取材・文/池田充枝

「皇居吹上御苑の森」

「皇居吹上御苑の森」

天皇陛下による生物学のご研究は広く知られています。特にお若いころからハゼ科魚類の分類学的研究に取り組まれ、これまでに30報以上もの学術論文をご執筆になり、新種も発表されています。

一方で、天皇陛下の「西暦2000年(平成12年)における皇居内の生物について正確な記録を残し、その後の経年変化などを把握することが望ましい」というお言葉が発端となり、国立科学博物館は、1996(平成8)年度から1999(平成11)年度に皇居の詳細な生物研究を行いました(第Ⅰ期)。

続く2000(平成12)年度から5年をかけて動物に関する追跡調査を実施し、2009(平成21)年度から2013(平成25)年度には、第Ⅰ期調査から10年が経過した皇居内の生物相の変化を調査することに加えて、タヌキや鳥類、甲虫類などの生態学的な調査を実施しました(第Ⅱ期)。

天皇陛下御即位30年を記念して、天皇陛下のご研究と皇居内の生物調査の結果を公開する展覧会が開かれています。(3月31日まで)

本展の見どころを国立科学博物館の動物研究部長、倉持利明さんにうかがいました。

「この企画展では、「天皇陛下の御研究」に関する資料の数々と、国立科学博物館(科博)による「皇居の生物相調査」で得られた標本約500点を見ることができます。

天皇陛下がご発表なさったハゼ類の新種の実物標本とそのご論文、天皇陛下がご著書をご執筆の際にお描きになったハゼ類のイラスト(複写)、ご研究なさる天皇陛下のお写真に加えて、天皇陛下のご研究を顕彰して英国王立協会(ロイヤル・ソサイエティー)から贈られたチャールズ2世メダルと証書、スウェーデンのウプサラ大学から贈られた名誉学員のメダルと証書を展示しています。

「新種のハゼ、クロオビハゼ」(写真提供:宮内庁)

「新種のハゼ、クロオビハゼ」(写真提供:宮内庁)

さらに、天皇陛下によるタヌキのご研究をご紹介しました。天皇陛下は、皇居に住むタヌキの糞の分析を長年にわたってお続けになり、皇居がタヌキの生息に適した環境であることをご解明なさいました。

「皇居のタヌキ」(写真提供:宮内庁)

「皇居のタヌキ」(写真提供:宮内庁)

「皇居の生物相調査」では、約6,000種の動植物が記録されましたが、展示では新種の植物フキアゲニリンソウや、つい先日新種として発表されたコウキョアケハダニ(ダニ類)をはじめ、絶滅危惧種を含む植物、藻類、キノコ類、地衣類、昆虫類、クモ類の実物標本を見ることができます。

「新種フキアゲニリンソウ」

「新種フキアゲニリンソウ」

皇居の豊かな生物を通して、天皇陛下の生物学への深いご興味と、自然への深いご配慮をうかがい知ることができます。この企画展をご覧になった皆様には、皇居の豊かな自然を維持し、保全して未来に継承することの意義を感じ取っていただければ幸いです」

天皇陛下の長年のご研究の成果を間近に拝見できるまたとない機会です。ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
天皇陛下御即位三十年記念展示 企画展「天皇陛下の御研究と皇居の生きものたち」
会期:2019年2月13日(水)~3月31日(日)
会場:国立科学博物館 日本館地下1階多目的室
住所:東京都台東区上野公園7-20
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://www.kahaku.go.jp/
開館時間:9時から17時まで、金・土曜日は20時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:2月18日(月)、3月4日(月)、3月11日(月)、3月18日(月)

取材・文/池田充枝

 

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