マスクに書かれた〈ようこそ比奈〉の文字

A:さらに堀田さんは、撮影初日の義時との「出会い」について、こんなふうに語ってくれています。私は、こういう「裏話」が大好きです。

〈義時さんと比奈の2人が初めて会うシーンが、本当に私のクランクインだったんです。そのときに小栗さんが「ようこそ比奈」ってご自分のマスクに書いてくださっていて、それがすごくうれしくて、その話に触れたかったんですけど、緊張しすぎて何も会話もできず、ただ自分の心臓の音が聞こえるぐらいドキドキしていて。作品ですっごく緊張することってあまりないんですけど、『鎌倉殿の13人』はもう放送も始まっていて見ていましたし、「本当にやって来たんだな」という感じと、本当に目の前に小四郎殿がいて「ああ、これから比企と北条の架け橋をしていかなきゃいけないな、まっとうしたいな」と思うとすごく緊張して。ただ、これではイカンと思って、小栗さんに初日に「私はすごく緊張してます」ってもう言いました(笑)。言ったほうがもしかしたら自分の心が落ち着くかなと思って、そのシーンの撮影前に言ったら小栗さんが「そうだよね」って言ってくださって。でも 最初の頃は本当に緊張していてあんまりお話ができなかったですね〉

I:私はこのコメントを読んで、堀田さんは役どころと同じようにとっても可憐な方なんだなとうれしくなりました。もしかしたら地で演じていたのかもって。

A:小栗さんがマスクに〈ようこそ比奈〉と書いていたというエピソードですが、『プロフェッショナル仕事の流儀』でも頼朝役の大泉洋さんには〈全部 大泉 のせい〉と書いたマスクで現れるシーンがありました。本当に気遣いがこまやかなんだなぁと思いました。こういう話をすると「座長としての意識が高い」という話になりがちですが、私はそうは思わなくって、小栗さんのリーダーシップというのは天性のものなんだと感じています。

I:なるほど。その見方に私も賛同します。珍しく意見の一致をみました(笑)。その小栗さんの魅力について語った堀田さんのお話の続きをどうぞ。

〈私が「このシーンはどうしようかな」と悩んでいて、前室っていう、セットの外にある待機場所でひとりで座って考えていると、そっと横に来て下さって、ただ私が質問するまで何も聞かないでいてくれるんです。私が「これどう思いますか?」と聞いたら、ここをこうしたらどうかな、とか言ってくださるんですけど、何か悩んでいるときにそっとそばにいてくださるっていう感じで。イノシシに追いかけられるシーンのときは、下がりながら振り向かないみたいな動きだったんですけど、そこはお互いにリズムが合わないといけなかったので、「そこはやっぱりこういうふうにしたほうがいいんじゃないか」というのを小栗さんのほうから言ってくださって、結構何度も重ねて練習しました〉

A:何か悩んでいるときに、スッと自然に入って来てくれる。できそうでなかなかできない芸当です。劇中では、義時がどんどんダークサイドに闇落ちしていますが、「チーム小栗」の団結力はかたいということが伝わってくるコメントでした。

I:比奈さんの退場は比奈ファンの私にとっても悲しい出来事です。そして史実では義時は新しい女性と結ばれます。その女性がどんなふうに描かれるのか、私はしっかり見届けたいと思います。

A:ところで本編(https://serai.jp/hobby/1086976)でもお話しましたが、義時と比奈の間には、朝時と重時という男子のほかに京都の公家に嫁いだ女子(竹殿)がいます。そして、比奈自身も義時と離縁した後に公家の源具親に嫁ぎました。

I:「北条と比企の架け橋」から「京と鎌倉の架け橋」に変わったということですね。時代衣装がほんとうにお似合いの堀田真由さんには、また大河ドラマに出演してほしいですね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『半島をゆく』、鎌倉歴史文化館学芸員の山本みなみ氏の『史伝 北条義時』などを担当。初めて通しで見た大河ドラマが『草燃える』(1979年)。先日、源頼朝のもう一人の弟で高知で討たれた源希義の墓所にお参りした。

●ライターI:ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2022年1月号 鎌倉特集も執筆。好きな鎌倉武士は和田義盛。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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