取材・文/柿川鮎子

寒くなると増えるのが泌尿器系疾患と骨関節疾患です。どちらも高齢の子に多く、寒さがピークを迎える今頃は、症状を訴える犬も増えてきます。今回は特に骨関節疾患を予防するための3つのポイントについて、ひびき動物病院院長の岡田響先生に教えていただきました。

**さわったら急に咬みつくような仕草に注意

中高年になると、人間も加齢により膝や腰、肩に痛みが出ることがあります。犬や猫も同じで、歳をとると骨関節疾患が増えてきます。骨関節疾患の中で、特に多い病気は変形性関節症です。12歳以上の犬の9割がこの病気に罹っていると言われています。

もともと骨と骨を繋ぐ関節には、衝撃をやわらげるためのクッションのような軟骨や滑液という液体が存在します。加齢や何らかの原因でこのクッションが減ったり、役割りを果たせず、骨と骨がぶつかり合って痛みを感じるのが関節症です。

岡田先生によると、「犬の骨関節疾患は首や背中を触った時や、手足を動かしたりすると突然痛がって、咬みつくような仕草をされて、びっくりして病院に来られて、診断されることがあります。

また、抱っこしようとしたときにギャとかキャンキャンなどと鳴いたりすることもあります。こういう場合は比較的痛みがはっきりしているパターンで、強い痛みが続く場合は、ご飯の食べ方にも影響が出てくることが多いです」と言います。

こうした、抱っこをした時の突然の大きな鳴き声は首や肩、背中のトラブルや、“麻痺”を伴う神経疾患の可能性もあり、治療に急を要するケースもあるそうです。

**可愛い座り方は関節炎のサインかも

岡田先生によると、これらの病気は、普段の散歩などでは飼主さんが早い段階で気づけないことが多いようだと言います。

「今までは普通に歩いたり、走ったりして、元気に動き回っていたのに、突然歩くのを嫌がるようになって、どうしたのだろうと、診察を受けに来られる方も少なくないのですが、このようなケースではかなり前から病気があって、随分悪くなってから発見されることも少なくありません。

飼い主さんに、これまでを振り返ってどんな様子でしたか?と質問すると、そういえば前から少しスキップしながら歩いてた、とかたまにケンケンしてた、などと答えられます。

女の子座りやスコッティッシュ座りと呼ばれる、ちょっとかわいい仕草のようなものが、実は関節炎のサインのことも多いのです。ですので、普段と違う、や、異常かな?と思った時には、早めに動物病院にご相談ください」と飼い主さんにアドバイスしてくれました。

**関節炎かそうでないかを見極める

「歩き方がちょっと他の子と違っていたけれど、それがその子の個性だと飼い主さんは思っていたそうです。でも、時間が経つにつれて、特定の部位に負担がかかっていたのか、その歩き方がきっかけで関節炎などを引き起こしたという例は少なくないです」と岡田先生。

「小型犬や猫の骨はおおよそ10か月齢までに成長が終了しますが、なかには成長障害があるとか、生まれつき骨に異常があるとかで、1歳未満の時から癖のある歩き方につながっていた、なんていう子もいるんです。

まずは関節炎であるのか、ほかの病気の可能性があるのか、が重要なので、飼い主さんが「あれ?」と疑問や不思議に思うことがあったら、早めにかかりつけの先生に相談してもらいたいです」と診察をすすめています。

**飼い主さんができる3つの予防のポイント

実際に飼い主さんができる「犬の骨関節疾患予防の3つのポイント」をあげてもらいました。

ポイントその1)犬は普段のお散歩、猫は爪の太さや生活習慣をチェック

歩くときの頭や体の上下の振れ、お尻の揺れが大きい、足の運びが乱れる、段差を嫌がる、など、犬は歩き方で異常が判断できる場合があります。何かちがう、を感じてください。

猫の場合は、爪が太くて最近爪研ぎしなくなった、以前より高い場所に行けなくなった、同じところを良く舐めている、なども関節炎を疑う所見です。

前述のかわいい座り方も犬猫共通のチェックポイントです。

ポイントその2)痛みのサインを知っておく

公益財団法人動物臨床医学研究所の動物のいたみ研究会が公開しているペットの痛みのチェックシート

などを使って、調べて見ると良いでしょう。これにチェックが入る場合は、早めにかかりつけの先生に相談してください。このサイトの同じページに犬猫の痛みについての参考文献も便利です。

猫は個体差がある上、習性として痛みを隠す傾向もあり、なかなかわかりにくいのが現状です。そのため、ともかく何か気づいたことがあれば、どんなことでもホームドクターに相談してみることがおすすめです。

飼主さんの痛みに対する認識と、動物の痛みの表現には、ギャップがあることが多く、結果的にひどく痛くならないと気づいてあげられません。飼い主さんが「かわいい」と思う仕草が実は痛みのサインのこともあるので、どんな点でもホームドクターに聞いてみましょう。

ポイントその3)環境の整備

普段過ごしている家の床材が滑りやすいフローリングだと、犬の関節に余計な負担をかけてしまいます。滑りにくいようにカーペットを敷くなど、日常生活の見直しも大切です。ソファやベッドへの乗り降りも影響していることが少なくありません。

そして負担を助長するのが肥満です。関節炎で跛行がある場合、悪くない方でかばって歩いている場合がありますが、肥満の場合は、左も右も(または前も後ろも)など複数個所に異常が見られることが少なくありません。

生活環境と体重のバランスの管理などは継続して続けられるように、かかりつけの先生、トリマーさんやしつけの先生など、モチベーションの維持のためにも、誰かと一緒に普段から持続的に取り組んでほしいと思います。

ペットも長寿社会になった今、犬猫も健康寿命を延ばしてあげたいのが、飼い主の願い。早めの発見と持続可能な生活努力で、ペットに痛みのない生活を実現させたいものですね。


取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390

文/柿川鮎子 明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

 

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