東京付近パノラマ地図(大正11年(1922))
上の図は、今から100年前の東京の中心部を鳥瞰図風に描いた絵地図である。大正時代の東京は人口が流入して都市化が進んでいた。主要な交通機関は、赤色の線で示された鉄道だった。
山手線は環状運転ではなかった
首都の玄関口となる東京駅が大正3年(1914)に開業し、都心と郊外に広がる住宅地を結ぶ中央本線が大正8年に東京まで通じると、乗り換えせずに都心をひとめぐりできる電車の「の」の字運転(中野駅〜東京駅〜品川駅〜新宿駅〜池袋駅〜田端駅〜上野駅間のルートがひらがなの「の」の字に似ている)が始まった。山手線は上野駅〜東京駅間が未開通で、この区間が繋がって環状運転を始めるのは大正14年(1925)のことである。いっぽう、総武本線は隅田川を越えていなかった。
山手線の内側をくまなく走るのは東京市電(のちの都電)の路線網で、都心を移動するのに便利だった。市電は1日の利用者が延べ100万人を突破し、黄金時代を迎えていた。図の緑で覆われた公園や名所に最寄りの電停を設けるなど、東京見物に欠かせない足となっていた。
取材・文/遠藤則男 撮影/藤岡雅樹(小学館写真室)
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※この記事は『サライ』本誌2022年9月号より転載しました。