文/石川真禧照(自動車生活探険家)
ビューティフル・モンスター(美しき怪物)をテーマに、6年ぶりに全面改装されたトヨタのカムリ。日本では人気低迷中の4ドアセダンだが、セダンの新たな魅力を提案する完成度の高い仕上がりだ。
カムリの歴史は、「セリカ」という走行性能に優れたクーペの4ドアセダン版である「セリカ・カムリ」に始まる。発売されたのは1980年なので、40年近い歴史のある車名だ。1982年からは、前輪駆動の4ドアセダンの最上級車という地位を守り続けてきた。
そのカムリが、車体はもとより、骨格となる基本構造を一新し、10代目として日本での販売を開始した。“日本での”と断ったのは、カムリは国内よりも人気の高い北米など海外市場向けに仕様変更と先行販売されることが多いからだ。ちなみに北米では15年間も乗用車販売台数1位を獲得している。
■優れた安全機能を標準装備
カムリというと、中型のセダンという印象を持っている人が多いかもしれない。しかし、最新型は全長、全幅とも同じトヨタの高級車として知られるクラウンとほぼ同じ。前輪駆動の最上級車にふさわしい車格が与えられた。車体デザインは、重厚感あふれるクラウンと違い、スポーティで軽快な印象に仕上げられている。
新型カムリの魅力は、標準装備された高性能で多彩な安全機能にある。その充実ぶりは現在のトヨタ車の中で一番といってもよい。
単眼カメラとミリ波レーダーを併用したセンサーにより、車だけでなく歩行者も検知し、衝突回避や事故の被害軽減を支援する。車線逸脱防止機能はもちろん、対向車や前方歩行者を検知し、ヘッドライトの照射範囲の上下を自動で切り替える機能も備わる。
また、車間距離を一定に保ちながら走行する自動追従機能は、海外市場を狙ったセダンゆえ、時速180kmまで設定可能だ。
新型カムリのモデルは3機種のみの設定で、全車種が動力源にハイブリッド方式を採用している。
エンジンは2.5lのレギュラーガソリン仕様。これに120馬力を発生するモーターを組み合わせ
ている。
同車に試乗して驚かされたのは、燃費のよさである。全長約4.9mm、重量約1.6tという大型の車体だが、実燃費は信号の多い都内の一般道でも20km/l近い。
前輪駆動の上級車にふさわしい静粛性が保たれていることも、特筆すべき点である。アクセルペダルを離し、ブレーキを踏んだ際に作動する回生機能のヒューンという音が、従来のトヨタのハイブリッド車よりも静かである。
また、加速中にエンジンが始動しても、エンジン音の室内への侵入はしっかり抑えられており、振動も少ない。EVモードのスイッチを押せば、2~3kmならモーターだけでの走行も可能だ。
室内は大人4名がゆったり乗車できる広い居住空間を備え、荷室もゴルフバッグが4セット入る収納力を誇る。先進技術が投入された安全性能が充実し、燃費もいい。
カムリは完成度のじつに高い、お薦めの4ドアセダンである。
【トヨタ/カムリ G】
全長× 全幅× 全高:4885×1840×1445mm
ホイールベース2825mm
車両重量1570kg
エンジン:モーター直列4気筒DOHC/2487cc:交流同期電動機
最高出力178PS/5700rpm:120PS
最大トルク22.5kg-m/3600~5200rpm:20.6kg-m
駆動方式前輪駆動
燃料消費率28.4km/l(JC08モード)
使用燃料:バッテリー無鉛レギュラーガソリン:リチウムイオン電池
ミッション形式電気式無段変速機
サスペンション前:ストラット 後:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ形式前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
乗車定員5名
車両価格324万円~
問い合わせ:お客様相談センター 電話:0800・700・7700
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2017年12月号より転載しました。