文/川口陽海

ヘルニアによる坐骨神経痛がウォーキングで改善! 2か月で痛みがとれた40代男性【川口陽海の腰痛改善教室 第11回】

椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛が、2か月のウォーキングで大幅に改善した事例がありましたのでご紹介します。

また効果的な歩き方やどれくらい歩いたら良いか、そもそも歩くのが痛い場合の対処法なども合わせてご紹介します。

ヘルニアによる坐骨神経痛発症

Tさん(40代、男性)は、連休前の4月下旬、朝起きた時に右脚に強い痛みを感じました。

病院に行くと『椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛』という診断……。

鎮痛剤を処方され、薬を飲んで様子を見ることになりました。

しばらくは歩くのもつらいほどの激痛が続きましたが、3~4か月で少しずつ痛みは治まってきました。

しかし、歩く時やずっと座っているとお尻の奥やふくらはぎが痛みます。

なかなか治らないこの痛みを何とかしたいと、8月に腰痛トレーニング研究所を訪ねてこられました。

長時間のPC作業と運動不足で全身カッチコチ

お身体を拝見すると、腰から足を中心に全身の筋肉がカッチコチにこり固まっています。

お仕事内容や生活習慣をうかがうと、デスクワークでほぼ1日座りっぱなし、運動はほとんどしないとのこと。

また趣味と副業を兼ねて、帰宅してからも1日2~3時間はPCに向かうことが多く、さらに土日のお休みも長時間PC作業をすることが多いとのことでした。

これでは全身カッチコチに固まるのも無理はありません。

とくに痛みの出る右の殿部から足にかけては、いくら施術してもゆるむ気配もないほどこり固まっています。

私は、「ヘルニアはあると思いますが、痛みはこのこり固まった筋肉が原因です。施術で筋肉をほぐしながら、少しずつ運動することで筋肉を柔らかくしていくのが痛みを治すのに有効です」と説明し、ご自身でもできるストレッチやインナーマッスルトレーニングなどを指導しました。

1日1万歩のウォーキング開始

週に1回の治療と自宅でのエクササイズを続けることで、お尻やふくらはぎの痛みは少しずつ回復していきました。

しかし完全には解消できず、歩くときや長時間座りっぱなしの時などに痛みがありました。

また9月末にはギックリ腰になり、会社を休まなければならないようなこともありました。

11月半ばにTさんは、指導されたエクササイズの他に、自発的にウォーキングを始めることにしました。

目標は1日1万歩!

会社の帰りには最寄り駅ではなく、少し遠くの新宿駅まで歩き、自宅の最寄り駅からも家まで歩いたそうです。

また土日も1時間以上のウォーキングをおこないました。

私はそのことを全く知らなかったのですが、12月に治療に来られた際、つまりウォーキング開始から1カ月程度の時点では、まだ症状に大きな変化はありませんでした。しかし1月に来院されたときに、歩いた時や座りっぱなしの時の痛みがかなり減り、常での痛みはほとんどなくなったとの報告をうかがいました。

そこではじめてウォーキングをしていたことを知ったのです。

身体を触らせていただくと、あれほどカッチコチに固まっていた腰やお尻、脚の筋肉がとても柔らかくなっています。

2か月間1日1万歩のウォーキングをしたことで、身体が大きく変化したのです!

この調子なら治療はおこなわなくても大丈夫そうです。

私は、「これなら継続的な治療は必要なさそうですね。一旦卒業にしましょうか」と提案し、もしまた何か症状や違和感などを感じたらご相談いただくことにしました。

運動の効果が出るには時間がかかる

筋力トレーニングなどもそうですが、一般的に運動の効果があらわれてくるには2~3か月の時間が必要です。

運動で身体に負荷をかけると、筋肉や心肺機能などがそれに応じて生理的な変化をおこします。

代謝によって細胞レベルで変化がすすんでいくわけですが、その変化(強化)には2~3か月程度が必要なのです。

今回のTさんのケースは、2か月間ウォーキングを続けたことで順調に変化(強化)がおこり、症状の軽減につながったと考えられます。

せっかく運動をはじめても1~2か月程度でやめてしまうと、変化しはじめた細胞は元に戻ってしまいます。

すぐに変化や効果を感じなくても、根気よく運動を続けることで必ず効果が出てきますから、少なくとも2~3か月は頑張ってみましょう。

効果的な歩き方

腰痛や坐骨神経痛を改善するためにウォーキングをおこなう場合、歩き方や身体の使い方を意識すると、より運動効果が高まります。

腰痛トレーニング研究所で指導している歩き方をご紹介します。

立ち方(準備姿勢)

自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより

効果的な歩き方効果的な歩き方効果的な歩き方このようにお腹に力を入れ、足の指に重心をかけるようにして歩きだします。

歩き方

自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより
効果的な歩き方

やや大股というのは、いつも歩くときの歩幅より3~5cm程度大股で歩くようなイメージです。

効果的な歩き方

前足をやや大きく踏み出すように意識すると、自然と後ろ足は大きくけり出すことになり、足の指が使われます。

そうすると後ろ足の裏が見えるような歩き方になります。

効果的な歩き方

みぞおちあたりから脚を動かすようにイメージすると、腹筋や背筋、殿筋などより多くの筋肉を使うことになり、トレーニング効果が高まります。

どれくらい歩いたら良いか?

Tさんは1日1万歩のウォーキングをおこないましたが、「いきなり1万歩はとても歩けない」という方も多いと思います。

まずは自分が1日平均どれくらい歩いているかをチェックしてみましょう。

最近ではスマートフォンのアプリなどでも歩数がわかります。

そしてその平均歩数から、プラス千歩を目標に歩数を増やしていってみましょう。

千歩というのは、時間にするとおおよそ10分くらいです。

それを1~2週間程度続けてみて、大丈夫そうであればまた千歩(10分)歩く時間を増やしていく。

それを繰り返して1日8千~1万歩程度を目標にしてみましょう。

歩くと痛みがある場合(間欠性跛行など)

ウォーキングをしたいのはやまやまだけれども、そもそも歩くと痛みやしびれが出たり、時々休まないと歩けなくなる『間欠性跛行』などの症状をお持ちの方もいらっしゃると思います。

多少の痛みやしびれがあっても、歩くとかえって調子が良くなったり、歩いても症状がさほど悪化しないようであれば、ウォーキングに取り組んでみてください。

歩くことでとても痛くなる、痛みが悪化する、間欠性跛行がおこる、という方は、まずはある程度歩くことができるように、他のエクササイズをしたり治療をしたりする必要があります。

以下の記事が参考になるかもしれませんので、良かったらご覧ください。

その足のしびれ、坐骨神経痛かも?タオルを使ったストレッチで簡単改善!【川口陽海の腰痛改善教室 第2回】

長引く腰痛や坐骨神経痛を早く治すには?【川口陽海の腰痛改善教室 第3回】

※ご注意)ウォーキングやエクササイズをおこなうことでかえって症状が悪化することもあります。

そのような場合は速やかに中止してください。


文・指導/川口陽海
厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。

【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616
http://www.re-studio.jp/index.html

 

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