取材・文/池田充枝
モスクワのプーシキン美術館は、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館と並んで世界的な西洋絵画コレクションを誇る国立美術館です。開館は1912年。現在の名称、国立A.S.プーシキン記念美術館となったのは1937年。ロシアの文豪プーシキンの没後100年を記念したものです。
絵画、版画、彫刻など約70万点を超す収蔵作品のなかでも、同館が誇るのは19世紀後半から20世紀初頭にかけて収集された、印象派からマティス、ピカソまでのフランス近代絵画コレクションです。また同館は、教育的な精神やアヴァンギャルドな精神に貫かれた先進的な展覧会の開催にも定評があります。
そんなプーシキン美術館が誇るフランス近代絵画のコレクションから、珠玉の風景画が来日、一堂に会する展覧会《プーシキン美術館展――旅するフランス風景画》展が、東京・上野の東京都美術館で開かれています(~2018年7月8日まで)
本展では、17世紀から20世紀の風景画65点が来日します。初来日となるモネの《草上の食卓》はじめ、ブーシェ、コロー、ルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ルソーらの名品が揃います。
本展の見どころを、東京都美術館の学芸員、大橋菜都子さんにうかがいました。
「絵画に描かれる自然は、実際にありそうに見える景色であっても、感動や共感、畏怖などのさまざまな画家の感情が込められ、ときに想像も加えられ、現実にはない新たな風景に生まれ変わっています。本展では、現代の日本に暮らすわたしたちから見ても、理想的な美しい大地や、懐かしさを感じさせる田園風景も数多くご覧いただけます。
見どころのひとつは、セザンヌのサント=ヴィクトワール山の作品です。画家が生涯で30点以上の絵画に残した故郷の山ですが、40代半ばの作品と最晩年60代半ばの頃の2点を並べて展示します。一緒にご覧いただくと、彼の表現や山と向き合う姿勢の変化がよく分かります。
また、大きな見どころとなるのは初来日となるモネの《草上の昼食》です。印象派の表現を確立する前、20代半ばに制作されたみずみずしい作品です。舞台は人気の行楽地であったフォンテーヌブローの森のはずれで、恋人や友人をモデルにピクニックを楽しむ若者たちが描かれています。当時の流行のドレスや人物の配置やしぐさ、木の葉に見られる光の効果などにもぜひご注目ください。
このほか、フランスからロシアへ渡り、今年は日本へ旅をしてくる65点には、実際のフランスやイタリアの風景だけではなく、画家の生み出した想像の景色もあります。東京・上野で、ぜひ「旅をする」ように珠玉の風景画をお楽しみいただけますと幸いです」
初来日の《草上の食卓》はじめ巨匠たち渾身の風景画の数々、会場で旅する気分を満喫しませんか。
【開催要項】
プーシキン美術館展――旅するフランス風景画
会期:2018年4月14日~7月8日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://pushkin2018.jp
開室時間:9時30分から17時30分まで、金曜日は20時まで(入室は閉室30分前まで)
休室日:月曜(ただし4月30日は閉室)
※会期後は、大阪・国立国際美術館に巡回します(2018年7月21日~10月14日)
取材・文/池田充枝