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トヨタ1600GT|そのミステリアスな存在は、気になって仕方ない(横山剣のクルマコラム 第9回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。水曜日は「クルマ」をテーマに、CRAZY KEN BANDの横山剣さんが執筆します。

文/横山剣(CRAZY KEN BAND)

「東洋一のサウンドクリエイター」横山剣です。いままで公の場であまり話す機会がなかっただけで隠していたわけではないのですが、実は、僕にはクルマを擬人化するという特技があります。特に昔のクルマはヘッドライトが丸目のものが多かったこともあり、人の顔に見えるものがありましたよね?

まだ乗ったことがないクルマでも、その顔から走りや乗り心地など、なんとなくそのキャラクターを想像して楽しんだものです。そんなクルマの擬人化が好きな僕が、1957年にロシア民謡『ともしび』をヒットさせ、男性ボーカルグループとして熱狂的なコーラスブームを巻き起こした「ダークダックス」のゲタさん(故・喜早 哲氏)と呼んでいたクルマがあります。(当時をご存じの方は、是非、ゲタさんのお顔を思い浮かべながら、どんなクルマか想像してみてください。)

そのクルマは、3代目「トヨペット・コロナ」。宿敵だった2代目「ダットサン・ブルーバード」との、双方の頭文字から「BC戦争」と呼ばれた熾烈な販売合戦を制して大人気となった、1960年代半ばから後半にかけてのベストセラーモデルです。「アローライン」と呼ばれた矢をイメージしたスタイリング、なかでも傾斜したフロントノーズのデザインが特徴で、ソース顔といいますか、しっかりとしたその顔つきはどこか西洋的なものを感じさせました。それでいて温和な印象がゲタさんを想像させるのかもしれません。

その「コロナ」には、センターピラーを取り去った日本初の「ハードトップ」がラインナップされていました。アメリカナイズされたスタイリッシュなモデルでしたが、小学生だったある日、街で見かけたレモンイエローの「コロナ・ハードトップ」に、なにやら違和感を覚えたのです。どうも様子がおかしいなと小学生ながらに興味津々。そのときから、そのクルマはとても気になる存在になりました。ちなみに、この“違和感”に対する追求心は大人になったいまでも変わっていません。

どこに違和感を覚えたのかといえば、フロントグリルとクォーターピラーに付いた逆三角形のエンブレム、フロントフェンダーに開けられたルーバー、そしてリアガーニッシュに貼られた「GT5」だか「GT4」のエンブレム。どうやらそれらのせいで、角張った顔つきながら温和なゲタさんとはちょっと違う雰囲気に見えたようでした。

「トヨタ1600GT」美しいハードトップのスタイリングが印象的です。

その後、自動車雑誌で、その不思議な「コロナ・ハードトップ」が、67年から68年にかけて作られた「トヨタ1600GT」だと知りました。ファンの間では型式名の「RT55」で呼ばれる「1600GT」は、「コロナ・ハードトップ」のボディに、ヤマハ発動機がコロナ用をDOHC化した1.6Lエンジンを搭載。本来なら「コロナ1600GT」と呼ぶべき存在ですが、3カ月前に発売された「トヨタ2000GT」の普及版的なイメージを与えるべく、意図的に「コロナ」の名を外したのでしょう。

その証拠に、僕が違和感を覚えた逆三角形のエンブレムは「トヨタ2000GT」に倣ったもので、フロントシートも「2000GT」からの流用。また「GT4」や「GT5」はトランスミッションが4段か5段かということを示しており、「1600GT5」用の5段トランスミッションは、これまた「2000GT」から流用していたのです。

DOHC化された「1600GT」用のエンジン。その佇まいは整然としています。

「1600GT」はツーリングカーレースでも活躍しました。もっとも有名なのは、これがデビュー戦となる「日産スカイライン2000GT-R」を抑えて「1600GT」がトップでゴールインした、69年JAFグランプリの前座レース。すでに生産終了していた「1600GT」が、はるかに高性能な最新の「GT-R」に勝ったと思いきや、「1600GT」は走路妨害のペナルティをとられ3位に後退。2位でフィニッシュした「GT-R」が繰り上がり優勝となったのです。

このペナルティが妥当であったか否かは後に論議の的となりましたが、「1600GT」のドライバーは高橋晴邦さん。イケメンでとくに少年ファンが多く、僕もそのひとりでした。いっぽう「GT-R」は、後年僕が大変お世話になった篠原孝道さん。後から知ったことですが、僕にとって大きな存在だった2人のドライバーが、このレースの当事者だったのでした。

【次ページに続きます】

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