道隆一家の絶頂描写にはめ込まれた爆弾
I:兼家政権の後継者はこの段階では、嫡男の道隆と目されていました。道隆の屋敷では、嫡男伊周(演・三浦翔平)と定子(演・高畑充希)とのほほえましいやり取りが交わされました。
A:定子は一条天皇への入内を控えていました。伊周には隆家(演・竜星涼)という弟もいて、後に「中関白家」と称されることになる道隆一家がもっとも幸せだった時期が描かれたことになります。そうした中で、道隆が屋敷では常に盃を手にしている場面が深く染み入りました。「幸せの絶頂の中に転落の種あり」という感じでしょうか。
I:さて、道隆の娘定子は一条天皇に入内したわけですが、ふたりは「いとこ夫婦」ということになりますね。
A:劇中でも「ままごと」のような感じがしましたが、小学校高学年、中学生くらいの夫婦ですからね。その「幼さ」を表現するのに変顔だったり「かくれんぼ」が描かれました。かくれんぼはすでに平安中期の宮中でも行なわれていたようです。遊興としては長~い歴史を有しているんですね。もともと中国の宮廷で行なわれていた「迷蔵」という遊びが日本に伝わったらしいのですが、日本では当初はおとなの男女の屋外デートというかゲームのようなものだったようです。
I:私は、「お上の好きなもの、私も全部好きになります」という定子の台詞が印象に残りました。一条天皇は、母と椿餅と松虫をあげました。平安時代のお菓子というと中国伝来の揚げ物などの唐菓子が主流でしたが、椿餅は最古の和菓子のひとつといわれているものです。餅米を乾燥させて粗く挽いた、今でいう道明寺粉を丸めたものに、甘葛という天然甘味料をかけて、椿の葉っぱで挟んだ菓子で、『源氏物語』「若菜上」にも登場していますから、当時の貴族の間で人気だったのでしょう。松虫は今の鈴虫のことだと思われます。それにしても「お上の好きなもの全部好きになります」というのは、ベタではありますが、往年の少女漫画のようで私は好きです。
A:道長とまひろ(演・吉高由里子)の恋愛パート、一条天皇と定子の「幼い恋」、それに加えて定子と詮子(演・吉田羊)の嫁と姑の関係ではないでしょうか。『渡る世間は鬼ばかり』の世界を彷彿とさせる関係のゴングが鳴ったという印象です。
I:道長とまひろの恋愛模様にキュンとする同じドラマでまさかの「嫁と姑問題」が出てくるとは! 今後ますます詮子と定子、一条天皇の関係がヒートアップしていきますから要注目ですね。
A:一方で、道兼の家族も登場しました。妻の繁子(演・山田キヌヲ)は、兼家の妹ですからこちらは「伯母・甥婚」ということになるんですね。初登場から何やら険悪な家族というのも意味深。なんだか本当に「平安の渡鬼」のような様相を呈してきました。
【『枕草子』有名場面が早くも登場。次ページに続きます】