頭がキーンとなる「アイスクリーム頭痛」どうして起きる? どう治す?
文／藤原邦康
猛暑が続いていますね。アイスクリームやかき氷など冷たいスイーツが美味しい季節ですが、食べ過ぎは禁物です。胃腸を冷やしてしまうことに加え、頭痛やアゴの痛みなどの症状を生むことがあるからです。冷たいものを食べると知覚過敏の不快感だけでなく、氷など固い物をかじって顎関節や歯にダメージを生じる可能性があります。固く凍った食べ物を噛んで「頭痛がする」「アゴが痛くなった」「口が開きにくくなった」などという相談がよく寄せられます。知り合いの歯医者さんも最近、固いことで有名な和風アイスバーをかじって前歯が取れた患者さんが一日に３名もいたと明かしてくれました。
「アイスクリーム頭痛」と「緊張型頭痛」
頭痛は「アイスクリーム頭痛」と「緊張型頭痛」に分けられます。冷たいものを食べて頭が突き刺すようにキーンと痛む「アイスクリーム頭痛（Icecream Headache）」は、直ちに健康を害するわけではありませんが不快ですね。氷やアイスクリームなど固体に限らず冷たい気体や液体が口腔内や喉を通過することで起こり得ます。
この現象については、急激に冷やされた舌や喉を温めようとして、頸動脈や頭蓋の内側の血管が反射的に拡張し炎症性物質が送られて頭痛を引き起こすという説があります。また、喉の冷感は三叉神経核という中枢に伝わるのですが、極端な冷感など大きな刺激を受けると神経の伝達物質が一度に大量に放散されるため、神経経路に混乱が起き「頭痛」として間違って受け取られてしまうという説もあります。舌の後方から喉にかけての知覚や嘔吐の反射に関わる舌咽神経は、三叉神経脊髄路核を経由し脳に信号を伝えます。また、顔や口の中の触覚や温・冷感、痛覚は脳神経では一番太い三叉神経を経由して脳幹に伝えられます。三叉神経は顔面や頰、アゴの知覚や運動をつかさどっています。普段は、目の周り・頰・アゴなど部位ごとに痛みや違和感など、知覚を区別できるようになっているのです。ところがアイスを食べると急激な冷たさを痛覚だと脳が間違って受け取って関連痛を起こしてしまうというわけです。
ドイツの研究では、大人よりも子供に発症しやすいことや遺伝性が認められること、片頭痛の引き金につながる可能性などが示唆されています。氷よりも、口腔内がより早く冷やされる氷水のほうがアイスクリーム頭痛を引き起こしやすいそうです。
一番有効な対処法は、ゆっくり食べること
今、「かきごおらー」（ごおらー）も続出して流行っているかき氷も注意が必要ですね。ちなみに「かき氷頭痛」という表現はなく「アイスクリーム頭痛」としてひとくくりされます。かつてはこの名称が正式な病名として分類されていましたが、現在では「寒冷刺激による頭痛」と区分されています。アイスクリームでもかき氷でも一番有効な対処法としては、ゆっくり食べることです。それでも発症してしまった場合には口腔内や舌を温めると良いといわれています。お茶やぬるま湯を口に含んで舌を軽く泳がせるようにゆったり動かしていくと次第に頭痛が治まっていきます。また、一見過激に思えますが（血管拡張し炎症を起こした）頭の痛い部位をさらに冷やすことも有効のようです。
なお、屋外で自然凍結された天然氷の場合は「アイスクリーム頭痛」になりにくいそうです。天然氷は専門の池で2週間ほどかけてゆっくり凍らせるため、空気が抜け密度が濃くなり溶けにくい性質があります。この性質を利用して、天然氷の専門店では（冷凍庫の氷だと溶けてしまう）コンロの火のそばで0度近くに温めてから削っているため、アイスクリーム頭痛がほとんど起きないとのこと。
一方、ガリガリかじるタイプのアイスバーを食べて頭が痛くなる一つの原因は咀嚼筋の過度な緊張です。このタイプの頭痛は「緊張型頭痛」と呼ばれます。
文／藤原邦康
1970年静岡県浜松市生まれ。カリフォルニア州立大学卒業。米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック。一般社団法人日本整顎協会 理事。カイロプラクティック・オフィス オレア成城 院長。顎関節症に苦しむアゴ難民の救済活動に尽力。噛み合わせと瞬発力の観点からJリーガーや五輪選手などプロアスリートのコンディショニングを行なっている。格闘家や芸能人のクライアントも多数。著書に『自分で治す！顎関節症』（洋泉社）がある。
