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貧乏性なオーディオ小僧の「カートリッジ交換」始末記【オーディオ小僧のアナログ日誌 第14回】

文・絵/牧野良幸

アナログ・レコードの楽しみのひとつに、周辺の機器を替えて自分好みの音を追求できることがあげられる。たとえば第8回「来たれアナログ・プレーヤーのブームよ!」に書いたように、レコード・プレーヤーを替えると相当音が変る。しかしプレーヤーをいちいち買い替えるのは現実的ではない。ということで音質を替えるのに一般的なのがカートリッジの交換である。

ただ知ってはいても、実際にできるかは別の話だ。カートリッジといえども決して安い買い物ではない。安いものは数千円からあるが、それとて気楽に買うには微妙な値段だ。まして数万から数十万円もする高級カートリッジに、おいそれと手が出るはずもない。

「今のカートリッジでも十分聴けるのだから……」とか「あんな小さいものにお金を払うのはどうも……」と悩む中途半端なマニアがいてもおかしくない。

オーディオ小僧もそんな中途半端なマニアである。たとえ数千円のカートリッジでも「レコードを買ったほうがいいのではないか?」と考えてしまう。数万円のカートリッジなら「これって、昔買ったミニコンポと同じ値段だよな」と思ってしまう。貧乏性なのかもしれない。

そんなわけでオーディオ小僧のカートリッジ歴ははなはだシンプルである。オーディオ小僧は長い間デノンの「DL-103」を使っていた。40年以上も続く超ロング・セラーだ。

「DL-103」はMCカートリッジらしく、デジタルを思わせる解像度。しかし放送局も使うだけあってクセがない。ロックからクラシックまではば広く聴くオーディオ小僧にはピッタリだった。

しかし「ビートルズ好き」という事情が、オーディオ小僧のカートリッジ歴に2行目を加えた。ビートルズのオリジナル・レコードであるモノラル盤(UK盤)を聴くためにモノラル・カートリッジを導入したのである(音のエジソン「スピリッツ」)。モノラル盤のガッツのある音を聴くにはモノラル専用カートリッジでなくてはならぬという、ひとえに“ビートルズ事情”によるものだった。

かくしてオーディオ小僧は「DL-103」とモノラル・カートリッジの二刀流で聴き続けてきたのであるが、今年になってとうとう新しいカートリッジを導入した。

それがオルトフォンの「SPU#1E」。アナログ・ファンが憧れるオルトフォンが、高額だったSPUの普及型モデルを発売したのである。それでも「トーンアームの先にミニコンポがついている」と間違いなく思う価格であったが、今回ばかりは、憧れのSPUに手が届くという思いが勝ったのである。

はたして「SPU#1E」は濃厚なアナログ音を絞り出してくれた。中域や低域の豊かさなど「これぞアナログ!」という音だ。この音を聴くと、貧乏性のオーディオ小僧も、やっぱりカートリッジを替えてよかったと思うのであった。

最後にこれも書いておこう。たとえオルトフォンの「SPU#1E」であっても、オーディオに興味のない人にとっては、ただのカートリッジであろう。それどころか「ただのレコード針」でしかない。ネットで購入した「SPU#1E」が宅急便で届いたとき、カミサンに「何を買ったの?」ときかれたので、「レコード針を買ったんだよ」と答えたら「ふうん」と興味も示さなかった。

つまりカートリッジは「家人に気兼ねなく買えるオーディオ」とも言える。そう考えると、もっとカートリッジにこだわれそうである。

文・絵/牧野良幸
1958年 愛知県岡崎市生まれ。イラストレーター、版画家。音楽や映画のイラストエッセイも手がける。最近『僕の音盤青春記 花の東京編 1981-1991』(音楽出版社)を上梓した 。公式ホームページ http://mackie.jp

『僕の音盤青春記 花の東京編 1981-1991』
(牧野良幸著、定価 2,000円+税、音楽出版社)
https://www.cdjournal.com/Company/products/mook.php?mno=20171028

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