取材・文/池田充枝
20世紀初頭の中国で鉄道敷設工事中に発見され、その存在が知られるようになった唐三彩。わずか100年ほど前に発見された陶器ですが、その華麗さが世界中のコレクターを魅了し、一躍中国陶磁を代表する存在となりました。
多色釉の装飾が魅力の唐三彩の名品が一堂に展観される展覧会が開かれています。(8月25日まで)
本展は、平成21(2009)年開催の「中国の陶俑」展以来、10年ぶりに出光コレクションから唐三彩を厳選して展観するほか、遼三彩、ペルシア三彩、唐代以降の三彩スタイルの陶器など合わせて約130件を紹介します。
本展の見どころを、出光美術館の上席学芸員、八波浩一さんにうかがいました。
「唐三彩は中国の唐時代(618-907)に制作された、緑・褐・白を中心とする三色の彩りが非常に美しい陶器の名称です。今では中国陶器を代表する三彩作品ですが、発見されたのはわずか100年ほど前。それでもその美しさはまたたく間に欧米や日本の蒐集家の心を射止め、充実したコレクションが形成されていきました。
特に日本では、伝統的な茶の湯の審美眼とは異なる観点、純粋に美を愛でる作品(鑑賞陶器)にコレクターの目を向けさせたという点も注目されます。
唐三彩の時代はシルクロードによる東西交易と文化交流が盛んな時期で、西方から砂漠を越えてやってきた隊商がもたらした珍しい品々は、長安や洛陽の人々を魅了しました。それらを来世でも享受し続けたいとの思いから様々な三彩が制作され、墓に埋られたのです。
今展の見どころは、文化交流の担い手であった中国人や異国の人物俑、三色の色釉が作り出す至極の美を体現した壺や盤、さらにはエキゾチックな造形が魅力的な水注や角杯といった器物類など、出光コレクションの代表的な唐三彩作品を一堂に堪能できる点です。
中国北方の契丹族が建国した遼や西方のイラン地方などで展開した三彩(遼三彩とペルシア三彩)、さらに金時代以降の三彩風陶磁器など、日ごろあまり目にしない地域の作品も展示します。
アジアに一時代を画した三彩スタイルの全貌を辿ることのできる中国陶磁入門として、ぜひご覧いただきたい展覧会です。ご来館をお待ちしています」
多彩な色、多様な形が目を引く華麗な陶器の世界!!ぜひ会場でご堪能ください。
【開催要項】
唐三彩―シルクロードの至宝
会期:2019年6月22日(土)~8月25日(日)
会場:出光美術館
住所:東京都千代田区丸の内3-1-1帝劇ビル9階
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://idemitsu-museum.or.jp
開館時間:10時から17時まで、金曜日は19時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし7月15日、8月12日は開館)
取材・文/池田充枝