北条義時が奔走したけれど……。結局「13人」を選んだほんとうの黒幕は誰なのか？【鎌倉殿の13人 満喫リポート】27

ライターＩ（以下Ｉ）： 参院選挙開票特番の関係で一週クールダウンしてからの第二幕のスタートです。冒頭登場したのが蹴鞠をする後鳥羽天皇（演・尾上松也）。後半戦のキーパーソン。第82代の天皇で、父は高倉天皇。平家とともに西海に沈んだ安徳天皇の異母弟で、日本一の大天狗と称された後白河院（演・西田敏行）の孫ということになります。

編集者Ａ（以下Ａ）：後鳥羽天皇は、以仁王（もちひとおう）の令旨が発せられて頼朝らが挙兵した治承４年（1180）夏に誕生しました。木曽義仲（演・青木崇高）の上洛に伴う平家都落ち（1183）の際に、西国へ逃れた安徳天皇に代わって、数え４歳で即位（※１）しました。

Ｉ：三種の神器は安徳天皇とともに西国にありましたから、イレギュラーな形での践祚（ ※２）になりました。しかも壇ノ浦の合戦で三種の神器のひとつ草薙剣は海に沈みましたので、後鳥羽天皇は三種の神器を欠いたままで即位したことに引け目を感じていたという説もあります。

Ａ：後鳥羽天皇は、和歌に秀でて、馬術など武芸にも励んだ天皇と伝わっています。私は「後鳥羽院」「藤原定家」「源実朝」「新古今和歌集」「金槐和歌集｣などのキーワードから下掲の「見渡せば 作品集」が頭に浮かびます。

〈見渡せば 花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮〉（藤原定家）

〈見渡せば 山もと霞む水無瀬川 夕べは秋となに思ひけむ〉（後鳥羽院）

〈見渡せば 雲居はるかに雪白し 富士の高嶺のあけぼのの空〉（源実朝）

学生の頃など景勝地を訪れるたびに〈見渡せば〉と口にしながら、後の句が続かず、学才無きを悟りました。ストーリー的にはもう少し後になりますが、京と鎌倉の間で交わされた和歌などにも思いを馳せたいですね。

これで見納め？ 文覚上人ゆかりの地巡り

Ｉ：都では九条兼実（演・田中直樹）が失脚した後に実権を握った土御門通親（演・関智一）の暗殺騒動が発生しました。

Ａ：第24回で、頼朝が大姫（演・南沙良）と結婚をさせようとした従兄弟の一条高能（演・木戸邑弥）が登場しました。高能の母坊門姫が頼朝の同母妹という関係ですが、頼朝が亡くなる前年に23歳の若さで亡くなっています。その遺臣たちが土御門通親を襲ったのが、俗に「三左衛門事件」といわれるこの事件。後ろ盾だった頼朝亡きあと、朝廷での影響力の低下を恐れた一条家の家臣らが起こした事件だといわれています。

Ｉ：頼朝の死がそれだけ急だったということもありますが、権力者の交代時に起きがちな騒動ですね。京都でさえ、頼朝の後ろ盾を失った人々による「乱」が起きているわけですから、鎌倉の義時（演・小栗旬）らの周辺も実際にはもっとギラギラしていたんだろうなと想像させられます。

Ａ：この騒動に絡んで、文覚（演・市川猿之助）も登場しました。文覚は後白河院、頼朝とも親しかった僧ですが、いかに権力者と親しくとも、その権力者が世を去るとたちまち窮地に陥るということを知らせてくれる場面でした。

Ｉ：本作ではコミカルなキャラとして登場している文覚ですが、京の神護寺再建に尽力するなど、名僧として知られています。

Ａ：神護寺は京都中心部から離れた右京区にあります。2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』取材の際に、明智光秀が築城し、石垣などの遺構が良好に残っている周山城（京都市右京区）に幾度か足を運びましたが、京と周山城、さらには日本海を結ぶ要衝の周山街道沿いに神護寺はあります。周山城にはまた訪れたいと思っていましたので、劇中の文覚を偲んで神護寺にもお参りしたいと思います。さらに、伊豆韮山（伊豆の国市）には、文覚が滝行したと伝わる史跡がのこされています。歴史作家の安部龍太郎氏が『鎌倉殿と北条一族 歴史は辺境から生まれる』で実際に訪ねていますが、文覚ゆかりの巨石もあったり、険しい山道ありと、「文覚すごい！」と思わせてくれます。

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