文/石川真禧照(自動車生活探険家) 

世界屈指の小型車開発技術を誇る老舗メーカー・ダイハツが開発した“小さなSUV”は、狭い道や山道が多い日本の生活にちょうどよいサイズ。「トヨタ/ライズ」の名でも目下大ヒット中である。

すべての構造部品を刷新し、基本性能から品質を高めたダイハツの新世代小型車。衝突時に歩行者を保護する衝撃軽減ボディを採用。

すべての構造部品を刷新し、基本性能から品質を高めたダイハツの新世代小型車。衝突時に歩行者を保護する衝撃軽減ボディを採用。

背が高く、最低地上高も高いSUV(多目的スポーツ車)は、荷室が広く使い勝手が良い。米国、欧州、中国など世界的に人気で、ロールスロイスやランボルギーニもSUVをつくっている。日本では軽自動車のSUVまである。

ダイハツ/ロッキーは、軽自動車よりもやや大きな車体に、3気筒1000ccクラスのエンジンを搭載した小型のSUVである。

高速道路で遠出をしたり、登り道を走ることが多い人にとっては、軽自動車では少々非力と感じるだろう。また、軽自動車で高速道路を走行すると、排気量が小さいエンジンを高回転で回すので、「騒音が気になる」という声もしばしば耳にする。そこでダイハツは、
軽自動車よりも大きい1000ccエンジン搭載のSUVを開発した。

静かに走り燃費も良い

全長は4m未満、全幅も1.7m以下。日本の道に合ったサイズなので、とても扱いやすい。車体色は11色から選べる。

全長は4m未満、全幅も1.7m以下。日本の道に合ったサイズなので、とても扱いやすい。車体色は11色から選べる。

実際にロッキーで高速道路を走ってみると、時速100km巡航のときのエンジン回転数は2400回転ほどで、低い回転数で静かに走行できた(試乗車は7速自動変速)。時速60kmで走行すると、エンジン回転数は2000回転前後である。街中の実走燃費はおよそ13~14km/L。国道や高速道路で流れに乗っているときには、18~20km/L程度の燃費で走ることができる。

前席中央に設置されたカーナビゲーション画面は、大型の9インチサイズ(オプション)。室内色は基本的には黒色を用いている。

前席中央に設置されたカーナビゲーション画面は、大型の9インチサイズ(オプション)。室内色は基本的には黒色を用いている。

計器盤下の中央には、左から12Vソケット、前席用座席ヒーター、USBソケットなどが装備されている。USBソケットは後席にも2口装備。

計器盤下の中央には、左から12Vソケット、前席用座席ヒーター、USBソケットなどが装備されている。USBソケットは後席にも2口装備。

4WD車には運転席と助手席にシートヒーターを標準装備。座面横のレバーで座面の上下高を変えることができる。

4WD車には運転席と助手席にシートヒーターを標準装備。座面横のレバーで座面の上下高を変えることができる。

後席の着座位置はやや高めで、後方から前席ごしに見る前方の見晴らしがよい。床面はフラットで大柄な大人が3人座ることも可能。

後席の着座位置はやや高めで、後方から前席ごしに見る前方の見晴らしがよい。床面はフラットで大柄な大人が3人座ることも可能。

4輪駆動車(4WD)と前輪駆動(FF)の2車種が用意されており、最安グレードは税込み170万5000円。ダイハツはトヨタと資本提携しているため、この車はダイハツが開発・生産し、「トヨタ/ライズ」という名前でも販売されている。装備の違いからトヨタのほうが約6万円ほど高い価格付けになっている。

狭い街路を小気味よく走り高速や山道でも力強い

最低地上高は185mmを確保し、荒れ地や山道を走ることも得意。走行安全性をはじめ自動駐車システムなどトヨタの最新技術も導入。

最低地上高は185mmを確保し、荒れ地や山道を走ることも得意。走行安全性をはじめ自動駐車システムなどトヨタの最新技術も導入。

ダイハツはスズキと並ぶ日本屈指の軽自動車メーカーだが、軽より大きな小型車も得意としてきた。

明治40年(1907)に工学博士の安永義章と実業家の岡實康、桑原政によって設立された「発動機製造株式会社」がダイハツの前身。ガス発動機に始まり、昭和5年(1930)に初めてガソリンエンジン(排気量500cc)の三輪自動車を製造して以来、小型エンジンの開発に関しては欧米メーカーをしのぐ技術を誇ってきた。

昭和49年(1974)には、排気量1000ccで荒れ地走行もこなす4輪駆動車、タフトを発売。昭和58年(1983)には、2代目シャレードDE −TXで、1000ccの3気筒ディーゼルエンジンを世界で初めて実用化した。

昭和42年(1967)にトヨタと業務提携して以降、トヨタの小排気量車も開発してきたダイハツは、平成28年(2016)にトヨタの完全子会社になる。ダイハツの小型4WD技術の蓄積が惜しみなく注ぎ込まれたロッキー(トヨタ/ライズ)は売れ行き好調で、やがてライバルメーカーも類似の車を開発するに違いない。しかしなかなか登場しないところに、ロッキーの凄さがある。

車体後部の荷室は開口部も広く、床は平ら。

車体後部の荷室は開口部も広く、床は平ら。

後席の背もたれは前に倒せる。頭上の空間も確保されており、身長170cm程度の人が座っても頭上の圧迫感はほとんどない。

後席の背もたれは前に倒せる。頭上の空間も確保されており、身長170cm程度の人が座っても頭上の圧迫感はほとんどない。

3気筒、1Lガソリンエンジン。2500回転を超えたあたりから強大なトルクを発生する。アイドリング時のエンジン音も静かだ。

3気筒、1Lガソリンエンジン。2500回転を超えたあたりから強大なトルクを発生する。アイドリング時のエンジン音も静かだ。

【ダイハツ/ロッキー(G 4WD)】

全長× 全幅× 全高:3995×1695×1620mm
ホイールベース:2525mm
エンジン:直列3気筒DOHCガソリンターボ/996cc
最高出力:98PS/6000rpm
最大トルク:14.3㎏-m/2400〜4000rpm
駆動方式:4輪駆動

燃料消費率:17.4km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 35L
ミッション形式:7速自動
サスペンション:前:ストラット式 後:トーションビーム式
ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク 後:ドラム
乗車定員:5名
車両価格:222万4200円(税込み)
問い合わせ:ダイハツ工業 0800・500・0182

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2020年6月号より転載しました。

 

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