取材・文/わたなべあや
夏になってから、連日37度前後の気温を記録し、なかには名古屋など40度を超える地域もあります。酷暑、災害という言葉も聞かれるほどの暑さに、熱中症で救急搬送される人も続出。熱中症の症状や予防、応急処置について、救急の現場で熱中症患者の治療にもあたっておられる近畿大学医学部脳卒中センター教授、大槻俊輔先生に伺いました。
人はなぜ熱中症になるのか
「私達の体は、暑くても寒くても体温調節ができるようになっています。じっとしていても筋肉は動いていて、体にこもった熱を外に出しているので、背中や肩が温かいのです。体を動かすと、体温が上昇して汗が出ますが、汗の蒸発とともに熱が外に逃げていくため、体温を36度台に保つことができるようになっています。運動をすると37度くらいになることもありますが、38度以上にはならないよう、汗や皮膚温度で体温調整できるようになっているのです。
しかし、日本の夏は気温に加え湿度も高く、地面からの照り返しによる輻射熱(ふくしゃねつ)は、気温30度でも45度にもなることがあります。すると、汗をかいても湿気に阻まれて汗が蒸発しにくくなり、体温の熱が体にこもりやすくなり、体温調節機能が働かなくなってしまいます。特に、気温30度を越えていて、急に熱くなった時は、体がついていかないので要注意です」
熱中症の症状
「熱中症の症状は、夏バテのような軽度のものから死にいたることもある重度のものまで3段階に分けられています。体がだるいと感じたり、ズキンズキンと頭痛がしたりしたら、既にイエローカード。たかが夏バテと考えず、注意する必要があります。具合が悪くなる数時間前から口が乾き、ろれつが回らなくなるのも典型的な症状です。尿の色が濃い場合も、脱水気味だと思ってください。
では、重症度別に症状を見てみましょう。
重症度I度:初期の症状
涼しいところで休み、冷えた水分、塩分を補給。様子を見て病院へ。
・めまい
・ふらふらする
・立ちくらみ
・疲労感
・指先、足先のしびれ
など、夏バテのような症状が出てきます。
よくある症状のひとつが『こむら返り』。塩分(ナトリウム)が欠乏すると、筋肉痛や筋肉の硬直が起こりやすくなるのです。
重症度II度:中期の症状
衣服をゆるめ、体を冷やすなど、応急処置をした後に病院に行きましょう。
・吐き気
・虚脱感
・ぐったりする
・力が入らない
・軽い意識障害
など、なんとなくいつもと違う「熱疲労」と呼ばれる症状が出てきます。
重症度III度:危険な状態
すぐに救急車を呼ぶべき状態です。
・意識が朦朧とする、意識がない
・痙攣が起こる
・呼びかけに対する返答がおかしい
・まっすぐ歩けない、走れない
・体が熱い
ここまでくると、腎臓や肝臓、血液に障害が出て、脳にも症状が出てくることがあります。
《熱中症の応急処置フローチャート》で、症状別の応急処置の仕方を確認してみましょう。
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