(5)心臓病のリスクを下げる
成長ホルモンが低下すると、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の増加、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少、中性脂肪の増加といった脂質代謝異常を認め、血管内皮機能低下と関連して動脈硬化が進行しやすいことが知られています(*8)(*9)

成長ホルモン投与によりこれらの改善が認められ、心機能が改善し、心血管障害による死亡リスクが減少したとの報告があリます(*10)

(6)認知症を予防する
成長ホルモン分泌不全症の患者に成長ホルモンを投与したところ、有意な認知機能改善を認めたとの報告があります(*11)。今後増加の一途をたどるであろう、認知症患者への予防薬として期待が高まっています。

(7)糖尿病を予防する
(1)で述べたように、成長ホルモン投与により内臓脂肪が減少することが知られています。内臓脂肪が減少することによって、インスリン抵抗性が改善(=インスリンが効きやすくなる)、糖尿病予防に繋がると期待されています。

成長ホルモンのデメリット

成長ホルモン投与のデメリットとして、むくみや筋肉痛が起こることがあるとされています。

また、細胞増殖因子である成長ホルモンは、がんの増殖をも促進する可能性が否定できないとの報告もあり、投与前に専門医療機関で発がんリスクを評価することが推奨されています。

老化へのカウントダウンを止めるには

上述のようなメリットから成長ホルモンは老化のスピードを遅め、若々しいカラダを維持する治療として期待されています。現時点では、成長ホルモン投与の安全性が完全に解明されたわけではなく、更なる研究成果が求められています。

以上、今回は「成長ホルモン」について、医学的・科学的知見をもとに解説致しました。上記のような成長ホルモンのメリットに注目が集まっており、今後の研究成果が期待されます。

【参考文献】
(*1)Science 1997;278:419-424
(*2)Clin Interv Aging 2008;3:121-129
(*3)Conegenics Antiaging Medical Clinic
(*4)Trends Endocrinol Metab 2011;22(5):171-178
(*5)Clin Endocrinol 1999;51(6):715-724
(*6)J Appl Physiol 2002;93(3):1159-1167
(*7)Acta Endocrinol 1991;125(5):449-453
(*8)J Clin Endocrinol Metab 1997;82(1):82-88
(*9)Clin Endocrinol 1999;50(4):457-464
(*10)J Clin Endocrinol Metab 2006;91:1621-1634
(*11)Hormone research 2005;64:100-108

文/緒方文大(おがたふみひろ)
虎の門中村康宏クリニック副院長
京都府立医科大学卒業後、虎の門病院にてがんや慢性炎症性疾患を多く取り扱う消化器内科医に。同時に、がん予防や遺伝子、酸化ストレスなどの研究にも従事。その過程で病院に来る前の根本的な「健康防衛・健康増進」の重要性を痛感し、アメリカの「ライフスタイル医学」を修学。これまでの経験と研究実績を生かし、「細胞レベルからの病気予防」という観点から予防医療の実践・普及に取り組む。

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