斎藤道三(演・本木雅弘)と高政(演・伊藤英明)の対立が、いよいよ沸点に達しようとしている。父のこと、夫のことを心配する帰蝶(演・川口春奈)、義父のことを気遣う信長(演・染谷将太)・・・・・・。『麒麟がくる』前半戦の最大の山場が訪れる。

* * *

息子・高政との戦を決意する道三。

息子・高政との戦を決意する道三。

ライターI(以下I):前回は、斎藤道三の次男と三男、孫四郎(演・長谷川純)と喜平次(演・犬飼直紀)が兄の斎藤高政(義龍)によって暗殺されてしまいました。

編集者A(以下A):高政が孫四郎、喜平次を暗殺するくだりは『信長公記』にも、道三が長男の義龍を蔑ろにして、弟の孫四郎、喜平次をかわいがっていたこと、それに危機感を抱いた義龍が、病気と称して弟たちを呼び寄せて暗殺したことが記録されています。

I:『麒麟がくる』の描写はほぼ『信長公記』の記述に沿ったものだったのではないでしょうか。『信長公記』では、名刀「手棒兼常」 が暗殺に使われ、一刀両断、孫四郎、喜平次兄弟を切り伏せたことが書かれています。

A:弟の殺害でいえば、この後、信長も弟・信勝を殺害することになりますし、少し後には奥州の伊達政宗も弟を殺害しています。まあ、古くは観応の擾乱で足利尊氏が弟・直義を殺していますし、源義経の死も兄・頼朝から殺されたといえば殺されたわけです。

I:弟殺しは、歴史上ざらにあるわけですね。さて、信長と帰蝶夫婦は、道三のことをかなり心配している様子です。帰蝶などは、道三を越前に逃がす算段を画策するほどでした。

A:〈わしが美濃に放った間者の報せでは〉と 信長が美濃に間者を放って情勢分析しているシーンがありました。それによると、道三側につく兵が2000~3000、高政側には1万以上と分析されていました。この時代は間者を放つことは、当たり前。菊丸(演・岡村隆史)なんかがそうですし、もしかしたら、藤吉郎(演・佐々木蔵之介)もそうなのかも! とすら感じてきました。

I:藤吉郎は〈これからは今川の時代だから、三河を離れて駿河に行く〉ということを語っていましたが、前々回、三河と遠江の国境にいた藤吉郎が、前回は駿河にいました! 怪しいといえば、怪しい(笑)。

A:全く史料的な根拠はないですが、以前愛知県の津島神社を取材した際に、もしかしたら秀吉は、「津島御師」だったのではないかと思った記憶があります。

I:津島神社といえば、牛頭天王信仰の総本社。全国各地に「津島御師」という人が信仰を広めるために散っていたと言いますね。

A:その存在が全国の情報を集積する助けになったといわれています。交易の中心でもあった津島はまさに織田家の金城湯池だったわけです。

I:藤吉郎が「津島御師」のような存在だったとしたら面白いですよね。

A:繰り返しますが、史料的な根拠は一切ありません(笑)。

斎藤道三の意味深な台詞

I:斎藤高政はこれまで、敢えて旧体制の象徴的な描かれ方をしていると思っていました。美濃の守護土岐氏の血筋を敬い、農繁期の出兵は難しいと説く。ところが前回は、美濃の国情を憂いている姿が描かれました。

A:この時代はダイナミックに世の中が動いた変革期ですから、まじめに真っ当に生きていた人物ほどその時流に乗るのが難しかったのだと思います。それは、現代でも当てはまりますよね。高政もまた時代に翻弄された人物だったのだと思います。

I:その一方で、ドラマの展開としては、土岐氏の血が自分にも流れているという偽りをわざと流布していることを、それとなく認めていましたね。

A:ところで、駿河では東庵先生(演・堺正章)と駒(演・門脇麦)が鍋で昆布と豆を煮ていました。これはどこかの名物料理なのでしょうか?

I:いえ、心当たりはありません。乾燥させた昆布は当時、保存食や陣中食のようなものなのですが・・・・・。昆布を出汁として使うのは江戸時代になってからですし、あくまで具材として投入したのだと思います。将来、薬作りマニアになる竹千代改め松平元信(後の徳川家康)とこのふたりが出会うのもおもしろいですね。

A:なるほど。さらに今週は、道三の興味深い台詞がありました。〈人の上に立つものは正直でなくてはならぬ。偽りを申すものは必ず人を欺く。そして国を欺く。決して国は穏やかにならぬ〉

I:現代にも通じる意味深な台詞ですね。しかし、「大きな国」を作る野望を光秀と信長に託したい思いを語る本木“道三”、魂を感じる演技でした。

A:さて、来週はいよいよ本木“道三”のクライマックス。大河史上に刻まれる回になるかと思われるので、見逃すことがないようにしたいですね。

前回、「ただでは教えられぬ」と言っていた道三が、家督を譲った理由を光秀に話 す。

前回、「ただでは教えられぬ」と言っていた道三が、家督を譲った理由を光秀に話す。

●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。

●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』も好評発売中。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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