紫式部を育んだ平安京に始まり、『源氏物語』所縁の宇治、物語の構想を得たと伝えられる石山寺、藤原宣孝と恋文を交わした越前の地に、紫式部の残り香を求めて旅をする。

石山寺

石山寺の名の由来となった硅灰石の岩塊(国天然記念物)。その上方に立つ国宝多宝塔は建久5年(1194)に源頼朝が寄進。
平安時代に石山詣が流行し貴族が数多参籠。本堂一角に紫式部源氏の間があり拝観できる。
滋賀県大津市石山寺1-1-1
電話:077・537・0013
拝観料:600円(本堂内陣拝観は別途500円) 
拝観時間:8時~16時30分(入山は16時まで) 無休
交通:京阪電車石山寺駅より徒歩約10分、JR石山駅より京阪バスで石山寺山門前下車、すぐ

紫式部は一時期、父為時の赴任に伴い都を離れて越前に下向している。為時一行は琵琶湖の打出浜(大津市)から出港、船で越前に向かったと考えられている。

大津には、藤原道長ら平安時代の貴族らがこぞって参籠した石山寺がある。本堂には藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)や菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)ら女性文学者も訪れた記録が今も残る。紫式部もここで『源氏物語』宇治十帖の構想を得たと伝承されている。

【立ち寄り処】石山寺境内に設けられた大河ドラマ館

光る君へ びわ湖大津大河ドラマ館(石山寺名王院)

『光る君へ』にちなむオリジナル映像やドラマの衣装、小道具などを展示。『源氏物語』誕生の契機ともなった土地故に、大河ドラマのみならず、歴史や紫式部に興味のある人も楽しめる展示が成される。同じく石山寺世尊院で開催される「源氏物語 恋するもののあはれ展」と併せて見学したい。

滋賀県大津市石山寺1-1-1
電話:077・528・2756(大津市観光振興課)
入場料:600円(石山寺入山セット券は1000円)、前売り500円
期間:令和6年1月29日~令和7年1月31日
開場時間:9時~17時(入館は16時30分まで) 期間中無休
交通:京阪電車石山寺駅より徒歩約10分、JR石山駅より京阪バスで石山寺山門前下車、すぐ

父・藤原為時とともに旅の途上で立ち寄った近江の海へ

三尾の海に綱引く民のてまもなく
立ち居につけて都恋しも
紫式部(白鬚神社歌碑より)

往時、都から越前への旅は琵琶湖を渡る航路が一般的だった。大津打出浜で乗船した紫式部は、高島の三尾で漁師が網を引く様子を見て、都を懐かしむ歌に詠んだ。

通常は都から越前までは水陸合わせて4日の旅程だが、新任国司の行列は規模が大きく、より長い旅となったと考えられている。秋に都を出た一行であったが、越前では初雪を見ることになる。

白鬚神社

琵琶湖の西岸、高島の地に鎮座する白鬚神社は、近江最古の神社といわれ、古くから崇敬の念を集める。境内には、この近くの三尾崎を歌に詠んだ紫式部の歌碑が立つ。
滋賀県高島市鵜川215
電話:0740・36・1555
境内自由 無休
交通:JR湖西線近江高島駅よりタクシーで約5分

取材・文/平松温子 撮影/奥田高文、小林禎弘

※この記事は『サライ』本誌2024年2月号より転載しました。

『サライ』2024年2月号特集は『「紫式部」を読み解く』。

 

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