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  1. オリックス・リビング社長、森川悦明氏。「グッドタイム リビング センター南」にて撮影。

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「いすゞ ベレット」 “僕はタイムマシンに乗ってソウルフルな世界にワープした”(横山剣のクルマコラム 第1回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。水曜日は「クルマ」をテーマに、CRAZY KEN BANDの横山剣さんが執筆します。

文/横山剣(CRAZY KEN BAND)

サライ.jp読者の皆さん、はじめまして! 「東洋一のサウンドクリエイター」横山剣です。クレイジーケンバンドのボーカルとしてご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、僕が大のクルマ好きであることをご存じの方は少ないかもしれません。

これから10回にわたって僕が愛するクルマベスト10とそのクルマ、その時代を想起させる音楽を、忘れられない想い出とともにお伝えしたいと思います。

なぜミュージシャンでありながらクルマを語るのか? 気になった方は、「俺の話を聞け~♪」。すみません、僕の曲です(笑)

レコーディング後の音チェックはクルマの中でするのが習慣。8月1日にデビュー20周年記念アルバムがリリース予定。写真のクルマは1956年製「オースチン・ヒーレー」

僕がクルマ好きになったのは、両親の影響が大きいんです。最初のきっかけは1967年、6歳のとき。父親に連れられて、京橋にあったテアトル東京で映画『グラン・プリ』を見たんです。4人のF1ドライバーによるチャンピオン争いが実にハラハラする展開で。たちまちクルマとモータースポーツの虜になりました。ちなみに斜め前の席では、グループサウンズで一世を風靡したブルーコメッツの井上忠夫(大輔)さんがご覧になってました。当時6歳の僕にもわかる有名人。まだ僕が本格的にミュージシャンを目指す前の話です。

母親も、またなかなかのクルマ好きでした。空冷フラットツインの「パブリカ」や「ヨタハチ」(トヨタスポーツ800)などに乗っていて、運転が下手なくせして飛ばすんですよ(笑)。福沢幸雄さんや川合 稔さんといったイケメンのトヨタのワークスドライバーが好きで、レースのライセンスを取りたいなんて言ってたこともありましたね。

「初代プリンス・スカイライン」の前で母親に抱かれて。

その母親が、ミッキー・カーチスさんが「ベレG」(いすゞベレット1600GT)でレースに出ていたことを教えてくれたんですよ。歌手であるミッキーさんがレースをしていたという事実を知って、なんてカッコイイんだろうとシビレました。

当時のレーシングドライバーは裕福な家の方が多くて、品がよく、ファッションも含めて時代の最先端を行っていました。みんな本当にかっこよくて憧れていたんです。ひと目でもいいから見たくて、つてを頼って彼らが出没する場所、ホテルオークラとか、田園調布にあったドライブインのVAN FANとか、飯倉のキャンティなどで、いわゆる「出待ち」もしましたね。アイドルの追っかけと同じ心理です。手でも振ってくれようものなら、もう心臓バックバクでしたよ。レーサーって色気のかたまりだと思うんです。なのにガツガツしていないからまたモテる(笑)。レースは僕の音楽にも確実に影響しています。

そんな幼少期を過ごした僕ですが、15歳になった1975年に衝撃の音楽と出会ったのです。ユーミンの『コバルト・アワー』。 60年代から70年代初頭にかけての、オシャレな時代の空気感みたいなものを見事に歌に昇華した名作。曲の中で夜の都会を走り抜ける白い「ベレG」が1960年代へとタイムスリップするんです。本当にシビれました。いまでも忘れられないくらい。あれを聴いてから、「ベレG」は僕にとって憧れの時代のアイコンであると同時に、自由に時空を超えて行き来するスペーシーなマシンになったんです。

実際に僕が「ベレG」を手に入れたのは23歳ぐらい、80年代前半です。買ったのは「1600GT」でした。その後ツインカムの「1600GTR」、後期の「1800GT」と都合3台乗りましたが、いちばんよかったのは最後の「1800GT」ですね。「ベレG」好きが高じてズバリ『ベレット1600GT』という曲も作りました。なぜ思い入れが深い最後の「ベレG」である「1800GT」ではないのか? それは「1600」のほうが語呂がよかったから(笑)。車名を曲名に冠したのは、ジェーン・バーキンが歌った、そのままズバリの曲『フォード・ムスタング』がヒントになってます。これを聴いたとき、クルマの名前がそのまま曲名になってもいいじゃん!と思ったんですよ。

「ベレット1800GT」。1960年代の日本車を代表する車種のひとつ。日本で初めて本格的GT(グランドツーリング)モデルを設定したことも意義深い。

「ベレG」はスタイル抜群! それでいてハンドリングもいい。いわば、見た目はイタリア車で乗るとイギリス車。走り出すと音がたまらないのです。速さはというと……音が速い(笑)。腹に響くあの音、ベースではなくバリトンですね。そんな男らしいエグゾーストノートを響かせながら、駒沢公園とか千駄ケ谷周辺とか、高度経済成長期の息吹を感じさせる場所を探訪。神宮外苑のいちょう並木に停めて、しげしげと眺めたり、60年代の追体験ごっこを楽しみましたね。

福生とか横須賀などの、60年代の残り香が漂う米軍基地周辺を「ベレG」で流すのも好きでした。そんなときにFEN(※駐留軍人向けのAMラジオで現在はAFNに改称)に合わせたカーラジオから、ブレントン・ウッドの『ギミー・リトル・サイン』あたりが流れてくると、もうサイコー! こじんまりとした室内空間に響く、FEN独特の中音域のパンチが効いたソウルフルなサウンドに、気分は高揚してすっかり60年代にワープです。ところが、再び我が家でCDやレコードで聴いても、あまり盛り上がらないんですね。

やはりあれは、「ベレG」というスペーシーなタイムマシンがあってこその体験なんでしょう。その後も「ベレG」との想い出は数知れず。僕の作った曲にいちばん多く登場するクルマとなりました。

クラシックカーの祭典「La Festa Primavera 2018」(ラ フェスタ プリマベラ 2018)での一コマ。4月、名古屋市・熱田神宮をスタートしてゴールの京都市・岡崎公園まで、2府5県、約1100㎞を4日間かけて走りました。

横山剣(CRAZY KEN BAND)
1960年生まれ。横浜出身。81年にクールスR.C.のヴォーカリストとしてデビュー。その後さまざまなバンド遍歴を経て、97年にクレイジーケンバンドを発足。今年クレイジーケンバンドはデビュー20周年を迎え、8月1日(水)には3年ぶりとなるオリジナルアルバム「GOING TO A GO-GO」をリリース予定。9月24日(月・祝)には、横浜アリーナでデビュー20周年記念ライブも行われる。http://www.crazykenband.com

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