『光る君へ』の主人公まひろ(幼少期の紫式部/演・落井実結子)。(C)NHK

ライターI(以下I):大河ドラマ史上2番目に古い時代を扱う『光る君へ』が1月7日にスタートします。

編集者A(以下A):この物語にはやたらと「藤原姓」の人物が登場します。藤原為時(演・岸谷五朗)、藤原宣孝(演・佐々木蔵之介)、藤原兼家(演・段田安則)と息子の道隆(演・井浦新)、道兼(演・玉置玲央)、道長(第1回では三郎/演・木村皐誠)、さらには藤原頼忠(演・橋爪淳)、さらに藤原文範(演・栗田芳宏)……。 第1回だけでも藤原だらけです(笑)。この「藤原一族」ですが、皆々、大化改新(645)で中大兄皇子とともに蘇我馬子を暗殺した中臣鎌足(藤原鎌足)の子孫になります。大化改新からすでに330年ほど経過して、同じ「藤原」でも身分に大差が生じているわけです。

I:鎌足の息子の不比等の四兄弟(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)はそれぞれ、南家、北家、式家、京家を興しますが、もっとも栄えたのは房前の北家。第1話にでてくる「藤原さん」は、ほとんどが房前→真楯→内麻呂→冬嗣と続く北家の子孫になるのですよね。

A:冬嗣の子供たちは長良、良房、良門などがいます。このうち嫡流となっていくのは良房の系統です(長良の息子基経が良房の養子となる)。『光る君へ』の主人公紫式部の父藤原為時は冬嗣六男の良門の系統になります。ちなみに佐々木蔵之介さん演じる藤原宣孝も良門の子孫になります。

I:藤原為時は岸谷五朗さんが演じているわけですが、為時の祖父兼輔は「三十六歌仙」のひとりで「小倉百人一首」にも〈みかの原 わきて流るる 泉川 いつ見きとてか 恋しかるらむ〉が入集しています。

A:百人一首というと、ぐっと身近に感じますね。紫式部の文才は代々受け継がれた才なのかもしれないですね。

武士との関係は登場するのか?

I:大河ドラマというと圧倒的に人気なのが戦国・幕末物で、合戦シーンが見所のひとつになっていると思うのですが、今作は国風文化最盛期の平安時代が舞台です。武士だとか戦は描かれるのでしょうか。

A:大河ドラマでもっとも古い時代を描いた『風と雲と虹と』(1976)には、当時の武士と貴族の関係を端的に示す場面がありました。関白を務めた藤原忠平と主従関係を結んだ将門は、衛士として忠平邸に寄宿しますが、殿上人の忠平と謁見する際は、庭先で平服し、しかも直接の会話ができず、家司を介して会話をするという状況でした。その作法がわからずに忠平の質問に直接答えてしまい、家司から「直答はならん」と叱責されるシーンが印象に残っています。

I:地方に下ったとはいえ、平将門は桓武天皇5世(4世説も)の子孫。その将門ですら、藤原忠平の前ではそうした作法が求められたということですね。

A:ちなみに平将門が仕えた藤原忠平の孫が、『光る君へ』で段田安則さんが演じる藤原兼家になります。将門の時代と『光る君ヘ』の時代の距離感はそんな感じになります。

家司という存在に注目

I:今回のドラマにも、平姓の人物が登場するのですよね?

A:はい。藤原兼家の家司として平惟仲(演・佐古井隆之)が登場します。惟仲は平姓ですが、桓武平氏の高棟(たかむね)流になります。桓武天皇の孫に高棟王と高望王(たかもち)がいましたが、高望王の流れが平将門や後の平清盛らを輩出することになります。惟仲自身も各地の受領を経験した能吏で、その才を買われて家司に採用されたのでしょう。

I:この時代の家司というのは、わかりやすくいうと今の感覚でいう執事のような存在になるのですよね。

A:ざっくりいうとそうだと思います。ちなみに受領というと古典や歴史の授業でおなじみですね。「受領は倒るるところに土をつかめ」というフレーズで有名な信濃守藤原陳忠(のぶただ)は、藤原南家の流れで、ほぼ『光る君へ』と同時代の人物になります。

この時代の武士はまだまだ摂関家の使い走りだった。次ページに続きます

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