C)Museum of Fin Arts,Boston

 

本展は、修復後初公開となるマネの《街の歌い手》をはじめ、ドガやルノワールなど印象派が描いた女性の肖像、カサットやモリゾなど女性芸術家による傑作、カルダンやバレンシアガの斬新なドレスからブリジット・バルドーほか映画や舞台で活躍した女優のポートレートまで、ボストン美術館所蔵の多彩な作品約120点を通して、18世紀から20世紀のパリを体現する女性たちの姿に迫ります。

エドゥアール・マネ《街の歌い手》〔1862年頃 ボストン美術館蔵〕Bequest of Sarah Choate Sears in memory of her husband,Joshua Montgomery Sears 66.304 Photograph(C)Museum of Fin Arts,Boston

本展の見どころを、世田谷美術館の学芸員、塚田美紀さんにうかがいました。

「フランスは世界で最も多くの観光客が訪れる国、その数は年間8300万人とも言われますが、国別の人数だと第1位はアメリカ合衆国だそうです。ボストン美術館のキュレーターがカタログの冒頭で“アメリカ人はフランス、特にパリに対する恋愛感情を持ち続けている”といみじくも告白しているとおり、本展はパリという都市に生きる女性たちの姿を、憧れを持って眺めてきたアメリカ人の視点から構成されています。フランスにもアメリカにも憧れてきた日本人の眼でみるひときわ興味深い展覧会です。

絵画や版画、ドレスなど名品120点からなる本展では、18世紀から20世紀半ばまでのパリジェンヌの姿を追いかけます。18世紀、豪華でセンスの良いドレスやティーセットは、サロンを仕切るパリの女主人たちの麗しく知的な佇まいを想像させ、19世紀アメリカの富裕な女性たちの肖像画やドレスからは、海の向こうのパリへの彼女たちの憧れが伝わります。

男性作家のミューズとなる一方、自ら表現する者として歩んだパリジェンヌもいます。本展の目玉であるマネの《街の歌い手》のモデルは、かのマネ作《オランピア》などにも登場するヴィクトリーヌ・ムーラン。後に画家としても活躍しました。約70年ぶりの修復を経て、グレーのドレスが何ともシックな色合いになり、彼女の凛とした佇まいを引き立てています。自分らしくたくましく生き抜く女性としてのパリジェンヌの象徴です」

エドガー・ドガ《美術館にて》〔1879‐90年頃 ボストン美術館蔵〕Gift of Mr.and Mrs.John McAndrew 69.49 Photograph(C)Museum of Fin Arts,Boston Photograph(C)Museum of Fin Arts,Boston

巨匠の名画からオートクチュールのドレスやティーセットまで、「パリジェンヌ」の心意気と存在感に圧倒されます。会場でその真髄をご堪能ください。

【ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち】
会期:2018年1月13日(土)~4月1日(日)
会場:世田谷美術館
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
電話:03・5777・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:http://paris2017-18jp/
開館時間:10時から18時まで(入館は17時30分まで)
休館日:月曜(ただし2月12日は開館)、2月13日(火)

取材・文/池田充枝

 

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