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長命を誇った著名画家たちに学ぶ長生きのヒント|『一流の画家はなぜ長寿なのか』

文/鈴木拓也

長命を誇った著名画家たちに学ぶ長生きのヒント|『一流の画家はなぜ長寿なのか』

日本人の平均寿命の高さは、今では当然のように思われているが、実は平均寿命が50歳を超えたのは1947年のことである。そして、世界的に見ても、多くの人が70代、80代を生きられるようになったのは、長い人類史の中ではつい最近のことに過ぎない。

そう考えると、世界的に著名な画家たちの寿命の長さは驚異的だ。例えば、葛飾北斎や横山大観は 89歳、パブロ・ピカソは91歳、マルク・シャガールは98歳…。医学や公衆衛生が未発達な時代に、現代人の平均寿命を超え、しかも生涯現役を貫いている方々が多い。

彼らは、遺伝的に恵まれていたのだろうか、あるいは特別な健康法でもやっていたのだろうか?

その謎を追究し、書籍『一流の画家はなぜ長寿なのか』にまとめたのが、銀座内科・神経内科クリニックの霜田里絵院長だ。

霜田院長は、著名画家の長寿の秘密を解く糸口として「テロメア」を挙げている。テロメアとは、細胞内にあってDNAから構成される染色体の末端にある構造。染色体の末端部分を保護するために存在するが、細胞分裂のたびに短くなっていき、短くなりすぎると細胞分裂が停止してしまうことから、寿命と深い関係があるとされている。

テロメアは、加齢とともに短くなるが、逆に伸びることもあり、それには生活習慣や精神状態が大きく関与するという。この事実から霜田院長は、著名画家には共通する特有のライフスタイルや心のあり方があって、それが長寿に結びついているのではと考える。また、絵を描くことは、脳の様々な部位が働くことを指摘する。

「立体的に全体像を把握するためや、キャンパスの中に絵をバランス良くおさめるために頭頂葉が働きます。指を動かすためには、前頭葉の運動野が働きます。描くために集中したり、計画を立てたり、ひらめきを得たりするためには前頭前皮質が働きます。きちんと測定した対象物の絵を描くためには、大脳基底核や小脳も働きます」(本書65pより)

少し前まで、脳は加齢とともに衰えてゆく一方というのが定説であったが、脳の各部位を使い続けることで、逆に強化すらできることが分かっている。

長寿画家たちは、絵を描くことで、意識せず脳を広範に使い、いつまでも若々しい精神を保っていたのだと、霜田院長は述べる。
また、画家たちの多くが、描く題材を探しに屋外を歩き回っていたことは、肉体的な若さの維持に寄与したであろうことも指摘する。

その例として、片岡球子は富士山を描くために、週に1回は藤沢市から富士山まで写生に出かけ、葛飾北斎は86歳の時分に日本橋と両国の約8kmを往復し「へともをもはぬたっしゃ」と手紙に書き記しているのを挙げる。

また、精神面では「誠実で根気のある情熱」が画家たちに共通するもので、これが「長寿への鍵」だという。こうした性格特性を持つ人のテロメアは概して長いそうで、葛飾北斎、東山魁夷、ピカソらの終生にわたる情熱は、寿命の延びにさぞかし影響しただろうと、霜田院長は推察する。

では、絵筆を握ったこともないわれわれは、こうした著名画家から何か学べることはあるだろうか?

本書において霜田院長は、いくつかのヒントを提示する。

まずは、「脳に定年退職などないし、そもそも人生に定年退職など存在しないことを心に刻もう」と言う。それは、何らかの仕事を一生涯続けよというのではなく、「年齢相応の服装をするとか、年だから無茶な旅をしない」といった考え方を改めることだけも良いという。そして、適度に手や身体を動かし、何か情熱を傾けられる対象を見つける。また、テレビを見るばかりといった、情報のインプット偏重からアウトプットも心掛ける意識も大事だと説く。

幾つかの研究によれば、ほんの1か月のライフスタイルの改善で、テロメアに影響が出始めるという。本書に散りばめられた著名画家の生き方を手掛かりに、今までのライフスタイルをできるところから見直してみてはいかがだろう。

【今日の健康に良い1冊】
『一流の画家はなぜ長寿なのか』

https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=3696-1

(霜田里絵著、本体1,400円+税、サンマーク出版)

『一流の画家はなぜ長寿なのか』

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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