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買ったレコードへの愛着が増す「疑似中学生買い」のススメ【オーディオ小僧のアナログ日誌 第12回】

文・絵/牧野良幸

オーディオ小僧は“小僧”とは名乗りながらも、実際は還暦も近いオヤジである。しかしオーディオや音楽に対する気持ちは中学生の頃と同じつもりでいる。いや、同じでいたい。だから“小僧”と名のる。たとえオヤジになっても中学生の頃のように音楽に感動する心を持ちたいのだ。

しかしそうは思っていても、現実にはオヤジの行動をとってしまう。アナログ・レコードの「大人買い」もその一つだ。

程度の差こそあれ、欲しいレコードがあれば何枚でも平気で買うのが大人だ。いや、それくらい買わないと満足しないのが大人と言うべきだろう。もちろん「大人買い」は、成人が一生懸命働いて稼いだお金で買うのだから、他人がとやかく言う筋合いはない。

しかし「大人買い」で買ったレコードは1回くらいしか聴かないことが多い。中学生の頃はお小遣いをためて買ったレコードは何度でも聴き返したのに。これはレコードが簡単に手に入ってしまうせいだと思う。

なかには、それでいいと言う人もいるだろう。しかしオーディオ小僧は昔のように、1枚のレコード盤をすり切れるほど聴いた、あの頃の感動を取り戻したいと思った。そこで「大人買い」をやめたのである。

オーディオ小僧が作ったルールはこうだ。レコード店で買うのは1枚(または1セット)だけにする。どんなに欲しいレコードを見つけても複数は買わない。たとえ何年も捜していたレコードであっても、100円のレコードであってもだ。

「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれないが、現実には大変なことだ。どうしても欲しいレコードを2枚以上見つけても、1枚を残して、あとは棚に戻さなくてはならないのだから身を切るような思いだ。買えるのに買わないのだから、こんな納得のいかないことはない。

しかし、それをあえてするのである。中学生の頃のような「買えない」という飢餓状態を人為的に作るのだ。

そうして絞った1枚(または1セット)のレコードは、あら不思議、中学生の頃のように重たいレコードになっているのである。たくさん買ったなかの1枚だと何とも思わないレコードが、たった1枚になったことで、がぜん輝きだす。愛着がわく。結果、何度も聴くことになる。

この方法のおかげでオーディオ小僧の最近のレコード観賞はとても充実している。これをオーディオ小僧は「疑似中学生買い」と名付けた。

ちなみに買わなかったレコードに対する気持ちがどうなるかも書いておこう。オーディオ小僧の経験では、ほとんどが店を出たとたん忘れてしまう。さもなければ「今度見つけたら買おう」と新たなワクワクとなる。買わなくて後悔するレコードなんて、実はそんなにないのである。

これからは「大人買い」ではなく「疑似中学生買い」。あなたも試してみてはいかがか。

文・絵/牧野良幸
1958年 愛知県岡崎市生まれ。イラストレーター、版画家。音楽や映画のイラストエッセイも手がける。最近『僕の音盤青春記 花の東京編 1981-1991』(音楽出版社)を上梓した 。公式ホームページ http://mackie.jp

『僕の音盤青春記 花の東京編 1981-1991』
(牧野良幸著、定価 2,000円+税、音楽出版社)
https://www.cdjournal.com/Company/products/mook.php?mno=20171028

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