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健康

認知症と歯周病との意外な関連性が明らかに【名医に聞く健康の秘訣】

取材・文/わたなべあや

認知症のひとつであるアルツハイマー病が見つかったのは、今から110年以上も前のこと。多少進行を遅らせる薬は出てきたものの、いまだにこれといった根本的な治療法はなく、解明されていないことがたくさんあります。

さまざまな研究が進められる中、イギリスの権威ある医学誌の電子版「nature.com」に、「認知症と歯周病が関連している」という論文が発表されました。いったいどういうことなのでしょう?

この研究を行ったグループの代表者、名古屋市立大学の道川誠教授にお話を伺いました。

■歯周病が認知症の原因になる?

認知症と歯周病の関係を解明するために、歯周病菌に感染させたマウスを使った実験が行われました。その実験では、歯周病にかかるとアルツハイマー型認知症の原因とされているアミロイドβという物質が脳の中で増えて、沈着することが分かったのです。

アミロイドβの沈着までの経路ですが、歯周病にかかると、エンドトキシンという毒素が血流にのって全身を駆け巡ります。やがて、エンドトキシンは脳にも到達し、サイトカインなどの炎症性物質が増加します。そのサイトカインがアミロイドβの産生を増やすのです。このアミロイドβが脳に沈着すると、認知症の発症が早まったり、進行したりします。

今回発表されたのは、歯周病マウスを使った実験の結果、「歯周病とアルツハイマー型認知症の関連が証明された」という論文です。それに加えて現在、人を対象にした介入試験も行われていて、軽度の認知症の方の歯周病ケアや口腔ケアを行うことで、歯周病と認知症の関連が調べられています。

結果が分かるのは、まだ1年くらい先になりそうです。

■歯周病は万病のもと

人を対象にした大規模な調査の実施は、莫大な経費がかかるため困難ですが、マウスを使った実験では「アルツハイマー型認知症と歯周病は関係がある」ことが証明されました。

歯周病はアルツハイマー病意外にも心内膜炎(しんないまくえん:心臓の内側の壁や弁が炎症を起こすことによる病気)や脳や肺の膿瘍(のうよう:うみが溜まる)、糖尿病、肺炎、腎臓病などの引き金になることが明らかになっています。

つまり、歯周病は口腔以外の臓器にも影響を及ぼすのです。たとえば、脳膿瘍の場合は、歯周病菌が血流にのって体の中を循環し、その後、脳にうみがたまる病気になるのです。

このように歯周病は、お口の中の健康だけでなく、その先にある様々な臓器の健康にも影響を及ぼします。しかも、その病気は糖尿病など命に関わる病気であることが多いのです。そういう意味で、歯周病は万病のもとだといえます。

■歯の欠損は認知症を引き起こす

「歯周病にかかっていると認知症になる、あるいは認知症が悪化する」ことが実験の結果証明されましたが、実は、歯の欠損(歯が抜けている)や柔らかいものしか噛まないことでも認知症のリスクが高まります。

歯を抜いたマウスと流動食だけを食べたマウスを使って実験したところ、脳の中の海馬(かいば)と言われる部分の神経細胞が減少し、認知症になることが判明したのです。食物を噛む機能が弱くなることによって口からの刺激が減り、脳の中の海馬(かいば)と言われる部分の神経細胞が減少して、認知症を発症する可能性があります。

歯周病や歯の欠損、柔らかいものをよく食べる食生活が、認知症のリスクを高める可能性があります。リスクを下げるためには、まず日頃から歯や口腔のケアを行い、歯の定期検診を受けるなど歯周病ケアをすることが大事です。

柔らかい食べ物に偏りがちな方は、堅いものも食べるように食生活を改めて、お口の咀嚼機能(噛む力)を維持する必要があります。厚生労働省と日本歯科医師会は、80歳になっても健康な歯を最低20本は残しましょうという8020(はちまるにまる)運動を推進しています。

今からでも遅くはありません。まずは8020を目標に、丹念に歯と口腔ケアをしてみましょう。歯科医を訪ねてプロにクリーニングしてもらうのもよいでしょう。

取材協力/道川誠先生
名古屋市立大学・大学院医学研究科 教授、医学博士。名古屋市立大学大学院医学研究科長、医学部長。脳内脂質(コレステロール)代謝変動とアルツハイマー病との関連を研究。特に、危険因子ApoE4の発症機構の解明とその機能制御に関する研究からアルツハイマー病の予防・治療法の開発を目指している。

取材・文/わたなべあや
1964年、大阪生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。2015年からフリーランスライター。最新の医療情報からQOL(Quality of life)を高めるための予防医療情報まで幅広くお届けします。趣味と実益を兼ねて、お取り寄せ&手土産グルメも執筆。

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