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「悲恋のヒロイン」ではなかった額田王~謎の女流歌人を追う【にっぽん歴史夜話17】

文/砂原浩太朗(小説家)

「悲恋のヒロイン」ではなかった額田王~謎の女流歌人を追う【にっぽん歴史夜話17】

額田王(ぬかたのおおきみ)の名は、「万葉集」随一の女流歌人として、ひろく知られている。有名な「あかねさす……」という歌とともに、天智・天武の両天皇に愛された女性としてご記憶の方も多いだろう。ところが、これほど著名な存在でありながら、歴史上、その人生について明らかとなっていることは、ほとんどない。それでいて、何冊もの小説や伝記が書き継がれている稀有な人物なのである。額田王とは、いったい何者なのか。

たしかな史実は、「日本書紀」の一文のみ

額田王について信のおける史実は、「日本書紀」にある次の一文しかない。「(天武)天皇、初め鏡王の女額田姫王を娶りて、十市皇女を生む」(天皇は初め鏡王の娘額田姫王を娶って、十市皇女を生んだ。以下、読み下しと訳は、小学館『新編日本古典文学全集』による)。じつは額田王の痕跡をたどる手がかりは、この一文と万葉集に収録された十二首の長歌・短歌のみである。もちろん生没年も不明であり、父・鏡王(かがみのおおきみ)がどういう人物なのかも、まったく分かっていない。ただ、「王」という以上、天皇家の血を引く身であることは間違いないだろう。また、額田の生年だが、西暦630年を中心とする前後10年くらいの間と考えられている。これは、孫にあたる葛野(かどの)王の年齢から逆算したものだが、額田もその娘・十市皇女(とおちのひめみこ)も20歳前後で出産したという推定だから、むろん正確とはほど遠い。が、的はずれと言うわけでもないだろう。本稿では、大化の改新(645)時点で数え15歳となる631年生説(直木孝次郎氏)のイメージでお読みいただければと思う。

女帝の側近として

天皇家の血を引くとはいえ、父も「皇子」(天皇の子)と記されてはいないから、額田の身分はそれほど高くなかったと思われる。おそらく10代の早い時期に女官として宮中に出仕したのだろう。そこで大海人(おおあま)皇子と呼ばれていた後の天武天皇と出会い、結ばれる。大海人の生年は不明だが、通説では本稿の額田より1歳上(630年生)となる。額田の代表歌である「熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば 潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」(熟田津で船出しようとして月の出を待っていると 潮も幸い満ちて来た さあ漕ぎ出そうよ。熟田津は現・愛媛県の港)は、斉明天皇(594~661。天智・天武の母)の代作として詠んだものとされている。女帝の側にあって、おおいにその詩才を愛でられていたのだろう。母の寵愛を受ける女官と息子のひとりが結ばれるのは、ありそうなことである。さきに引用した「(天武)天皇、初め……」という一文からしても、額田は大海人にとって最初の妻だったと考えていい。

宴席の座興だった「あかねさす」?

が、娘までもうけながら、どこかの時点で額田は大海人のもとを去る。かつては、大海人の兄・中大兄(なかのおおえ)皇子、すなわち「大化の改新」の中心人物である後の天智天皇(626~71)が額田に惹かれ、強引に奪ったとされていた。かの有名な「あかねさす紫草(むらさき)野行き標野(しめの)行き 野守は見ずや君が袖振る」(額田)、「紫草のにほへる妹(いも)を憎くあらば 人妻故に我恋ひめやも」(大海人)は、「わたしに向かって、そんなに袖を振っておられると、人目についてしまいますよ」「人妻だというのに、あなたのことが恋しくてしかたないのだ」(以下、大意は筆者)と、引き裂かれた恋情を詠んだものだというのが、今でも一般の理解だろう。

ところが、近年はこの説の退潮がいちじるしい。上記の歌は宴席の座興として詠まれたものだという見方が、主流となっているのだ。つまり、「意味ありげに袖など振っていると、人が見ますよ」「いや、兄の想い女になっても、相変わらず美しいと思ってね」というわけである。ここでの額田は悲恋のヒロインでなく、みずからの意志で天智を選んだ力づよき女人となる。その人物像は魅力的だが、天智と天武はあまり仲のよい兄弟ではなかったうえ、この歌は天智の即位直後に詠まれたものだから、帝としては意気盛んな時期だろう。座興としては、かなりきわどい気がする。筆者は小説家であるから、いまだ従来の説にも惹かれるものを覚えてしまう。もし近年の解釈で作品を書くなら、座興にことよせ秘めた心を交わし合った、ということになるだろうか。井上靖の名作「額田女王」は、このあたりの機微をみごとに描きだしている。興味ある方には、一読をおすすめしたい。

相つぐ悲劇

「あかねさす……」の歌からわずか3年後、天智が没し、皇位をめぐって翌年、壬申の乱(672)がおこる。大海人は、天智の子・大友皇子に勝利し、天武天皇となった。大友皇子はみずから命を絶ったとされるが、その妻が額田の娘・十市皇女である。かつての夫が娘婿を攻めほろぼすという光景を目の当たりにした額田の痛みは、いかばかりであったろうか。

だが、悲劇はこれにとどまらない。6年後の678年、のこされた十市が急死してしまう。額田はすでに50歳前後とおもわれるが、以後、その痕跡はほぼ途絶える。おそらく宮中をしりぞいて隠遁生活を送ったのだろう。朱鳥元(686)年には、かつての夫・天武が没する。額田がどのような感慨をいだいたかは、知るべくもない。690年代の作とされる歌が残っているから、70年ほどの生涯をまっとうしたものと思われる。すでに、天武の皇后であった持統天皇(天智の娘)の世となっていた。

額田王について分かっていることは、ごくわずかしかない。が、謎の多さと、残された名歌のかずかずが人々の関心を掻きたてるのだろう。むろん、筆者もその例にもれない。これからも、あまたの作家や学者が、闇夜で灯をかかげるようにして彼女の生涯を追ってゆくにちがいない。

文/砂原浩太朗(すなはら・こうたろう)
小説家。1969年生まれ、兵庫県神戸市出身。早稲田大学第一文学部卒業。出版社勤務を経て、フリーのライター・編集・校正者に。2016年、「いのちがけ」で第2回「決戦!小説大賞」を受賞。著書に受賞作を第一章とする長編『いのちがけ 加賀百万石の礎』、共著『決戦!桶狭間』、『決戦!設楽原(したらがはら)』(いずれも講談社)がある。

『いのちがけ 加賀百万石の礎』(砂原浩太朗著、講談社)

 

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